ねとらぼ
2025/03/27 18:00(公開)

サラリーマン、プリキュアを語る:「過去を振り返ることは悪いことではない」 オトナ向け続編だからこそ描けた「魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜」の世界

最終回直前。「まほプリ2」とは何だったのか? を振り返っていきます。

 「まほプリファンは過去に囚われているのでは?」

 2016年に放送された「魔法つかいプリキュア!」の続編が深夜アニメで作られると発表されたとき、多くのプリキュアファンが驚き、そして歓喜しました。

 しかし、同作のシリーズ構成・村山功氏は「続編を望むということは、すなわち過去に囚われていること」ではないのか、と雑誌記事で語ります。

 続編となった「魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜」は決して“懐かしさ”を楽しむような、お気楽な作品ではありませんでした。

 この作品で描かれたことは何だったのでしょうか。そして「まほプリファンが過去に囚われている」ことの意味とは何だったのでしょうか(本記事は第11話終了時点での内容となります)。

魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜
続編となった「魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜」
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kasumi プロフィール

プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。

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「まほプリ」の続編が生まれた理由

 「魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜」(以降、「まほプリ2」)は2016年放送の「魔法つかいプリキュア!」(以降まほプリ)の正当な続編として制作、初の深夜帯での放送となりました。

 オトナをターゲットとしたプリキュア作品としては2023年放送の「キボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜」に続く2作目となります。

 なぜ「オトナ向け作品」として「まほプリ」が選ばれたのでしょうか?

 その理由の一つに「放送終了後も熱心なファンが多いこと」があると思われます。もちろんどの作品にも熱心なファンがいるのですが、特にまほプリは放送終了から9年たった今でもSNS上で関連の話題が定期的に盛り上がりを見せ、そのファンの熱量の高さが伺えます。また、2019年の「NHK全プリキュア大投票」において女性支持が多い他シリーズに比べ男女比がほぼ50:50であり、比較的男性人気が高いことでも知られています。

 また「まほプリ」はプロデューサーの内藤圭祐氏をはじめ、制作者側の熱量も高いこともファンの間では有名です。

魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜
朝日奈みらい役の声優・高橋李依さんもまほプリの熱量が高い

 例えば、朝日奈みらい役の声優・高橋李依さんは数多くの主演作品がある中でも、いまだにX(Twitter)のトップ画像が「魔法つかいプリキュア」ですし、事あるごとにまほプリ愛を語っていたりもします。

高橋李依 公式X
高橋李依さんのXトップ画は「魔法つかいプリキュア」(画像出典:高橋李依 公式X

 内藤プロデューサーは「大人向け企画には「まほプリ」が向いているのでは?」という話があってからのスタートとなったと語っています。

内藤 ありがたいことに、大人向けの企画には「まほプリ」が向いているんじゃないかという話が出て、それでスタートした感じでした

徳間書店 アニメージュ 2025年2月号(P79)

 作中でラストに大学生になっていることもあり、ちょうどターゲット層とも重なるため「オトナ向け続編」としては最適な選択だったのではないでしょうか。

 続編が作られるためにはファン側だけではなく、制作者側の熱量も必要と聞きます。

 そんなファン、制作者ともに熱量の高い作品が大人向けの続編として選ばれたのも納得できますよね(もちろん、それが大きな利益につながることも織り込み済みでしょうし)。

魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜
ファンも制作者も熱量が高い「魔法つかいプリキュア!」
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過去を懐かしむことは必ずしも悪いことではない

 「まほプリファンは過去に囚われているのでは?」

 同作のシリーズ構成・村山氏はアニメ誌にてそう語っています。

 それは「まほプリ」のファンだけではなく制作者も過去に囚われているのだとして、その「過去に囚われている」ことこそが「まほプリ2」のテーマにつながっているのだとしています。

――すると「過去への憧憬」は、「まほプリ」に対するノスタルジーからきたものであると。
村山 そうです。「『まほプリ』の続編を観たいというのは、すなわち過去に囚われているってことなのでは?」と。それはファンの人たちだけじゃなくて、我々スタッフや、ひいては自分自身も含めて。みんな思い入れが深すぎるので。
徳間書店 アニメージュ 2025年4月号(P24)

 確かにわれわれは、まほプリの世界にずっと囚われている部分はありますよね。

 また、村山氏は同時に「過去への憧憬(どうけい)」を同作の一つのテーマとして挙げています(※憧憬:あこがれること)。

魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜
同作の敵、謎の青年アイルは過去に執着している

 同作では、「過去に永遠にとどまりたい」と願うキャラクター・青年アイルを通して過去への憧憬が描かれました。

 「過去にとどまること」は「未来志向」のプリキュアにおいては受け入れがたいものです。しかし、村山氏は「まほプリ2」で表現したかったことの一つとして「過去を懐かしむことは必ずしも悪いことではない」とも語っています。

いわば、その人の過ごした「すべての時間」を大事にすべきで、今だけを切り取ってあれこれ言うのはどうなんだろう、というのもありました。
(中略)
その積み重なった一番上の表層だけでなく、その人の歩んできた部分も認めるべきだと思います。その意味では、過去を懐かしむことは、必ずしも悪い事ではないんです。そういう側面も描いているつもりです。

徳間書店 アニメージュ 2025年4月号(P25)

 オトナには過去があり、最新の「今」だけを切り取って評価するのではなく、その人が歩んできた過去もきちんと認めるべきで、「過去を大切にすることは決して悪いことではなく、過去があるからこそ未来へ進めるのだ」としているのです。

魔法つかいプリキュア!!〜MIRAI DAYS〜
過去を懐かしむことは必ずしも悪いことではない

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