なぜこんなにも破壊しつくされたのか 海底に眠る空母「加賀」、潜水艇とは奇遇な関係も……?(1/2 ページ)
深海で撮影された「加賀」映像について解説する。
目立たないけれど実は使える空母だった
1942年6月4日に起きたミッドウェー海戦で沈んだ日本海軍航空母艦「赤城」と「加賀」が潜水艇「Nautilus」の探索によって映像に収められたのは概報の通りだ。海中探索の模様はリアルライブで配信されていたが、現在はNautilusを運用する海洋調査団体「Ocean Exploration Trust」の公式YouTubeチャンネルで赤城と加賀それぞれの動画が公開されている。ダメージが大きく、特定できる残存箇所が少ない加賀について、なぜこんなに破壊されたのか解説する。
沈んでいる加賀の姿は2019年に故ポール・アレン氏が設立した沈船捜索チームによって公開されている。今回の動画でも、映し出されている物をすぐに特定できる箇所は少ない。これは、先日沈んでいる姿が公開された「赤城」(関連記事)と比べてミッドウェー海戦で受けたダメージが大きく、上部構造物のほとんどが破壊されて残っていないためだ。
撮影された加賀の船体は、そのほとんどが下層甲板から下しか残っていない。最初のシーンでは下側にせり出した、浮力を維持し魚雷に対する防御力を確保するバルジの姿が確認できる。その一部では、船体の裂け目から内部がわずかに見えている。通常、この部分には兵員室(水兵の居住区)を配置することが多く、穴からベッドの骨組みのようなものが確認できる。
なぜこんなにも破壊しつくされたのか
ミッドウェー海戦において赤城は急降下爆撃で2発の爆弾が命中したのに対して、加賀は急降下爆撃で4発の爆弾が命中している。さらに、赤城の被弾箇所のうち1発は飛行甲板後端に命中したため被害がほとんど出なかったのに対して、加賀では、艦橋付近の被弾とその付近にあったガソリン補給車の誘爆で「艦橋ハ前半骨組ミノミヲ残シ飛散シ艦長以下艦橋ニアリシモノハ壮烈ナル戦死ヲ遂グ」(日本海軍の戦闘詳報より)などの甚大な破壊的被害を受け、最終的には「前後部揮発油(筆者注:ガソリン)庫ニ引火大爆発」によって沈没した。
以上のように、火災で艦を制御できなくなって日本への帰還が不可能と判断して味方の魚雷で自沈処分した赤城とは異なり、加賀は甚大な損傷に耐えきれず沈んでいった。そのため、海底の赤城が艦橋構造物や高角砲、機銃、射撃指揮所など上部構造物の一部が残存しているのに対して、加賀の上部構造物に関してはそのほとんどが失われている。
下層甲板に配置されて、比較的頑丈で肉厚な鋼材で構成されたところは原形をとどめている。例えば、下層甲板の後方舷側に設置した「五十口径三年式二十糎砲」は、ケースメートの砲郭部分も観察でき、最前部の錨甲板は主錨を設置するアンカーウェルの構造も残っていた。
81年目の奇遇
なお、赤城は巡洋戦艦、加賀は戦艦から改装して建造された空母なので、防御力は戦艦並みだったはずと思う人も少なくない。しかし、赤城も加賀も空母への改装にあたっては、防御計画を見直し、装甲を巡洋戦艦、戦艦として計画されていた厚さの半分に減らしている。そのため、本来は巡洋戦艦、戦艦の主砲に耐えるはずだったのが軽巡の主砲、もしくは、250キロ爆弾に耐えるだけの防御となっていた。戦前の見積もりでは米海軍の急降下爆撃機が搭載する1000ポンド爆弾(ほぼ454キロ爆弾に相当)には耐えられないという試算もあったという。
なお、ミッドウェー海戦中に加賀は潜水艦から雷撃を受けて魚雷1本が命中している。この魚雷は不発で加賀の沈没に何ら貢献はしていないが、この魚雷を射出した潜水艦の名前も「Nautilus」という。
Ocean Exploration TrustはNautilusがとらえた空母「赤城」の映像も公開しており、こちらについては別の記事で取り上げている。→赤城編を読む
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