「愛は勝つ」だけじゃない! KANの名曲8選 切ない曲、笑える曲……25年来のファンが厳選紹介(1/3 ページ)

「『愛は勝つ』の一発屋でしょ?」――KANファンの多くは、こんな言葉に傷ついた経験があるかもしれません。1987年のデビューから26年。発表した楽曲は150以上。彼が遺した名曲が、「愛は勝つ」だけのはずがないのに。

» 2023年12月28日 12時05分 公開
[岡田有花ねとらぼ]

 音楽家のKANさんが2023年11月12日、お空に旅立っていきました。

 「『愛は勝つ』の一発屋でしょ?」。私を含むKANファンの多くは、こんな言葉に傷ついた経験があるかもしれません。1987年のデビューから36年。発表した楽曲はゆうに150を超えます。彼が遺した名曲が、「愛は勝つ」だけのはずがないのに。

KAN アルバム 名曲 KANのアルバムの一部

 私がファンになったのは「愛は勝つ」の7年後、1997年のシングル「Songwriter」からでした。流れるようなピアノの旋律に、苦悩する青年の心情を乗せたこの曲は、歌詞も曲調も「愛は勝つ」とあまりに違ってびっくりしました。

 KANさんの作品は、1人でここまでできるのか! と驚くほどバリエーションが豊かです。悩んで考え抜かれた歌詞には、辛いときや迷った時……どんな気持ちにも寄り添う優しさと意思が込められています。ライブも面白すぎて(音楽面でも笑いでも)、夢中で追いかけました。

 KANさんが旅立ってから、「『愛は勝つ』以外のおすすめの曲を教えてほしい」と言われる機会が増えましたが、すべてが名曲だからとっても難しい。アルバムにもシングルのB面にも、“捨て曲”がないんです。

 でも今回はあえて、頑張って選んでみました。私はKANさんの歌詞世界とピアノ、J-POPコラボが好きなので、その観点から8曲をご紹介しますね。

1.「Songwriter」 ピアノを叩き、存在の意義を叫ぶ

 一番好きな曲です。流れるようなピアノのアルペジオで始まり、ストリングスが絡んでどこまでも広がっていく音楽世界がキャッチーで切ない。詞では、行く手が見えない苦しみの中、ぐっと踏ん張り進んでいく強さが歌われています。

 「転んでも 叫んでも 答えなどどこにもないのに」「I’m a songwriter ピアノをたたき 繰り返す表現のみが唯一存在の意義です」。KANさんが自分を追い込み、転んで叫んでたどりついた「存在の意義」。

 この曲に出会った当時の筆者は19歳、浪人生の冬でした。第一志望の前期入試で不合格を確認した帰り道、この曲が入ったアルバム「TIGERSONGWRITER」を買い、繰り返し聞きました。何者でもなかった自分がさらに何者でもなくなった日。「生きる意味、存在の意義って何だろう」と泣きながら、ただずっと聞いていました。

2.「永遠」 痛みは僕が引き受ける、究極のラブソング

 ゆったり優しいピアノが染み入る究極のラブソング。愛することのどうしようもない重みと深さを描いています。

 「たとえば僕がちょっと痛がっていても少しの間だけむこう向いててください」「たとえば僕の存在が君の重荷になるなら その荷物も僕が持ちます」

 ラブソングにありがちな「君が好きだから一緒にいたい」なんて言葉はエゴだと僕は思っている。僕は僕、君は君。隣にいられればうれしいけど、もしそれが君の人生を邪魔するならば、遠くからずっと思いを寄せている。永遠に、命尽きても、永遠に。

3.「Oxxane-愛しのオクサーヌ-」 “近所の奥さん”想うギターロック、桜井和寿と歌い上げ

 辛い片思いの詞が多いKANさんですが、こちらは一転、超ライト。近所の奥さん(子持ち)への秘めた想いを軽快なギターに乗せて歌います。ポップでロックなメロディと下心丸出しのズッコケ歌詞にKANらしさが爆発。歌詞の内容は「実話」だそうです。

 タイトルはポリスの名曲「Roxanne」のもじり。コーラスとギターには、KANさんをリスペクトするMr.Children桜井和寿さんが「キヌガサマコト」名義で参加しており、「おくさああああん!!!」と歌い上げます。

