JR秋葉原駅から10分程歩いた場所に位置するカルチャーカフェ「私設図書館カフェ シャッツキステ」では毎年ハロウィーンの季節になると恒例のゾンビイベントが行われる。今年はその4回目、題して「Maid of the Dead 4 〜お還りなさいませご主人様〜」が10月25日〜27日にかけて開催された。ホラー作品がちょっぴり苦手な筆者は、恐る恐るその門を叩いた――。
癒しの図書館へようこそ
お店の普段の様子を探るため、実はイベント1週間前にも「シャッツキステ」を訪ねていた。「図書館」と銘打つだけあって、そこにはメイド達が厳選した書籍がずらり。流石と言うべきか、メイドに関する漫画や哲学書、ボードゲームの解説書、BL同人誌(!?)まで多種多様な本が書庫に納められている。もちろん客は自由に閲覧することできる。
クラシカルなメイド服に身を包んだメイド達に給仕されながら、好きな本を読み、ゆったりとくつろぐ。室内にはメイド同士が交わす軽やかで明るい声色の楽しげな会話がBGMとして響く。来店して1時間、その徹底した居心地の良さにすっかり魅了された筆者は「一生ここに住むわ」と決意したのだった。
これはゾンビメイドですか?
そして迎えたハロウィーンである。本題に入る前に警告だ。すまない、メイドさんの萌え萌え〜な絵面を期待している人は帰ってくれないか! だって看板からしてすでにおかしい。「腐え〜なゾンビがお給仕します♪」とは一体……。
き、気合いを入れ直して、お邪魔しま……!!!? これが本当の“腐”女子か。想像を越えた恐怖を目の当たりにすると、もはや笑い声しかでないことを身を持って知った。
ガクッ、ガク。ゆらっ、ゆらっ。ズルッ、ズルッ。何か見えないモノに引きずられるかのように歩きまわるゾンビメイド達。ハーーッハーーッと荒々しい呼吸を繰り返しながら給仕しているではないか。もはや目が合うだけで冷や汗ものだ。
じわりじわりと距離をつめてくるゾンビメイドさんを呼び止め、「め……“名状しがたい萌え萌えオムライス”をお願いします……」と注文してみた。そして出てきたのがメイド喫茶定番、萌え萌えオムライスと……人間の腕。ゾンビメイドが腕から直接搾り取った新鮮な血(ケチャップ)で描くハートマークのようなものをただただ見つめる。
ではさっそくいただこう。クトゥルー神話リスペクトなのだろうか。中からは何やら禍々しいものが。
さらに「皮膚クレープ」と「しゅわしゅわ目玉ジュース」(各400円)も注文。残念ながら売り切れていたが「ダブル脳漿フロマージュ」(400円)というこれまたインパクトのあるスイーツもあった。どのメニューも見た目はグロテスクだが実際に食べてみると繊細な味がしておもてなしの心が感じられる。
店内には普通のメイドさんもいた。なんだかんだで働き者のゾンビメイドさんを「良い目力です!」とほめながらフォローしたり、暴走行為を叱りつけたり、ゾンビ特有のボディランゲージに対して抜群のスルースキルを発揮しながら平然とお給仕していた。
筆者も負けじと、ゾンビメイドさんと異種間コミュニケーションを試みる。プニプニでリアルな感触の人間の腕をゾンビメイドさんと一緒に握って、血を絞り出したり、筆談したり。このようにゾンビと非ゾンビの種族を超えた奇跡の数々が店内の至る所で笑いを生み出していて、思わずほっこりしてしまった。緊張と弛緩の絶妙なバランスは、まさに究極の「癒し」と言えるかもしれない。
ところで、ホラー映画ではハッピーエンドと思わせておいて、実は「新たな恐怖の序章にすぎなかった」というようなオチが多い。きっとこのイベントもここで終わるはずがない。更なる進化を遂げてまた来年、我々を襲うはずだ……! 我こそはという強い自信のあるゾンビの方も、そうでない非ゾンビ方々も「Maid of the Dead 5」の開催を今から楽しみに待とう。
高城歩(@maccha_iri)
フリーライター。自他ともに認める「全方位オタク」。日本のポップカルチャーとよばれる事象を研究しつつ、アニメ・ボーカロイド・フィギュア・2.5次元ミュージカルにまみれる日々。最近ではコスプレにも挑戦。能や文楽など日本伝統芸能をこよなく愛する一面も。モットーは「百聞は一見に如かず」、まずは何事も自ら体験してみるタイプ。好きなドイツ語は「クーゲルシュライバー(意味:ボールペン)」
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残酷な結末に美しい愛がある。