これを読めば「ゴジラ -1.0」の背景が分かる 〜終戦時における旧海軍艦艇動向〜(1/3 ページ)
舞台となった終戦後の日本での旧海軍の状況などについてまとめてみた。
本編のみならず、予告編が公開された時点から既に巷の艦船特定班クラスタの間で話題になっている映画「ゴジラ -1.0」だが、そういう熱気とは全く関係なく、超私的な好奇心に従って、終戦直後における日本海軍の状況とその後の経緯についてまとめてみた。
どんなフネが残っていたのか
1945年の終戦直後における日本海軍の残存勢力は、空母、戦艦、重巡、軽巡といった大型艦船においては、以下のごく少数に過ぎなかった。
- 航空母艦:鳳翔、葛城、龍鳳、隼鷹
- 戦艦:長門
- 重巡:妙高、高雄
- 軽巡:酒匂、鹿島、北上
以上の他にも、かろうじて船体が海面の上にあってその姿が視認できる大型艦船として戦艦「伊勢」「日向」「榛名」、重巡「青葉」「利根」、軽巡「大淀」があったが、これらは終戦直前の7月末に米艦載機による呉軍港の大空襲によって大きな被害を受け、姿が水面上に見えているものの船体は海底についていて、実質沈んでいるのと同じ状態だった。
また、妙高と高雄は航行不能状態でシンガポールに係留されており、北上も呉軍港空襲の被害で航行不能のまま。同じ呉大空襲で中破した龍鳳と、1944年12月の輸送作戦中に米潜水艦の雷撃で損傷した隼鷹も、動けるものの外洋航海には耐えられないと判断されていた。
駆逐艦以下の小型艦艇は駆逐艦が41隻、潜水艦が58隻、海防艦(その形態と分類は時代によって多岐にわたるが、太平洋戦争中期以降は護衛用の小艦艇として建造された)が100隻、水雷艇(といっても実質的には小型駆逐艦に相当)が3隻、駆潜艇28隻、掃海艇11隻、敷設艇6隻、哨戒艇6隻(以上は実質的に小型の護衛“艇”として使われた)などが残っていた。
ただ、駆逐艦41隻の中で、行動可能状態で残っていた “第一線”級の大型駆逐艦は陽炎型の「雪風」と特型(吹雪型)の「響」「潮」(ただし潮は片舷機関のみ稼働)、秋月型の「花月」「夏月」「宵月」「春月」、そして戦時急造小型駆逐艦(実施的には護衛任務に特化した護衛艦)の松型21隻(損傷して航行不能な艦も含む)だった。ただし、秋月型の4隻は竣工が終戦直前で実戦経験はなく、太平洋戦争を生き残った“艦隊型”駆逐艦は雪風と響、潮の3隻のみといえる。
なお、戦後、横須賀軍港近辺で撮影された小型艦艇の写真では、駆逐艦「澤風」(峯風型)に「初桜」(松型)、海防艦「生野」(鵜来型)、砕氷艦「大泊」、敷設艇「巨済」、第28号駆潜艇(当時、横須賀方面には第44、47、51、52号艇が在泊していた)、第1650号曳船(元第52号駆潜艇)、第1651号曳船(元第53号駆潜艇)、第1658号曳船(元第51号駆潜艇)、第1648号曳船(元第43号駆潜艇)、第26哨戒特務艇などの姿が残されている。
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