 ライブで盛り上がる定番曲でもありました。曲中に「おっ○いバルーン」という巨大な丸い球体が客席に投げ入れられ、総立ちのファンが大玉転がしのようにタッチしまくる。コロナ禍以降、バルーンは姿を消してしまったけれど、もう一度触りたかったな。

4.「REGIKOSTAR 〜レジ子スターの刺激〜」 めっちゃPerfume

 タイトルは「ラジオ・スターの悲劇」(バグルス/1979年)のもじりですが、楽曲はきわめてPerfumeっぽいガーリッシュテクノポップ。KANさんが心から尊敬していた中田ヤスタカさんの楽曲を分析・再構築した曲調に、「近所のスーパーのレジで働いている君に一目惚れ」という歌詞を載せ、楽しく切ない作品に仕上がっています。

 この曲についてKANさんは、「企画ものでもなんでもなく、今私が最もやりたいことをハッキリ提示するという意味も含めてアルバム1曲目に入れた」とのことです。ご本人が、「納得度の高い曲」によく挙げられていました。

 歌詞の内容はこれまた実話。後日、レジの彼女は同じスーパーの鮮魚担当と結婚していたことが判明したんだとか。片思いの多い人生です。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/14/news049.jpg ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. /nl/articles/2501/16/news152.jpg タンクトップ姿のパパ「昔はモテた」→娘は信じていなかったが…… かつての姿に衝撃走る「『トップガン』に出ていても納得」【海外】
  3. /nl/articles/2501/16/news154.jpg 「まじで終わってる」 マクドナルド「エヴァ」コラボ品“高額転売”に嘆く声…… 「結局欲しい人が買えない」
  4. /nl/articles/2501/16/news099.jpg 大谷翔平、“家族とのショット”が210万表示の反響 幸せそうな高画質の表情に「いい写真だ!」「初めてタップした」
  5. /nl/articles/2501/16/news033.jpg 「初心者でもレモンが“必ず”実る」驚きの裏ワザで育てると…… 想像を超える大収穫に「目から鱗」「そーゆーこと?!」と大反響
  6. /nl/articles/2501/15/news094.jpg 実家のトイレがリフォーム→ 判明した“重大欠陥”に2100万表示の驚き 「気付かなかったのか」
  7. /nl/articles/2501/16/news134.jpg 元欅坂46、幼少期→学生時代→現在の成長ビフォーアフターを公開 「仕上がりすぎです」「優勝」と280万再生突破
  8. /nl/articles/2501/15/news074.jpg 賞味期限「2年前」のゼリーを販売か…… 人気スーパーが謝罪「深くお詫び」 回収に協力呼びかけ
  9. /nl/articles/2501/16/news155.jpg 「timelesz」候補者が持っていた“ダイソーのぬいぐるみ”、店頭から消える 「どこにもない」「篠塚担のうさぎ狩り」と話題に
  10. /nl/articles/2501/15/news169.jpg 「お遊戯会ではない」と批判受ける→成人式に“メルカリで買った服”で参加したインフルエンサーが反論 「ちょっとまって」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  2. 「大根は全部冷凍してください」 “多くの人が知らない”画期的な保存方法に「これから躊躇なく買えます」「これで腐らせずに済む」
  3. 浜崎あゆみ、息子2人チラリの朝食風景を公開 食卓に並ぶ“国民的キャラクター”のメニューが意外
  4. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  5. 中2長女“書店で好きなだけ本を買う権”を行使した結果…… “驚愕のレシート”が1300万表示「大物になるぞ!!」「これやってみよう」
  6. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”の家族に反響 ジュノンボーイの幼少期が香取慎吾似?【コンテスト特集2024】
  7. 大好きなお母さんが他界し、実家でひとり暮らしする猫 その日常に「涙が溢れてくる……」「温かい気持ちになりました」
  8. 「やばすぎ」 ブックオフに10万円で売られていた“衝撃の商品”に仰天 「これもう文化財」「お宝すぎる」 投稿者に発見時の気持ちを聞いた
  9. 「こんなおばあちゃんになりたい」 1人暮らしの93歳が作る“かんたん夕食”がすごい! 「憧れます」「見習わないといけませんね」
  10. 【今日の難読漢字】「碑」←何と読む?
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」