押井守「紅い眼鏡」4Kリマスター化クラファン、目標金額の3倍に到達 押井監督が技術的側面からリマスターの意義明かす(3/4 ページ)
「紅い眼鏡」主演千葉繁コメント
時が経つのは早いもので、気がつけばあの狂乱の日々から38年!
そもそも事の始まりは数々のアニメ作品で音響監督をなさっていた斯波重治さんから私のファンクラブ向けに詩の朗読やショートドラマなどを収録したLPレコードを作りたいんだがどうだろう? というありがたいお話からだった。
ところがその企画に押井守監督や脚本家の伊藤和典さんが参加したところから話はどんどん大きくなっていった。「どうせなら映像の方がファンも喜ぶのでは?」「いやいや、だったらいっそのこと35mmの映画にしようよ!」などと話は盛り上がり、最初は穏やかに微笑んでいた斯波さんの顔が徐々に青みを増していき、気が付いたら夕方6時くらいに撮影現場に入り朝日が昇ってきたら終了解散という前に進むことしか考えない魔物が走り始めていた!
小平の廃工場、横浜の安ホテル、東京湾埋立地、その他数えきれないほどの怪しげなロケ現場で牛丼を貪り、赤い眼鏡の裏に仕込まれた豆電球で瞼を焦がされ、どぶ川の水をしこたま飲み腹をくだし、拷問台に縛り付けられ殺意ある水責めに死にかかり、深夜3時に長い階段を何度も駆け上がり足が攣り、狭いトイレで殴り合いの末強烈な下痢に襲われのたうち回り、前貼りもつけず白塗りの輩を撃退し、非合法の立ち食い蕎麦屋で不味い蕎麦を啜りなどなど夢の断片を彷徨い歩く日々が続いた。
そのため睡眠不足と過労がピークに達し直立姿勢でカチンコを握ったまま爆睡していた助監督やら、隣のセットでひたすら穴を掘り続け結局その労働が報われることなくスコップを枕に横たわったスタッフやらやらの魂が明け方の撮影現場に浮遊していた。
だがそんな環境にあっても我々は押井監督の「夢の世界」に酔いしれ踊っていたのだ! そして「あの夢」は今も続いている……。
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