男のパンツが広告に? 毎月無料でパンツが届くサービス「フリパン」の狙いとは
1日に何回トイレに行く? 1日に何回パンツを見る? 考えてみたことはあるだろうか。とある実験によると、人は1日平均8回自分のパンツを見るのだとか。それを活用した「新しい広告」が誕生した。
Tシャツでもない。ハンカチでもない。靴下でもない。人が身につけるものを利用した新たな広告が登場した。その広告とは男性用ボクサーパンツ(以下、パンツ)だ。8月中旬、広告入りパンツをタダでもらえるサービス「フリパン」が発表され、ソーシャルメディア上で男子たちの話題をさらった。
そのとき分かっていた情報は、企業の広告入りのパンツが毎月最大7枚、自宅へ無料で届くこと(ただし出稿状況によっては届かないこともある)、また「フリパン」とはFREE PANTS(フリーパンツ)の略であること。それくらいだ。
狙うのは“本人”への広告効果
思いっきりパーソナルな衣類で、自分以外だと家族や恋人など、ごく一部の親しい人にしか見せることのないパンツ。それに広告価値を付加したのにはどういった狙いがあるのか。そもそも広告として成り立つのか。とめどなくあふれてくる疑問を解決するべく、フリパンを運営するWebサービス企業「白狼」を訪問してみた。
のっけから仰天させられた。フリパンは、パンツを着用している本人への広告効果を狙っているという。
「立ち上げ前に、人は1日に何回パンツを見るのか実験してみました。すると1日平均8回という結果が出たんです。多い人は10回くらい見ていますね」(白狼)
パンツを見るタイミングは意外と多い。トイレへ行くとき、着替えるとき、また1週間単位で考えると、洗濯物を干すとき、たたむときなど。Tシャツにしなかった理由は「果たしてそれを外に着て行くか?」と考えたときに「いや、行かないだろう」という結論に至ったためらしい。自分以外の人にほとんど見られないパンツだからこそ、広告入りでも身につけるというアクションにつながるのだ。
半年で192回同じ広告を見る
計算してみよう。1日に8回パンツを見るとして、週に1回の着用を半年続けたとすると、その間に広告が目に入るのは192回。広告を出す企業はパンツ1枚につき500円払う(現在は100枚から出稿可能)。1回見てもらうのにかかるコストは2.6円。これに対して、ダイレクトメールを業者に頼めば1通数十円かかる。またダイレクトメールはすぐに捨てられてしまったり、時に見てもらえないこともあるが、フリパンは何度も見てもらえるのが利点だ。
利点があるのは分かったけれど、良くも悪くもイメージのつきやすいパンツという“媒体”へ、広告出稿はあるのか。クライアントからのウケはどうなのか。
「ブランド買取、車買取の見積もり、保険、IT関連、アプリ、婚活系など、さまざまなクライアント様がいらっしゃいます。アダルト系からはかなり引きが強いのですが、今は『ちょっと待って下さい』という状態です」(白狼)。掲載基準はそれほど厳格ではないが、今は立ち上げたばかりということもあって、特に慎重に進めている。
白狼がフリパンを思いついたのは、同社が手がけているiPhone修理事業のWebリスティング広告を出稿した際のこと。広告料が値上がりしていることにうんざりして、何か別の方法はないかと模索していたことがきっかけだったという。
原色のパンツで元気になってほしい
毎月最大7枚とうたうフリパン、実はターゲティング広告となっている。利用者は登録時に年代、性別、年収、既婚・未婚、恋人の有無、悩み、趣味、携帯の機種など、細かな情報を入力する。クライアントが「20代男性、未婚」と指定すると、それ以外の登録者にはそのクライアントの広告が入ったパンツは届かない。
私は女性だが恋人用にどうかなと思い、自分の名前と性別で登録した(そういう目的で登録する女性もいるらしい)。しかし男性用パンツということで、男性向けに出稿するクライアントが多いため、私のもとへは届かないかもしれない。恋人自身に彼の性別で登録してもらおうと思う。ちなみに登録者は男性が98%、女性が2%で、7割が20〜30代の男性だ。
「パンツにお金をかける海外の男性とは逆に、日本の男性はパンツに無頓着な人が多いです。色もグレーとか黒の地味なものが大半。一般的に原色系のものをはいたことがない人ばかりですが、元気の出る明るい色のものをはくことで、気分をアゲたり、やる気を出したりという効果を狙っています。パンツを通じてその人自身をいい方向へと変えていきたい」(白狼)
色は黒、白、赤、紺、青、ピンク、黄をはじめ、豊富に揃えている。また現在は無料プランのみだが、将来的にはカッコいいパンツが毎月届く有料プラン、また女性への展開も視野に入れているという。パンツを通じた壮大な計画が描かれている。
フリパン〜ソーシャルメディアと、時々、リアル〜
現在登録者は6万人を超えている。告知した8月16日に数十人の登録があり、その翌日は1時間に2000人のペースで増加し続け、ついにサーバーがダウンしてしまったという。スゴい人気っぷりだ。
初回の発送は9月末ごろを予定している。実際にフリパンが届き始めてからも、ソーシャルメディア上で「いいネタ」になることは間違いない。何しろパンツだ。1人が「フリパン来たぜ」と投稿すると、あれよあれよという間にシェアされていきそうだ。ITにあまり詳しくない男性にも早めに到達するWebサービスになるかもしれない。
紙の広告からWeb広告へという流れは進んでいる。しかしWebは必ずしも万能ではない。リアルの力も忘れてはいけない。フリパンはそんなことを思わせてくれる、新しい広告の形だった。
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