「『逆転シリーズ』を拡大していきたい」 「逆転検事1&2 御剣セレクション」発売直前、キャラデ岩元辰郎氏、橋本シリーズP、西田Pロングインタビュー(2/5 ページ)

» 2024年09月01日 12時30分 公開
[Kikkaねとらぼ]

腕組み御剣の滑らかな指トントン――衝撃の129キャラ1200アセット制作秘話

逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 2Dドットグラフィックスの“クラシック”モード
逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 今回HDリマスターされたグラフィックスの“モダン”モード

――GBA時代の2DドットグラフィックスをHDリマスターでレベルアップさせた「逆転裁判1・2・3・4」、本格的な3Dグラフィックス体制になった「逆転裁判5・6」「大逆転裁判1・2」と比べると、「逆転検事シリーズ」の一番の差別化は2Dドットグラフィックスの維持にあると思いますが、2Dドットグラフィックスを“クラシック”、HDリマスターのグラフィックスを“モダン”と名付けたきっかけについて教えて下さい。

西田2DドットとHDについては、「どちらが上」という表現にはしたくなかったので、ゲーム内では“リマスター”“リファイン”といった呼び方をせずに“クラシック”と“モダン”という呼び方にしています。「どちらも作りこまれており、スタイルの違い」ということを示しています。

  また変わるのは見た目だけで、操作方法は変わらず難易度は同じです。「ストリートファイター6」にもモダン操作とクラシック操作を搭載していますが、同じ呼び方になっているのは本当にたまたまです。

――御剣の胸元の“ヒラヒラ”、一柳弓彦の手など、本当に細かい表現が素晴らしい“モダン”なのですが、制作の裏側を少し教えていただけませんか。

西田まず岩元さんにキャラクターデザインをしていただいて、それを動かすアセットを作るスタッフを社外も含めて数十人集めました

――数十人!? 「もうアニメのクオリティじゃないか」と思ったんですが、それほどのスタッフさんが関わっているんですか。

橋本そうです、数十人……(笑)。

岩元まず僕が主役である御剣と、モブキャラクターである警察官のサンプルを作って、「ここはこうしたい」「こっちはどうでしょう?」というやり取りをしていたんです。そうしたらそこから急に「この絵だったらこのぐらいは動かないとダメだ」とカプコンが本気を出してきて。アニメーションを動かすためのサンプルを開発して、さらに何度もリテイクを重ねて完成させていきましたね。

逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 表情までしっかり見える“モダン”モードの御剣

 そもそもDS版のドット絵が本当に素晴らしいんですよ。ほんの1ドットの違いでキャラの感情を感じさせてしまうんです。そんなカプコンの神ドッターの方々が作ったキャラクターのモーションを、高解像度でアニメーションのように動かすとなると、細密に描けば描くほど足りない感じがしてきてしまって。

 必要なのはドットと同期した動きなので、その中に出来るだけのことを、詰め込めるだけ詰め込むしかなかったですね。

――本当にオドロキの連続です。

岩元僕も最初「できるのかなぁ、これ」と思いましたよ。

橋本全部で何枚でしたっけ(笑)。

西田129体の1200アセットです。でも歩く方向とかもあったりするので、トータルでは約2000作っています。さすがにアートディレクターも「終わり見えないんですけど」って言っていました。

――決断にはマヨイもあったかもしれませんが、そういった過酷な作業を覚悟しても、この方向性で行こうと決められたのは。

西田私と橋本、アートディレクターで方向性を決めたのですが、デザイナー陣が社外の方も含めて想定以上の作りこみをしてくれました。

橋本リマスターのタイミングで高画質化する」ということは決めていたので、最初にどうやって高画質化するかを西田に3カ月ほど検証してもらっていました。

西田フィルターをドット絵にかけて手軽に高画質化する等も試したのですがそれだとあまり変わらないですし、ドットで一から作り直すというのも労力の割にあまり変わらないと。そこで3Dも試したんですが、これはキャラだけだと違和感がすごくて、最終的に一番しっくり来たイラストタッチを選びました。

 そういった流れでミニキャラクターのデザインを新たに作ることになったのですが、「岩元さんしか描ける人がいない」と思い、お願いしました。

橋本最初はメインビジュアルだけお願いするということでお話を進めていたんですが、「岩元さんにお願いするのがベスト」となって、追加でミニキャラクターのデザインもお願いすることになりました。

逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 開発当時を振り返る西田P、美雲ちゃん手ぬぐいとトノサマン扇子を持参してくださった岩元さん

岩元確かに最初は「メインビジュアルお願いしますね」だけでしたね。

西田本格始動のタイミングで「ちょっと相談があるので打ち合わせに来てもらえませんか?」という電話をして、来ていただいたタイミングで「実は……」という感じで打ち明けました。

逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 カプコンが誇る策士たち

――一旦来てもらうために伏せていたんですね(笑)。

西田そうです(笑)。

岩元だからそのとき僕は「あぁ、メインビジュアルやらせてくれるんだ。ありがたい」と思って打ち合わせに来ていたんですけれど、「メインビジュアルもそうなんですが、実は……」という話になってサンプルを見せていただいたときに、「あぁ、確かにこれは一回やらないといけないですね」という感じになりました。

 そのときはまだ「疑似3Dアニメーションで行けないか試しているので、その素になるものを描けばいい」という話だったので、「それぐらいなら」と引き受けたんですが、あとになって大変なことに(笑)。

 終わった今となっては全部やって本当によかったんですが、やっている最中はゴールの見えないトンネルを歩いている感じが僕も含めてスタッフみんなしていたんじゃないかと思います。

逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 スタッフの熱意と努力で生み出された“モダン”のキャラクター達

――キャラによっては1度しかやらないモーションもありますよね。そういったモーションにも同じ労力がかかるということですよね。

岩元ちょっとマニアックな話になりますけれど、1回きりのモーションよりもループアニメーションの方が大変なんです。1回しかやらない動きであれば多少絵に違和感があってもそこまで気付かないものなのですが、例えば“歩く”“走る”といった連続のモーションは1回きりのモーションよりもずっとずっと精度を高くしないといけないんです。

 長く走らせたとしても飽きさせないようにしないといけないので、作り手としては1回きりのモーションの方が気楽に作れるという感じがします。

――ミニキャラクターのデザインや動きを通して、あらためて岩元さんのキャラクターへの愛情を感じます。

岩元本当にいろいろなことをやっているんですよ、例えばこっそり足元の方だけ暗くしているとかね。ちょっとだけキャラクターにデフォルメも入れているんですが、なるべくキャラクターの表情が見られることと、俯瞰から見下ろしている感じに見せたかったからなんですね。そういうところをじっくり見ていただきたいですし、どう変わったのか楽しんでいただけたらと思います。

――皆さんのお気に入りのモーションはありますか。

岩元僕は一柳弓彦全般です。ドットのときの解釈と少し変わって、手と足の動きもバストアップ準拠のポーズになりました。イチオシは電話をかけるときのモーションで、すごく凝ってて超かわいいのでぜひご注目いただけたらと思います。

逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 この“クラシック”な弓彦が“モダン”ではどんな動きを見せてくれるのか楽しみ

西田私は内藤馬乃介のガンアクションが気に入っています。この動きは本編だとループで見ることができないので、今回搭載されたギャラリーのキャラ図鑑でじっくり見ていただきたいです。実は目線までちゃんと動いているんですよ

橋本スタッフ間では御剣が紅茶飲んでるモーションが好評でしたが、僕は御剣が腕を組んで指をトントンするモーションが好きですね。ドット絵のときのモーションはかなり秀逸だったんですが、それをアニメーション化してみたところかなり滑らかに動いていて、最初見たときに「いいな」と思いました。

西田先ほどもお話しましたが、ギャラリーのキャラ図鑑は全キャラの全モーションを“クラシック”と“モダン”両方のバージョンでご覧いただけますので楽しみにしていただきたいです。

 特に“モダン”は表情以外もデザイナーのこだわりが半端ないので、例えば狩魔冥のムチのしなり方とかもとても滑らかになっているんですけれども、そのせいで岩元さんもすごい苦労されていましたね。

岩元“モダン”に関してはアニメーションのスタッフが本当にすごいんですよ。「とことんやろう」って覚悟していたつもりでしたが、「もういいじゃん」っていうところも妥協させてもらえませんでした。

西田動きに関してはモーションリーダーをカプコンの2Dアニメーションに詳しいメンバーにお願いしてましたが、筋肉の動き、影の動き、しわの入り方までかなり厳しかったですね。

橋本チェックしては「不自然だ、ダメ」みたいなね(笑)。

逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 開発当時を振り返る橋本P

岩元最後の方、僕、その方に褒められてうれしかったですもんね(笑)。

西田あはは(笑)。「物理的に〜」とか「生物学的に〜」といったフィードバックをやたらと聞いたような記憶があります……。ミサイル等の動物も登場しますが、同じくこだわりの影響を受けていますね。

岩元今回メインビジュアルを描くにあたって「逆転裁判123成歩堂セレクション」「逆転裁判456 王泥喜セレクション」「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟」全部見させていただきましたけれども、本当に見れば見るほど「絶対に構図決めるの大変だったはず」というポイントがたくさんあるんですよ。

「逆転裁判123 成歩堂セレクション」プロモーション映像
「大逆転裁判1&2」プロモーション映像

 どのキャラクターも主役にしなきゃいけない中でさらに主役級のキャラクターがいて、クオリティーも上げなきゃいけないので、本当にやってみて改めてその苦労と努力がしのばれましたね。

