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実体化した初音ミクにおさわりしてきた ミクの声で演奏できる「歌うキーボード ポケット・ミク」

初音ミクに歌ってもらうためにはパソコンが必要だ、というのは4月2日までの話。4月3日からは、ポケット・ミクが一番手軽に使え、価格的にも手に入れやすい、歌う初音ミクとなる。

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 明治大学米沢記念図書館で現在行われている「初音ミク実体化への情熱展」に登場した新たな「実体化」は「歌うキーボード ポケット・ミク」だった。学研「大人の科学」の新製品として4月3日に発売されるこの製品、「歌う初音ミク」としては初めてのハードウェア化、つまり実体化なので、まさにこの場での展示にふさわしい。というわけで、さっそくおさわり、いや、試奏してきた。

 ポケット・ミクは、ヤマハのVOCALOIDチップ「NSX-1」を搭載した、ハガキ大の小さな楽器。スタイラス(タッチペン)で鍵盤を押すと、あらかじめ決められた歌詞をメロディーに乗せ、初音ミクの声で歌うことができる。

 米沢記念図書館に訪れたポケット・ミクは2台。今回はわずか3時間の滞在だったが、開発プロジェクトの両輪となって活躍したミュージシャンのPolymoogさんと、独特なインタフェースを持つ楽器「ウダー」開発者としても知られる宇田道信さんに、詳しい話を聞くことができた。

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鍵盤とリボンを自由に行き来し、歌ったりしゃべったりできる

 会場にポケット・ミクさんは2体、1つは初音ミクのイラスト入り、もう片方はない。この違いは、イラストのシールを貼ってあるか否か。そのシールはパッケージに含まれているので、自分で貼るのだそうだ。これは、トータルデザインを担当したキャプテンミライさんのアイデア。自分でイラストを描ける人は直接ペイントしてもいいかもしれない。

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 筆者は昨年11月のMake Faireで披露された「歌うキーボード」のプロトタイプを実際に試してみたのだが、そのときから長足の進化を遂げたようだ。まず、レスポンスがぜんぜん違う。Make Faireのときには操作はできるものの、反応はちょっと微妙で、演奏はコツがいる感じだったが、現在のバージョンは十分リアルタイムでの演奏に追従できる。なんらかの改良が行われているようだ。「さしすせそ」の発音は、VOCALOIDでは母音の前の子音部分が長く、鍵盤を押してから発音されるまでタイムラグがあるものだが、ポケット・ミクではそこが実用になる範囲に収まっている。ひょっとしたら、素のままのNSX-1チップではないのかもしれない。

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 鍵盤も大きく変わっている。ピアノのような白鍵と黒鍵の絵が描かれたパネルにタッチペンで触れると「あー」とか「うー」とかミクの歌声が出てくるのだが、その鍵盤の線が途中で切れている。いったん押したペンをそのままスライドさせて上のほうにもっていき、そこから左右にずらしていくと、音程が上下に変化するのだ。最初にドの音をタッチして、それを2オクターブ上のドまでもっていって、さらにビブラートで揺らすなんてこともできる。

 「ああああああ〜〜〜〜〜」とハイウェイ・スターのイントロでイアン・ギランがやるようなことを、ミクさんでできるのだ。これだけで買おうという人もいるのではないか。

 シンセサイザーでは、押せば正しい音程を出せる鍵盤と、無段階で音程を変化させることができるリボンコントローラと、2つを併用するミュージシャンも多いが、ポケット・ミクは、1つのパネルでその2つを行き来できるというところがとてもユニークなのだ。

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 リボンコントローラは、歌うだけではなく、初音ミクに話をしてもらうときにとても便利だ。人がおしゃべりをするときにはきちんとした音程で発音しているわけではないので、VOCALOIDにおしゃべりさせる、いわゆるトークロイド向けに使い出がある。

 でも、トークロイドやるのなら、「歌詞」を書き換えられなきゃいけないでしょ? プリセットされている「あいうえお」とか「ドレミファ」とか「さくらさくら」「蛍の光」「いろはにほへと」じゃ会話できないよ、との疑問がわいてくるはずだが、ポケット・ミクには解決策が用意されている。プリセット歌詞をWebアプリで書き換えられるのだ。

 昨年のプロトタイプについて学研「大人の科学」の西村俊之編集長は「1曲分くらいは入れられるようにしたい。演奏しやすいように分割できるといいかも」と話していたが、製品版では1ブロックあたり64文字、それを15ブロックアサインできるということなので、演奏で困ることはないのではないだろうか。PCやMacのブラウザで動作するWebアプリで歌詞を設定し、その設定ファイルをポケット・ミクに搭載されているUSB経由で取り込めるという仕組みだ。

 NSX-1チップを搭載した製品は、ポケット・ミク以外にもう1つある。「eVY1 shield」という、自分でアプリを作ったり、いろんなものに組み込んだりする、開発者をターゲットにしたものだ。これには、チップを提供しているヤマハがさまざまなアプリを作ることができる仕組みを提供しており、実際にいくつかのWebアプリが動いている。

 同様のことが、このポケット・ミクでも可能になったりするのだろうか?

 Polymoogさんは、「現時点ではまだ話せないが、いろんな仕掛けを用意している」と言う。Polymoogさんが協力した、大人の科学版アナログシンセサイザー「SX-150」では、改造してもらうためのさまざまな情報を提供し、ガジェット楽器隆盛のきっかけを作った。3月7日まで待つと、ニコニコ技術部が騒ぎ出すような、おもしろい展開になるかもしれない。

 ポケット・ミクは、eVY1と同様に、USBを経由したMIDIキーボードなどによる演奏が可能であると考えられる。ステージで演奏されるための、いろんな工夫がされるのではないだろうか。

「ミクじゃなきゃだめなんです」

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 昨年11月のプロトタイプでは、「歌うキーボード(仮)」は、ヤマハの純正VOCALOIDである「VY1」が載っていた。NSX-1のVOCALOID機能であるeVocaloidは、VY1が標準なのだ。それが初音ミクになったという衝撃は大きかった。初音ミク関連商品は、ゲーム、フィギュア、お菓子、音楽CD、画集、ラノベとさまざまだが、実際に歌うことができる製品は、PC用のソフトウェア「初音ミク」しかない。

 初音ミクに歌ってもらうためにはパソコンが必要だ、というのは4月2日までの話。4月3日からは、ポケット・ミクが一番手軽に使え、価格的にも手に入れやすい、歌う初音ミクとなる。

 実際、歌うキーボードがVY1のままになる可能性もあった。そこを「ミクじゃなきゃだめなんです」と強固に主張したのは、意外なことに宇田さんだったという。そこからクリプトン・フューチャー・メディアとの交渉、VY1ベースの「歌うキーボード(仮)」から「歌うキーボード ポケット・ミク」となったのだ。ミククラスターのみんなは宇田さんに感謝するように。

 このポケット・ミクが一般向けに初めて公開された「初音ミク実体化への情熱展」は、歌うキーボード以外にもさまざまな「実体化」が展示されている。どんどん新しいものが追加されているので、何度も訪れる価値がある。例えば、初音ミクが弾く「あの楽器」を実体化したものは最初は「春日モデル」1台のみだったが、別の「あの楽器」が増えているし、美しさで定評のある「キオ式ミク」のMODELA削り出しモデルも「祭壇」に並べられている。

 ポケット・ミクで「声」が加わることにより、初音ミク実体化への情熱はさらに高まりそうだ。今回は短時間だったが、量産品を使った米沢図書館でのポケミク展示は、発売が近づいてからになる予定だ。

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