「マネスキン」とこれからのロックの話をしよう ネットの荒波を乗りこなす、Z世代No.1バンド2度目の来日を振り返ってみる(2/2 ページ)

» 2023年12月23日 09時00分 公開
[小西菜穂ねとらぼ]
前のページへ 1|2       

これからのロックの話をしよう

 ロック復権の旗持ち役となったマネスキン。ブレイクのきっかけとなったユーロヴィジョンの優勝者パフォーマンスでは高らかに「ロックンロールは死なない!」宣言をして、往年のロックファンを喜ばせました。

「ロックンロールは死なない!(Rock'n Roll Never Dies)」(動画0:50あたり)

 ロック冬の時代において、もはや伝説となりかけているエピソードですが、ダミアーノは2022年のインタビューで自分たちがロック復権の立役者と思ったことはないと冷静にコメント。「死なない」宣言は自分たちへのメッセージだったと説明しています。

 一方でEDMブームに代表されるように、電子楽器を使った音楽が当たり前となった今、生の楽器を使った音楽には一定以上のこだわりがあるとして、その重要性を強調。実際に来日公演はルーパーを含むエフェクターの使用こそあったものの、サポートメンバーがステージに立つこともなく基本的には彼らが演奏するギター、ベース、ドラムの音しか聞こえませんでした。AIの台頭で作曲や演奏のハードルが下がり、音楽が一般的になる中でのこうしたスタイルは、もしかしたら貴重な存在となり得るのかもしれません。

「マネスキン」Rushツアー来日公演 東京公演でのアコースティックコーナー、ドラムのイーサンがギターとして参加(Fabio Germinario)

 またかつてのロッカーのイメージと異なり、ダミアーノはクリエイティビティーとアルコール、ドラッグの結び付きを完全否定。陶酔型のパフォーマンスからそれこそユーロヴィジョンの大舞台ですらドラッグの影響下にあるのではとあらぬ疑いが掛けられたものの、直後に検査結果を公表して疑惑を否定。2021年のインタビューでは創造性は健康で鍛えられたマインドから生まれるとロックにつきものだったダーティーな固定観念を否定し、“自由”というメッセージを伝えるためにはドラッグ、アルコールの奴隷になっては意味がないとの考えを話しています。

「マネスキン」Rushツアー来日公演 Fabio Germinario
「マネスキン」Rushツアー来日公演「マネスキン」Rushツアー来日公演

マネスキンを中心とした議論が導く世界

 メディアがマネスキンの話を取り上げると、高確率で言及されるのが彼らのセクシュアリティーです。4人のメンバー中、ヴィクトリアとイーサンがクィア(性的マイノリティー)を公言していて、特にヴィクトリアは女性の胸ばかりが性的な“コンテンツ”として扱われることへの抗議や疑問提起のため露出をいとわない場面も多く、時にバンドのアイコンやスポークスパーソンとしての役割を担っています。

「マネスキン」Rushツアー来日公演 東京公演でのヴィクトリア(Fabio Germinario)

 LGBTQコミュニティーから受けるのも称賛ばかりはなく、クィアベイティング(あえて性的マイノリティーを装い、当事者からの支持を得ようとすること)を疑われ、メディアを通じて反論したこともあります。

 パンデミックで人々がインターネットに費やす時間が増えたタイミングで頭角を現したこともあり、バンドを取り巻く周囲は常に騒がしいものでしたが、ネットの荒波も軽々と乗りこなし、一貫して彼らが訴え続けているのは“自由”。ストレート(マジョリティー)とクィア(マイノリティー)双方の視点を同じ比率で共有するバンドとしてどちらの立場からも発信できる貴重な存在としての独自のポジションを確立しています。

 デンマーク語で“月光”の意味を持つバンド名の正しい発音や片仮名表記についても、いまだに日本ではどう呼ぶべきか定まらず意見が交わされています。きっと今後も絶えずマネスキンを中心にいろいろな議論が起きていくのでしょう。1999年から2001年に生まれたZ世代のマネスキンが21世紀の世界にどんな変化をもたらしていくのか、前世紀生まれのロックファンの1人として楽しみでなりません。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/25/news189.jpg 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  2. /nl/articles/2411/25/news134.jpg 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. /nl/articles/2411/26/news089.jpg 「最高の人間」 大谷翔平が現地で“神対応”見せる 写真家の投稿に反響…… 「息子はまだ信じられないみたい」
  4. /nl/articles/2411/22/news184.jpg 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  5. /nl/articles/2411/26/news184.jpg 「中学生で妊娠」した“14歳の母”、「相手は逃げ腰」妊娠発覚からの経緯を赤裸々告白 母親の“意外な反応”も明かす
  6. /nl/articles/2411/07/news027.jpg 百均で多肉植物を購入→半年以上放置してしまったが…… 驚きの結果に「すごーい!」「品種は何ですか!?」
  7. /nl/articles/2411/26/news188.jpg 「ハリー・ポッター」の“レプリカ剣”を回収 銃刀法違反の可能性か…… 運営謝罪「申し訳ございません」
  8. /nl/articles/2411/26/news052.jpg 日本に1店舗のみの“完璧なマクドナルド”が778万表示の話題 地元民も「そんなすごい店やったんか…」「たまに使ってるけどそんなすげぇとこだったのね」
  9. /nl/articles/2411/25/news193.jpg 辻希美の高2長女、「明日皆さんにご報告があります」 16歳最後の日の意味深投稿に注目集まる
  10. /nl/articles/2411/25/news160.jpg 「これを見て退団するとは……」 楽天・田中将大、最後に見せた“衝撃の姿”にファン複雑 「ほんと辛い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  2. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  3. 猫だと思って保護→2年後…… すっかり“別の生き物”に成長した元ボス猫に「フォルムが本当に可愛い」「抱きしめたい」
  4. 「理解できない」 大谷翔平と真美子さんの“スキンシップ”に海外驚き 「文化は100%違う」「伝説だわ」
  5. 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  6. 「大物すぎ」「うそだろ」 活動中だった“美少女新人VTuber”の「衝撃的な正体」が判明 「想像の斜め上を行く正体」
  7. 川で拾った普通の石ころ→磨いたら……? まさかの“正体”にびっくり「間違いなく価値がある」「別の惑星を見ているよう」【米】
  8. 大谷翔平と真美子さん、「まさかの服装」に注目 愛犬デコピンも大谷家全員で“歩く広告塔”ぶり発揮か
  9. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  10. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた