「スプラッシュ・マウンテン」になぜ消滅の噂が? 大人気アトラクションをめぐる日米の動向を知る(3/5 ページ)

» 2024年10月23日 11時00分 公開
[宮田健(dpost.jp)ねとらぼ]

しかし、それは今ではない?

 ただ、それを実行するには、相当な時間がかかるであろうという情報も合わせて記しておきたいと思います。その兆候は、2024年8月に開催されたディズニーファンのためのイベント「D23」で発表されました。それが、冒頭に紹介した謎の模型写真です。

ディズニーランド・パリに作られる新アトラクションの模型。その全体像はまさに「スプラッシュ・マウンテン」そのもの? ディズニーランド・パリに作られる新アトラクションの模型。その全体像はまさに「スプラッシュ・マウンテン」そのもの?

 “究極のディズニーファンイベント”と称して開催された公式のイベント「D23」では、世界のディズニーパークに関する、将来の計画を大々的に発表しました。その中で個人的に大注目したのは、東京ディズニーリゾート……ではなく、遠くのディズニーランド・パリにおける新発表です。

 ディズニーランド・パリの第2パーク「ディズニー・アドベンチャー・ワールド」(現:ウォルト・ディズニー・スタジオ・パークが名称変更する予定)では、新たなアトラクションとして、映画「ライオン・キング」をテーマにしたボートライドを新設することを発表しました。アニメ版をベースとし、最後はプライドランドの急流にボートが落下するというイメージのアートと、会場にその模型が公開されていました。

「D23 2024」で発表された「ライオン・キング」をテーマにしたアトラクション 「D23 2024」で発表された「ライオン・キング」をテーマにしたアトラクション

 見ていただくとお分かりのように、明らかにベースとなるハードウェアは「スプラッシュ・マウンテン」そのものといえます。が、ディズニーランド・パリにはこれまでスプラッシュ・マウンテンが存在していた訳ではなく、驚くべきことにこれをゼロから作り出すことになります。

ディズニーランド・パリの第2パークには、アナと雪の女王のエリアのとなりにライオン・キングのアトラクションが登場する ディズニーランド・パリの第2パークには、アナと雪の女王のエリアのとなりにライオン・キングのアトラクションが登場する

 ここからはあくまで筆者の私見でしかありませんが、この発表を聞いたときに違和感を覚えるとともに、これはもしかしたら何かを再利用した案なのでは? と感じました。

 あるパーク向けに計画をしたものが流れてしまったとき、それが他のパークで現実になることはこれまでもいくつかあり、例えば当初東京ディズニーシーを拡張しようとした「北欧」をテーマとした新テーマポート構想(2015年)の基本構成は、ほぼそのまま香港ディズニーランド、そしてディズニーランド・パリの「World of Frozen」に引き継がれています。それについては以前書いた記事でも触れていますので、ぜひ参照ください。

 この想像を前提とすると、もしかしたらパリに作られる「ライオン・キング」テーマのアトラクションは、どこかのパークが蹴った案だったのでは? と考えることもできないでしょうか。

 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、東京ディズニーリゾートに作られる要素のクオリティーに関して厳しいことで知られており、東京ディズニーシーの構想前にはディズニー本体から、映画スタジオをベースにしたテーマパークを打診されたものの、あくまでそれは二番煎じであり日本人には合わないと判断し、当初の検討作業をちゃぶ台返ししたという記録が残っています(オリエンタルランド代表取締役 取締役会議長の加賀見俊夫氏の著書「海を越える想像力」を参照)。

 つまり、ディズニーの提案をそのままを採用することは少なく、いくつもの案が却下されたと考えると、カリフォルニア、フロリダでテーマ変更された「ティアナのバイユー・アドベンチャー」、および「ライオン・キング」テーマのアトラクションも、どちらもオリエンタルランドのOKが出なかったのではないか、と推測しています。

 裏を返すと……世界の「スプラッシュ・マウンテン」刷新作業は、東京を含めディズニーのイマジニアリングがストーリーと模型を作るレベルにまで進んでおり、かつそれが却下されて他のパークで受け入れられる、というとこまでの時間が経過しているという、現在進行形の作業であることも把握できるかと思います。そのため、未来永劫東京だけは「スプラッシュ・マウンテン」が残るとも全く思えないというのが、私自身の考え方です。

 ただ、2028年まで新生「スペースマウンテン」はオープンせず、さらに10月末で「バズ・ライトイヤーのアストロブラスター」がクローズすることを考えると、パーク自体のキャパシティ減を引き起こす、Eチケット級のアトラクションを今クローズできないという事情もあります。

現在東京ディズニーランドではアトラクションのリニューアルが進んでおり、このタイミングで最大級のアトラクションを減らすことはパークの魅力を下げることになり得る……? 現在東京ディズニーランドではアトラクションのリニューアルが進んでおり、このタイミングで最大級のアトラクションを減らすことはパークの魅力を下げることになり得る……?

 安心してほしいのは、オリエンタルランドほど日本のテーマパークを理解している企業はなく、ファンの嗜好を理解し、最も素晴らしいものを持ってきてくれるであろうという信頼がある点です。ティアナもシンバもストーリーとしてはよいかもしれませんが、あのスプラッシュ・マウンテンを置き換える力が日本にあるかというと判断が難しいでしょう。

 かつてディズニーのCEOだったボブ・チャペック氏は、ある講演のなかで「ウォルトは、彼が作ったパークをディズニーの歴史を見るための博物館にしようとは考えていないだろう。パークは時代とともに、そしてゲストとともに進化する生き物だ」と述べていました。ファンからは嫌われていたCEOでしたが、この言葉だけは心に残っています。

 私自身は「スプラッシュ・マウンテン」の行く末を楽観的に捉えています。そして、これまでと同様に新しいエンターテイメントで「驚かせてくれたまえ!」と、脳内のイーゴが叫んでいます(『レミーのおいしいレストラン』)。いま、ディズニーのテーマパーク事業はノリにノっています。まだ見ぬ未来を一緒に夢みようではありませんか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2410/22/news187.jpg 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  2. /nl/articles/2410/21/news017.jpg ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  3. /nl/articles/2410/21/news139.jpg 飛行機で傷口が感染し「身体の一部を切除」 133万フォロワーの元アイドル「痛みで涙が止まらない」悲痛の現状報告
  4. /nl/articles/2410/22/news047.jpg 二度見されるほど爆毛だった赤ちゃん、3歳の今は…… 成長の軌跡が70万再生「ぶふぉっ!!と吹きました」「なんて可愛い」
  5. /nl/articles/2410/21/news126.jpg 「笑いが止まらない」 深夜のバイクで職務質問 → バッグから出てきたものは…… 警官も笑った“とんでもない光景”が1000万表示 「キマってますねぇ」
  6. /nl/articles/2410/19/news010.jpg 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  7. /nl/articles/2410/21/news163.jpg 人気VTuber、とんでもない“運と奇跡”でゲーム大会優勝→困惑&爆笑の声が殺到 「バグってる」「ミスターサタンみたいで草」
  8. /nl/articles/2410/22/news019.jpg 「え、公式の宣材写真ですか!?」 口紅をプロが本気で撮影すると…… “信じられない結果”が100万再生 「声が出ちゃいました」
  9. /nl/articles/2410/20/news022.jpg ガリガリでノミだらけの野良猫を保護したら…… 2日後の驚くべき変化に「ひたすら泣ける」と23万超再生
  10. /nl/articles/2410/22/news026.jpg 捨てられないハギレ→驚きの大変身! “ちょっとそこまで”にぴったりなアイテムが90万再生 「早速作りました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  3. 「Snow Man」の映像が中国で物議→公開停止 所属会社「歴史的事象に対する配慮に欠けた」と中国語と日本語で謝罪
  4. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  5. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  6. 「かわいいってこういうこと」 生後1カ月の子猫が暖をとる場所は……幸せしかない姿に「この角度から見るのが最幸」
  7. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  8. 「ボットン便所を簡易水洗にしたい」→「どれどれ……」 建設会社スタッフが驚がくした“歴史的遺物”に大反響 「相当貴重なもの」
  9. 「その手があったか!」 ほぼ卵焼きだけの弁当?→“まさかのサプライズ”が800万再生 「天才すぎて泣いた」
  10. 飛行機で傷口が感染し「身体の一部を切除」 133万フォロワーの元アイドル「痛みで涙が止まらない」悲痛の現状報告
先月の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  3. 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
  4. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  5. 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
  6. 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  7. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  8. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  9. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  10. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声