理化学研究所の研究チームが、電気エネルギーを直接利用して生きる微生物を初めて特定し、その代謝反応の検出に成功しました。 食物連鎖を支える第3のエネルギーは“電気”だったようです!
例えば植物が、太陽光をエネルギーとして二酸化炭素からデンプンを合成するように、一部の生物は、生命の維持に必要な栄養分を自ら合成します。その栄養分を作るにはもちろんエネルギーが必要なのですが、太陽光が届かない環境においては、化学合成生物と呼ばれる水素や硫黄などの化学物質のエネルギーを利用する生物が存在します。このように、二酸化炭素から栄養分を作り出す生物は、これまで光合成か化学合成のどちらかを用いていると考えられてきました。
共同研究チームは、2010年に太陽光が届かない深海熱水環境に電気を非常によく通す岩石が豊富に存在することを確認。海底下から噴き出る熱水が岩石と接触することで電流が生じることを発見しました。これらを踏まえ、海底に生息する生物の一部は、光と化学物質に代わる第3のエネルギーとして“電気”を利用して生きているのではないかという仮説を立てて研究を行ったところ、鉄酸化細菌の一種が、二酸化炭素から有機物を合成する能力を持つことを突き止めました。
鉄酸化細菌であるAcidithiobacillus ferrooxidansは、わずか0.3V程度の小さな電位差を1V以上にまで高める能力を持ち、非常に微弱な電気エネルギーの利用を可能にしているのだとか。
光と化学物質に続き、“電気”が地球上の食物連鎖を支える第3のエネルギーであることを示した今回の実験。深海底の生物たちの秘密が徐々に解き明かされていくであろう期待感とともに、研究の今後にも注目していきたいですね。
(高城歩)
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