音声SNS「Clubhouse」の今 声優・平野文が毎週配信を続けるワケ 「声は、すべてを看破します」(1/3 ページ)

招待制から始まりコロナ禍でブームになったあのSNSの今。定期的に活用しているユーザーたちに話を聞いた。

» 2023年11月25日 10時45分 公開
[城戸譲ねとらぼ]
Clubhouse 簡単にスマホ配信できることで話題になった(出典:PIXTA

 約3年前に一大ブームを起こした、音声SNS「Clubhouse(クラブハウス)」を覚えていますか。競合サービスの出現などで、話題を聞く機会も少なくなるなか、いまも定期的に活用しているユーザーがいます。なかには、誰もが声を知っているであろう、あの声優さんも――。

招待制から始まり、コロナ禍でブームに

 Clubhouseは2020年春に誕生し、当初はユーザーによる招待制でした。日本では2021年初頭から普及し始めて、ビジネスパーソンやタレントらを中心に火がつき、「有名人と直接しゃべれる」と注目をあびました。

 おりしも当時は、コロナ禍のまっただ中。リアルでのイベント開催ができないなか、音声で直接つながれる手段には、注目が集まりました。実際のイベントでは、なかなか難しい「聞き手を壇上に引き上げる」ことも簡単に行えるため、一般ユーザーとの交流を深める利用法が普及します。しかし、Clubhouseのブームは、一気に収束していきました。

競合「Xスペース」の登場、大幅な仕様変更

 2021年5月に、X(旧ツイッター)が競合サービスの「スペース」を開始すると、より利用者数の多いXへと移行するユーザーも増加。そして2023年4月には、スタッフの半数以上を解雇する方針も示されます。

 音声SNSをめぐる情勢変化にClubhouse側も反応したのか、この2023年9月に大幅な仕様変更が行われました。多数に向けて開かれた会話を行う、これまでの機能も保ちつつ、知人同士の音声チャットを追加し、そちらを主軸に据えたのです。

Clubhouse 画面も「友達とのトーク」をメインに据えるようになった(一部加工)

 Clubhouseのサービス、そしてそこに息づくコミュニティー。日本で話題になってから、まもなく4年が経過する今、ユーザーはどう感じているのでしょうか――。そこで今回は、いまなおClubhouseを定期的に活用している著名人に話を聞いてみました。

リスナーと直接会話する「金曜深夜の生番組」

 お話をうかがったのは、Clubhouseで「平野文のマイクの向こう側 #23club」を配信している皆さん。アニメ「うる星やつら」のラム役などで知られる平野文さんを中心に、2021年2月から毎週金曜日の23時から、アーカイブなしの生配信を行っています。

 配信は平野さんと、アルファブロガーの「ネタフル」コグレマサトさん(プロデューサー兼ディレクター担当)と、Webエンジニアのヤガーさん(ミキサー担当)の3人が分担。2023年11月10日の配信で、第140回を迎えた長寿コンテンツで、X上でもハッシュタグ「#23club(ふみクラブ)」をつけて、出演者や参加者がリアルタイムで交流しています。

 リスナー全員のアイコンを読み上げ、最速入室した方とトークするほか、全国各地をつないでのグルメ紹介、コグレさん・ヤガーさんのコーナー、平野さんによる朗読など、台本なしながら「配信というより番組という意識」で、毎週約70〜90分間配信しています。

ネットを飛び出し「オフ会」にも発展

 始まったきっかけは、コグレさんの「Clubhouseは文さんに合っていると思う」との呼びかけでした。ラジオの深夜放送をイメージしているとの打診に、「昔からリスナーさんとのやりとりがとても好きなので、すぐにお引き受けしました」(平野さん)。

 いまや「#23club」のコミュニティは、Clubhouseのみならず、オフラインにも活動を広げます。番組の区切りとなるタイミングでは、手書きのカードを送ったほか、これまで「オフ会」を3回行い、次回は150回記念での開催を予定しています。リスナー同士が、初対面ながら途切れず会話を続けていて、とても新鮮で感嘆したと平野さんは語ります。

仕様変更で「横のつながりが遮断された。ただし……」

 Clubhouseの機能面については、コグレさんに聞きました。アップデートによって「他の人の会話が見えにくくなったと感じています。横のつながりが遮断されたような印象を持っています」とのことで、話題になったサービスでも難しさを感じているそうですが、「ただし、それは表向きの話で」と続きます。

「我々のように『番組を配信したい人』向けならば、もっといろいろやり方があるのではないかと思っています。それこそミキサーやマイクなど、ハードウェアメーカーを巻き込んでの展開などもあるのではないかと。もちろんYouTubeは大きなライバルですが、われわれが他のアプリを使ってバーチャルに組んでいる『本放送』とは別の『スタジオ(副調整室)』の機能なども取り込むと面白いのではないかと」(コグレさん)

「わざわざ聞きに来る」Clubhouseだからこその濃密な関係

 X(Twitter)のスペース機能も、初期に試したところ、音質などはClubhouseの方が良いと感じたそうです。また、「通りすがりの人が大量に入ってくるのではなく、あえてアプリを起動し、わざわざ聞きに来てくださる人たちと濃密にコミュニケーションしたい/できる」ことを、いまもClubhouseを使い続ける理由として挙げます。今後については、なかなか代替サービスもないため「今あるものが変わらずに、粛々と続いてくれるのがありがたい」と願います。

 コグレさんは、平野さんがほとんどのリスナーの名前とアイコンのみならず、以前の会話や、Xのポストも記憶しているといい、「通常は100人弱くらいの方がリスナーとして参加されますが、1対Nではなく、1対1の関係性が構築できているのではないか」と、その魅力を分析します。

Clubhouse 「マイクの向こう側」には、毎週多くのリスナーが参加している(一部加工)
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