吉村昭『雪の花』が小泉堯史監督により映画化 江戸時代末期に天然痘と闘った実在の町医者役に松坂桃李

共演に役所広司さんと芳根京子さん。2025年1月24日に全国公開。

» 2024年02月22日 07時00分 公開
[西尾泰三ねとらぼ]

 江戸時代末期に種痘の普及に尽力した実在の町医者を描いた吉村昭さんの歴史小説『雪の花』が、『博士の愛した数式』などで知られる小泉堯史監督により映画化。主演に松坂桃李さん、共演に役所広司さんと芳根京子さんを迎え、2025年1月24日の全国公開が明かされました。

吉村昭「雪の花」が映画化 『雪の花』が映画化

 吉村昭が1988年に発表した『雪の花』(新潮文庫刊)は、江戸時代末期を舞台に、天然痘と闘った一人の町医者の実話を描いた歴史小説。天然痘の確実な予防法が異国から伝わったと知った福井藩の町医者・笠原良策が、京都の蘭方医・日野鼎哉に教えを請い、私財を投げうち種痘の苗を福井に持ち込んだ史実を基にした物語です。

雪の花 人々の命を救うために自己をささげた一人の医者の勇気と献身を描いた吉村昭さんの歴史小説『雪の花』

 映画の監督を務めるのは、黒澤明監督に長く師事した小泉堯史さん。黒澤監督の遺作脚本「雨あがる」で監督デビューを果たし、「博士の愛した数式」や司馬遼太郎の時代小説を映画化した「峠 最後のサムライ」などの作品で知られています。

 笠原良策役には、松坂桃李さん。「侍戦隊シンケンジャー」で俳優デビューを果たし、映画「新聞記者」では第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。2023年はTBS系ドラマ「VIVANT」や映画「ゆとりですがなにか インターナショナル」に出演してきた松坂さんは、映画「居眠り磐音」(2019年)以来の時代劇に挑戦しています。また、良策を支える妻・笠原千穂役には芳根京子さん。小泉監督作品には「峠 最後のサムライ」以来の2度目の出演で、松坂さんとは「居眠り磐音」以来2度目の共演です。

 京都の蘭方医・日野鼎哉(ひのていさい)役には役所広司さん。小泉監督とは「峠 最後のサムライ」以来のタッグで、松坂さんとは「孤狼の血」「VIVANT」など5度目の共演となります。

松坂桃李コメント

 非常に身が引き締まる思いです。時代劇に参加するのは『居眠り磐音』以来。約5、6年の時間がたっていますが、小泉堯史監督のもとで 演じさせてもらえるということが、僕にとっては非常に光栄でした。そして、今回、再共演となる役所広司さんはじめ、すてきなキャストの方々と共演させてもらえたのは何より心強かったです。分からないもの程怖いものはない、そんな未知の病と戦った一人の町医者がつないだ希望。懸命に命と向き合う笠原良策の姿を『雪の花』という作品を通して観ていただきたいです。

役所広司コメント

 小泉監督の作品にはどんな形でも参加したいと思っていたので、声をかけていただき是非参加させてほしいとお答えしました。松坂くんとは何度かご一緒していますが、良策という役は本当に心の澄み切った青年で、松坂くんにぴったりだと思いました。今の時代があるのも、いろいろな人たちが命を懸けて頑張った結果なのだろうなと、そんな想いをこの映画を通して感じていただきたいです。

芳根京子コメント

 小泉堯史組に参加するのは2度目だったのですが、千穂という素晴らしい役に呼んでいただけてとても光栄でした。と同時に、自分に務まるのかすごく不安でしたが、小泉監督から優しさと強さを大切にしてほしいと導いていただきました。今回は殺陣や太鼓、調薬など撮影前から毎日必死に役作りを準備してきましたが、時間をかけた分より丁寧に演じられたと思います。

 松坂桃李さん演じる良策ともすてきな時間を積み重ねることができました。

 こういった歴史があるから今があるということを是非感じていただきたいです。

小泉堯史監督コメント

 映画監督として、歴史の上で出合った実在の人物は、『明日への遺言』の陸軍中将・岡田資。『峠 最後のサムライ』の長岡藩家老・河井継之助。そして、この度の『雪の花』福井藩町医者・笠原良策。

