“ニュー懐メロ”って何だ!? 渋谷に突然現れた謎広告の正体を、担当者とZ世代に聞いてみた【追記】(1/2 ページ)
平成後期の楽曲がフィーチャー。
2月19日から渋谷駅の地下(道玄坂側)に「#ニュー懐メロ」をうたう広告が掲出されています。エモいコピーにでかでかと添えられているのは今も誰かの実家のどこかに眠っていそうな音楽プレーヤーの画像。実はしかけが施されていて、スマホでタッチすると液晶に“表示”されている楽曲の特集ページに飛び実際に曲を楽しむことができます(Spotifyではプレイリストが公開中)。
ラインアップはワン・ダイレクション「ホワット・メイクス・ユー・ビューティフル」、ファレル・ウィリアムス「ハッピー」、マーク・ロンソン「アップタウン・ファンク feat.ブルーノ・マーズ」と平成後期を彩った洋楽ヒットソングばかり。ミレニアル世代の記者にとって2010年代の音楽は確かに懐かしい反面、“懐メロ”とくくるにはまだまだ新しいという感覚の曲が並びます。
同日に公開された特設サイトやコンセプトムービーでは、イヤフォンをつけてダンスやカラオケの練習をしたり、CDを貸したり借りたり、イヤフォンはワイヤレスが当たり前になって配信で音楽を聞くことが当たり前になった2024年を生きる私たちにとってちょっとだけ懐かしい光景がフィーチャー。でも有線イヤフォンはまだ使えるしCDは流通しているし、ワン・ダイレクションは活動休止していてもハリー・スタイルズらメンバーは現役バリバリのソロシンガーとして活躍しているのが現在です。
2024年の今誕生した「#ニュー懐メロ」とは誰へ向けた言葉で、どんな思いが込められているのか。ソニー・ミュージックの担当者に話を聞きました。
「懐メロ」という言葉と向き合いなおす 担当者の視点から見る”#ニュー懐メロ”
―― ニュー懐メロの定義とは? このコンセプトが生まれたきっかけから教えてください。
リリースから何年もたっているにもかかわらず、いまだ継続的に聞かれている楽曲があり、それらがなぜ聞かれているのかを自社で調査し始めたのが本プロジェクトのきっかけです。例えばワン・ダイレクション(1D)の「ホワット・メイクス・ユー・ビューティフル」などは現在でもストリーミング数が上昇しており、Z世代からの視聴が多いことがデータからも判明しました。
また、調査を進めていくにつれワン・ダイレクションをはじめとする「2010年代前半の洋楽を群として聞いている」ことが分かったことや、それらを「懐かしいもの」と捉えていたため、その楽曲群と懐かしさを掛け合わせる形でZ世代に向けた懐メロを届けられないか、というところからコンセプトが産まれました。
―― 懐メロとニュー懐メロの違いは何でしょう?
「#ニュー懐メロ」は、<懐メロを、ひと世代分、新しく。>を掲げ、これまでの懐メロの概念をアップデートするプロジェクトです。考えてみると世代によって懐かしいと思う音楽は異なることに気付きます。懐メロという言葉そのものは1960年ごろから使用されており、約60年以上にわたるさまざまな音楽を内包していることになります。
「#ニュー懐メロ」はその一部分の世代を切り取って、新しく符号をつけたものになるので「懐メロ」も「ニュー懐メロ」も対象となる世代以外に違いはありません。また、“懐かしさ”という感情も普遍的なものになりますので、そういった意味でも違いはないと思っています。
―― 今回の企画/広告掲示の意図は?
今回はインターネット上だけではなく、街頭広告といったリアルの場でも接点を作れるようにしました。また、街頭広告には視覚的なアプローチだけではなく「体験」できる“しかけ”を施しています。
持ち運べる音楽としてZ世代から注目を集めるミュージックキーホルダーなどを展開する「The Music」が採用しているNFC技術を活用し、「CDを実際に手に取った」「苦労して音楽プレーヤーに移行した」というリアルな“音楽に物理的に触れる体験”をリバイバルした演出も楽しむことができるようになっています。
また、デザイン面においても各楽曲に対して懐かしさを想起させるようなキャッチフレーズを付け加えています。例えばワン・ダイレクションの「ホワット・メイクス・ユー・ビューティフル」には「CDを手渡ししてきたあいつを、覚えているあなたへ」というフレーズを付けており、音楽にひもづいた情景をより思い起こせるような演出にしています。学生時代に使用していたものなどをちりばめることも細かいですがこだわったポイントになります。
―― ここ数年で音楽を取り巻く環境はどう変化したか、今感じている課題があれば教えてください。
ビジネスとして関わるようになったこの15年で直接音楽に関わる部分としてはCDや音楽ダウンロードから、ストリーミングサービスによる視聴が主流となってきたことです。少し前までは世界の話だったものが、ここ日本でもストリーミング市場は年々大きくなっており「CDやダウンロードを購入されたら終わりの時代」から「聞かれ続けなければいけない時代」になったことは、レーベルだけでなくアーティストにとっても大きな変化だったと言えるのではないでしょうか。
音楽との接点で言うと、TVや雑誌、ラジオなどでしか情報を得られなかったものがさまざまなSNSの普及によりどこでも簡単に得られることができるようになりました。一方で得られる量が膨大になったことによる情報の取捨選択とプラットフォーム側によるアルゴリズムやパーソナル化が進んだことで、これまでの宣伝手法では難しくなってきた部分もあります。
また、直近ではコロナ禍になったことも大きな変化ではありました。特に海外のアーティストにおいては来日できないという状態が数年続き、洋楽への接点が大きく減少してしまいました。もともと、日本国内のアーティストよりも距離が遠かった海外アーティストがより遠くになってしまった、という印象は日々感じておりました。
こういった変化はとてつもなく早い速度で回っているので、変化に対して私たちがどれだけ素早く対応できるのか、そのためにどのような思考でいなければならないか、などが課題の1つとして挙げられます。
―― 今後このニュー懐メロという新しいカテゴリ/定義がどう育っていけばいいと感じますか?
今回私たちがコンセプトの発信や定義づけをしていますが、これはきっかけにすぎないと思っています。思い出と共に心に残る楽曲は十人十色なので、自由に定義してもらえればうれしいです。また、現在は対象が洋楽だけになっていますが、邦楽にも広がることももちろんできます。「音楽」と「思い出」がセットで語られるようなものになれば良いですね。
私たちとしては今回はZ世代を対象としていますが、α世代にも懐メロがあるはずなので、今後はそこへも広げていきたいと思います。
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