西田確かに「逆転裁判456 王泥喜セレクション」「大逆転裁判1&2 -成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟」を見て、岩元さんが「すごい」とおっしゃってくださっていました。でも私からは「真似はしないでください。岩元さんらしさを出してください」というお願いをしましたね。

橋本そのオーダーのおかげで「逆転検事1&2 御剣セレクション」は本当に線とか塗りとか岩元さんらしさ全開で、「いやぁ、いい絵だな」と思いましたし、「本当に岩元さんにお願いして良かったな」というのが最初に見たときの素直な印象でした。

逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 場面によってもこだわり満載の“モダン”

――「逆転検事1&2 御剣セレクション」では、背景も新たに描き直されているシーンがあるように感じたのですが、あれはどういった経緯からなのでしょうか。

逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 描き直された背景。御剣の背後にある花瓶のヒラヒラがスタイリッシュになったほか、お花のボリュームもアップ

西田背景のデザイナーがこだわって描き直したポイントもありますが、基本的にはこれまでの画面サイズでは見えなかった部分がHD化されたことによって全部見えるようになったというようなイメージでしょうか。

橋本「逆転裁判456 王泥喜セレクション」のときはいろいろと背景を描き足してデザインも修正していたんですが、「逆転検事1&2 御剣セレクション」に関しては全体的に高画質化する中でそのまま使うカットもあったり、HD化することによって足りなくなる部分を変に描き足すのではなくて全部描き直したりという形を取りました。今回はテレビモニターで遊んでいただくことを想定しているので、高画質にこだわっています

西田マニアックなポイントですが“クラシック”を選ぶとモバイル版のドット絵になるので、今回のHDリマスターの高画質背景と合わせると差が出てしまうんです。そこであえて背景をなじませるためにもう一回調整をしているので“クラシック”の方が背景に関しては手間をかけた処理を施しています。

逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 “モダン”
逆転検事 御剣セレクション 御剣怜侍 “クラシック”。見比べてみると背景がなじんでおり、ひと手間加わっているのが確かに分かる

岩元さんが100パーセント開発を手掛けたキャラも!?――開発チームの押しキャラは意外なあの人?

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2409/14/news065.jpg 天皇皇后両陛下の那須静養、愛子さまが天皇陛下のため蚊を手で払う場面も…… “仲むつまじいショット”が約240万再生
  2. /nl/articles/2409/13/news079.jpg 「脳がおかしくなった」 新宿駅を出る→“まさかの光景”に思わず三度見 「意味わからん」「田舎者にはマジでダンジョン」
  3. /nl/articles/2409/14/news035.jpg 「変わりすぎやん!」 たった5年間で…… 梅田の町並みの“激変”に衝撃の声 「ここがこう!?」「再開発ってすごい」
  4. /nl/articles/2409/14/news006.jpg これは憧れる…… “1人暮らし歴5年”のこだわりがつまった“1K7畳”に反響 「なんておしゃれ」の声
  5. /nl/articles/2409/13/news194.jpg 「浮ついた気持ちあった」 “30万人が視聴”有名ストリーマー、セクシー女優との“不倫疑惑”を弁明
  6. /nl/articles/2409/14/news033.jpg 夫の弁当を8年間作る妻、寝起き5分で作り始める弁当をのぞくと…… “お互いストレスが少ない”秘密に「お店で売ってたら絶対買う」
  7. /nl/articles/2409/14/news009.jpg そうはならんやろ “バラの絵”を芸術的に描いたら……“まさかの結果”が200万再生 「予想を超えてきた」【海外】
  8. /nl/articles/2409/12/news004.jpg 雑草だらけの庭が“たった1台の草刈り機”で…… “見事な変化”に7000万再生 「よくやった」「まさにプロ」
  9. /nl/articles/2409/07/news027.jpg “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  10. /nl/articles/2409/10/news029.jpg 550円の“壊れたガンプラ詰め合わせ”を購入→ジャンク品を“大復活”させる職人技に脱帽 「ロマンを感じる」
先週の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  3. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  4. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声
  5. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  6. 猛毒ガエルをしゃぶった30分後、口がとんでもないことに…… 直視できない異常症状に「死なないで」「この人が苦しむってよっぽど」
  7. 33歳の「西郷どん」二神光さん、バイク転倒事故での急逝に衝撃 1年前の共演者は“願い”明かし「叶わないなんて」
  8. 「コレ入れると草が生えない」 外構工事のプロがやっている“究極の雑草対策”に注目
  9. 「へー知らんかった」 わずか7年で“消えた駅” 東京メトロが明かす“知れば納得の歴史” 「だからあんなに……」
  10. 秋葉原のトレカ店が“買い占め被害” 近隣店とその常連客が共謀し“全口購入の人員確保” 「大変遺憾で残念な限り」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」