 いづれも、己を無に帰し、事に当たった男達。

 小林秀雄さんは『無私の精神』で、次のように書いています。

 「実行家として成功する人は、自己を押し通す人、強く自己を主張する人と見られがちだが、実は反対に、彼には一種の無私がある。空想は孤独でも出来るが、実行は社会的なものである。有能な実行家は、いつも自己主張より物の動きの方を尊重しているものだ。現実の新しい動きが看破されれば、直ちに古い解釈や知識を捨てる用意のある人だ。物の動きに順じて自己を日に新たにするとは一種の無私である」と。

 江戸末期、福井に生きた町医者・笠原良策に、無私の美しい精神を感じます。努力を積み重ね、勇気を持ち、己を捨てて誠実に働く良策の姿は、永遠に価値ある歴史を生み、現在に生きる私達の心に、強く働き懸けてくれます。歴史は、決して進歩するものではありません。歴史は自然とともに、いつも同じものと戦っているのです。

 今や、品位をあえて失わせようとする文化が、消費と手を結び、勝手気ままに振る舞っています。それによって破壊されるのは、道義的な美しさです。言葉や行ないの立派さは、美しさがあればこそ、時の移り変わりに、耐えることができると謂います。

 良策との出合いは、歴史を鑑とし、少しでも良きものになれるかもしれないと、私達に希望や勇気を示し、道をすがすがしく照らしてくれるのでは、と思っています。

(C)2025映画「雪の花」製作委員会

読まれている記事

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/08/news177.jpg イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
  2. /nl/articles/2411/08/news043.jpg 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
  3. /nl/articles/2411/09/news047.jpg 「笑ったw」 郵便局に1円切手を買いに行ったら…… “まさかの提案”に思わず恍惚の1000万表示
  4. /nl/articles/2411/09/news008.jpg 狭い場所に植えた“ゴッツいトネリコ”を抜根したら…… 地面から現れた目を疑う光景にプロも絶句「植えてはいけない木」
  5. /nl/articles/2411/08/news193.jpg 「NBA行ける」 真美子さんとバスケ共演の大谷翔平、“想像以上の実力”に驚き 「何やっても成功してた」
  6. /nl/articles/2411/09/news040.jpg 「そっちかよ!」 “リバイバル版ガンプラ”で「ある意味パーフェクトガンダム」爆誕→「笑った」「身ぐるみはがされた」
  7. /nl/articles/2411/09/news022.jpg “根魚”と呼ばれる魚を捕獲→水槽に入れてみたら…… 普段は絶対見られない姿に衝撃走る「すごいことやってる」「家で飼いたくなる」
  8. /nl/articles/2411/09/news019.jpg 生後3カ月赤ちゃん、小児科医からの“まさかのひと言”が「吹きましたw」「座布団あげたい」と話題 → 10カ月後どう成長? ママに聞いた
  9. /nl/articles/2411/06/news165.jpg 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
  10. /nl/articles/2411/09/news017.jpg 釣りに飽きた柴犬→ピチピチと動く魚を初めて見たら…… 一転して“とんでもない反応”に「咳き込むくらい笑えた」
先週の総合アクセスTOP10
  1. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  2. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  3. 結婚相手を連れてくる妹に「他の人に会わせられない」と言われた兄、プロがイメチェンしたら…… 「鈴木亮平さんに見えた」大変身に驚がく
  4. 「2007年に紅白出場」 38歳になった“グラビア界の黒船”が1年ぶりに近影公開→驚きの声続々
  5. 「クソビビったwww」 ハードオフに38万5000円で売っていた「衝撃的な商品」が90万表示 「売った人突き止めたい」
  6. 夫婦喧嘩した翌朝の弁当を夫が作ったら…… “森”すぎるビジュアルに「インパクトすごい」「最高に笑いました」の声
  7. 約9万円の「高級激レアガンプラ」を10時間かけて制作→完成品に「家宝だ」「めっちゃくちゃにかっこいい!!」
  8. 天皇皇后両陛下主催の園遊会、“お土産”に注目 ジョージア大使「大好物です」「娘たちからも大好評」
  9. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  10. 事故で重体の人気日本人TikToker、1カ月の意識不明と家族ケア経て逝去……“旅立ち直前に会った”親友は「励ましに来てくれてたのかな」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた