繰り返す膀胱炎で詳しい検査を受けた柴犬→「半陰陽(両性具有)」の事実が判明 驚きの声が集まる 獣医師に話を聞いた
ベストな方針が見つかりますように。
Twitterに半陰陽(いわゆる両性具有)であることが判明したワンコのお話が投稿され、「びっくりですね」「ワンコにも半陰陽ってあるんですね」と驚く人が続出しています。
今回“女性器の中に男性器がある”という、「半陰陽」であることが判明したのは柴犬の「花火」ちゃんです。花火ちゃんは2019年の3月に膀胱炎を発症し、その後2〜3日、1〜2カ月くらいのペースで再発を繰り返していたそうです。
膀胱炎は細菌に感染することで起こる病気で、治療には抗生物質などの抗菌剤が使用されます。しかし抗菌剤には効果が高い反面、連続して服用すると耐性ができていずれ効果が無くなってしまうという性質があります。
花火ちゃんは膀胱炎を発症→抗生剤の投薬→再発→前回とは違う抗生剤を投薬……という流れを繰り返していたため、いずれ別の病気の際に抗生剤が効かなくなることを懸念し、根本的な原因を探るために膀胱鏡の検査を実施、半陰陽であることが判明したのだとか。
獣医師さんによると花火ちゃんの場合、女性器の中に男性器があることで性器の構造が複雑になり、細菌に感染しやすい状態になっている可能性があるとのこと(精巣は体内に吸収されている、メスとしての不妊手術は完了している)。そのため半陰陽という珍しく個性的な性ではあるものの、男性器の摘出手術を検討しているそうです。
手術を実施するかどうか判断することはとても悩ましく、難しい問題です。どちらにしても飼い主さんが納得できること、花火ちゃんの症状が落ち着くことを願いたいですね。
「半陰陽」とは一体どんな症状なのか。編集部は、ガイア動物病院(東京都杉並区)の院長 松田唯さんに話を聞きました。
ガイア動物病院 院長 松田唯(まつだゆい)
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長に。治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主が選択できる診療を心掛けている。
――犬の半陰陽はどのくらいの割合でみられる症例なのでしょうか。松田先生の経験の所感でも問題ありませんので、教えてください
正直、かなり珍しいものです。ヒトでは数千人に1人の割合で発生するといわれていますが、動物における割合を記載した文献は見つけることができませんでした。
私自身も「怪しいな」と感じるワンちゃんに出会ったことはありますが、見た目の問題が起きているわけではないので検査に至らず、実際のところよく分からないまま診察が終わったことは経験しています。
――犬の半陰陽には「真性半陰陽」と「仮性半陰陽」の2種類があると聞きました。それぞれどういったものか教えてください
専門書を読むと非常に難しく書かれている部分ですね。
簡単に言うと、「真性半陰陽」は精巣と卵巣両方を持っている(両方がくっついていることもあります)場合のことを指します。見た目の性器は個体によってさまざまな形をしています。
「仮性半陰陽」は見た目はメスなのに精巣を持っている「雄性仮性半陰陽」と、見た目はオスなのに卵巣を持っている「雌性仮性半陰陽」の2タイプに分類されます。
ちなみに動物の性は見た目の性別(性器)ではなく、卵巣か精巣のどちらを持っているかを重要視するみたいです。実はこの辺りは、獣医師や愛玩動物看護師の国家試験で聞かれるところでもあります。
――半陰陽で、治療など措置が必要なケースがあれば教えてください
ケースバイケースで、基本的に治療は手術になります。問題が起きているようなら積極的に治療を行いますが、そうでないなら様子見とすることもあります。
例えば、今回のように膀胱炎を繰り返しており、その原因が性器の構造上の問題なのであれば手術の適応となると思います。
また、膣の中からペニスが出ているような場合、座ると陰茎骨(犬のペニスには骨があります)が当たって痛いことがあり、そのようなときには切除する必要があります。
雄性仮性半陰陽の場合は、おなかの中に精巣があることになります。精巣はおなかの中にあることで腫瘍化しやすいことが知られているので、何かしらの症状がなくても手術をしておくべきと思われます。
――犬にどのような状態が見られたときに飼い主は「半陰陽かも?」と考えた方がよいのでしょうか。参考例があれば教えてください
実際のところ、獣医師でも診断をするにはかなり慎重になる(難しい)病気ではあります。
自宅でうたがっていくとなるとより難しい話ではありますが……半陰陽として診断された文献(経験談レベルの文章)では「膣からポコッとできものが見えている」として来院することが多いようです。つまり、陰部の構造が何かおかしいと感じたら病院に行ってみるのがいいのではないでしょうか。
(了)
飼い主さんは「SNSが花火の病気について、情報を提供していただける場になっています。尿路系の疾患が、手術して治るかどうか……とかなり不安でしたが、良くなるかも! と、前向きな期待感が湧いて来ました」とコメント。遠く離れたところに住んでいる人からも情報を寄せてもらえるSNSは、困ったときや不安なときには心の支えになってくれますね。
投稿主さんはTwitter(@hanabi_japan86)とInstagram(@hanahanahanabi_japan)に、花火ちゃんと暮らす日々の様子を投稿しています。
画像提供:柴犬 花火(@hanabi_japan86)さん
(三日月 影狼)
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