スペインの復活祭、公式ポスターのキリストが「性的」「女性的」と批判殺到 作者は「ばかげている」「芸術が政治利用」と一蹴(1/2 ページ)

アーティストの27歳息子がモデル。

» 2024年01月31日 18時33分 公開
[城川まちねねとらぼ]

 スペインのアンダルシア州セビリアで開催される復活祭「聖週間(セマナ・サンタ)」。1月27日に2024年の公式ポスターが発表されると、描かれたキリストの姿が「女性的」かつ「性的」であるとして批判が殺到しています。作者で世界的に活躍する地元出身のアーティスト、サルスティアーノ・ガルシアはインタビューに答え、これらの批判的な意見を真正面から切り捨て反論しています。

スペインの復活祭セマナ・サンタ公式ポスターに描かれたキリストが不適切と批判 発表された公式ポスター(画像はセビリア市セマナ・サンタのInstagramから)

スペインでは重要な宗教行事=セマナ・サンタ

 いわばスペイン版のイースターとしてキリストの受難・死・復活を祝福するセマナ・サンタは、スペイン全土で行われており、アンダルシア州では特に盛ん。祭りが開かれる1週間は学校や会社も休みになり、観光客にも人気の行事です。

 2024年の公式ポスターには、赤い背景に、紐と白い布を腰に巻いたキリストが描かれたサルスティアーノの作品が起用。美しく神秘的な顔立ちに、右胸の下と左手に小さな傷があり、わずかに身体を傾けながら左手の人差し指で右胸の傷を指しているように見える構図で、キリストの復活した姿が描かれています。このポスターは市内中に貼られる予定でしたが、SNSでは発表と同時に批判が殺到し、撤回を求める声までがあがる事態となっています。

批判と擁護が寄せられた公式ポスター

 批判の中には「キリストの受難と、輝かしい復活に対する侮辱だ」「宗教を性的なものにしている」「例えばこのポスターを妻の家族に見せるのは恥ずかしいと思う。作品や個人の資質に触れたくはないが、こんなものを受け入れた責任者の名前を知りたい」「恥ずべきことだし、私たちのセマナ・サンタに対する気持ちへ敬意が感じられない」などと何世紀もの歴史を持つ宗教的な行事にふさわしくないとするものが多数。

 また、「何で僕のママがポスターに?」「化粧をしているようにみえる」など、男性であるキリストがとても女性的に描かれているとの主張も。「セビリアのLGBTプライドパレードのポスター、素晴らしいと思うよ。今度はセマナ・サンタのポスターが見たいな。本物のね」とまるでプライドパレードのために描かれたようであるとするものも多く見られました。

 一方、この絵を擁護する人たちからは、現代的な表現との反論が。「これは美しく価値あるキリスト像で、敬意に満ちている。彼は偏見に満ちたスペインにまだ多くの課題があることを教えているのだ」「復活したキリストに“男性的”という属性をつけていることがまだ私たちが洞窟の時代にいるということ」「どの時代でも、それぞれの時代に合わせたキリストが描かれてきた。これが僕たちの時代なんだよ」「どのような人物であったか、あるいは存在したかどうか誰にもわからない人物について、デジタルでどう表現するか言い争うとはね」など、絵の美しさをたたえ感銘を受けたという声や、キリストの姿がこうあるべきと誰かが決めることはできないといった意見が聞かれました。

 しかし批判する声の中には、「全くもって無礼で否定的。そしてそのイメージを祝福し肯定しているのは、信者ではない人たちなんだよ」など、この問題は敬虔(けいけん)なクリスチャンによって語られるべきであると反論する声もあがっています。

アーティスト本人は芸術が政治利用されていると不快感

スペインの復活祭セマナ・サンタ公式ポスターに描かれたキリストが不適切と批判 作者のサルスティアーノ・ガルシア(画像はサルスティアーノ・ガルシアのInstagramから)

 これらの強い批判に対し、スペインの「ABC de Sevilla」紙のインタビューに答えた作者のサルスティアーノは「驚いた」と率直な感想をコメント。「私の作品は優しくエレガントで美しいので、好意的なものはあるだろうと予想していた」と喜ばれこそすれ非難は全く予想していなかったと述べました。

 また、普段は自身の作品には好意的な感想が寄せられることが多く、今回の作品についても誰もが一度は足を運ぶ教会や美術館で見られるような何世紀も前の絵画に描かれているものと同じ要素しか描かれていないとのこと。「私の作品にネガティブな批判をしたり、性的なものを見たりする人には、もう少し芸術的教養が必要だ」と批判を一蹴しました。

 しかし同紙のオンライン読者を対象にアンケート調査を行ったところ、87%の読者がこの絵の表現はセマナ・サンタにふさわしくないと回答する結果に。サルスティアーノはこの結果に「この絵は、スピリチュアリティ、愛、尊敬のメッセージ」とし、「今回の論争で私が驚いたのは、芸術作品が政治化され、この党派に属するとか、この性的な風潮に属してるとかいわれていることだ。まるで私の絵が左翼的であるかのように。ばかげている」と芸術への視点がずれていると指摘しています。

 さらにインタビュワーが「まるでゲイ・プライド・デーのポスターのよう」といわれていることに対し感想を聞くと、「気にならないし、面白くもなかった。社会は政治化され、同性愛はある政党と政党のあいだで戦争の武器のように使われている」「私の(描いた)キリストの姿勢も裸体も、何世紀も前の芸術作品で描かれているもの。(作品でキリストが身に着けている)布は十分に貞節だ」と古典的な構図や題材を扱ったものであり、また芸術を自分たちの主張を強調するための道具にするべきではないとしました。

 今回「女性的」と多くの人が批判したキリストの顔は、サルスティアーノの27歳の息子オラシオをモデルに描いたもの。「オラシオは男らしくハンサムでスポーツマンで、SNSではいろんなことをいわれる。彼はヘテロセクシュアルだが、もしホモセクシュアルだとしても同じようにすばらしいだろう」と語り、オラシオがこの絵を初めて目にしたときは、「彼は私の目を見つめて目を潤ませ、長い間抱きしめてくれた」と感動的な時を過ごしたことを明かしました。

 また、自身に2024年のセマナ・サンタ公式ポスターの依頼が来た理由について、「サルスティアーノの名によって、ポスターを国際的なものにしたかったのだろう」とし、「私が望んだ形ではないにせよ、それは達成されたようだ」と皮肉を込めてコメントしています。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた