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「社員のアイデアに1000ドルを掛けられないなら、雇わない方がいい」――Adobeが提唱する「Kickbox」とは

ロサンゼルスで開催中のイベント「AdobeMAX」で、Kickboxを考案したAdobeのMark Randall氏に話を聞いた。

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 Adobeには、イノベーターをつくるための方法があるという。その方法の名前は「Kickbox」。Kickboxは全社員を対象としたもので、2日間の研修の際に「砂糖」「カフェイン」「1000ドルのクレジットカード」が入った赤い箱が配られるという。

 無料で配られる「砂糖」「カフェイン(=スターバックスカード)」「1000ドルのクレジットカード」が入った謎の赤い箱。これは何を示すのか。Kickboxを考案したAdobeのMark Randall氏に話を聞いた。


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 Randall氏はスタートアップ企業からAdobeに入社。これまで数え切れないほどの失敗を繰り返し、今では失敗の達人のようになっているという。そんな彼がAdobeに入社し思ったことは「階層的で古い会社」ということ。当時のAdobeにはどんどん失敗するという社風がなかったという。

 「失敗率を上げたい」――そう思ったRandall氏は、時間をかけてでも「優雅に失敗する文化」をAdobeに作ろうと決意した。こうして生まれたのがKickboxだった。

 Kickboxで彼が提案したのはアイデアへの投資。社員がどんなアイデアを出してくるのか分からない状態で、砂糖、カフェイン、そして1000ドル分のクレジットカードの入った赤い箱をプレゼントする。

 「砂糖と、カフェインは、人間の身体に重要なもの。そして一番重要なことはお金をあげることだ。赤い箱の中には1000ドル分のクレジットカードが入っている。人はまだ見ぬアイデアに対しこれだけの投資をすることをクレイジーだと言う。でもこれは、アイデアを育てるのに本当に大きな効果をみせる」(Randall氏)――もちろん、財務担当者からは猛反対をくらったそうだ。


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 しかし彼は言う――「社員のアイデアに1000ドルを掛けられないほど信頼できないなら、雇わない方がいい」(Randall氏)。

 Randall氏によれば、ここが大きくスタートアップの文化と違うところだという。スタートアップは仲間の信頼から始まるが、大きな会社ではそこが1つのハードルとなる。もしかしたら社員の中に、その1000ドルをラスベガスで使ってしまう人がいるかもしれない、とつい考えてしまうのだ。しかしこれまで1300人中そんな人は1人もいなかった。


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Kickboxを考案したAdobeのMark Randall氏

 こうして赤い箱を手に入れた社員は、同封されている6つのチェックボックスに1からチェックを入れていく。その6つのチェックボックスは、1から「Inception(発端)」「Ideate(想像する)」「Improve(改善)」「Investigate(調査)」「Iterate(反復)」「Infiltrate(浸透)」と書かれている。赤い箱は友だちではない。チェックボックスが全て埋まったとき、その「強敵」を倒したことになる。こうしてそのチェックボックスをクリアし、一定の水準に達すると「ブルーボックス」を手に入れることができる。


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 ブルーボックスの中身は秘密。これまでに25個のブルーボックスが手渡されている。

 実は、このKickboxという手法は2015年2月にオープン化。「私がやったことはドキュメントで読んでくれればいい」とRandall氏は言う。資料を見れば誰でも実践可能で、実際にKickboxを取り入れている組織もあるようだ。

 これまでのやり方では10〜25のアイデアの中から6つほどに絞り、プロトタイプ開発に至るまで約50〜200万ドルをかけてきた。このやり方ではアイデアの母数が少なく、実現するまでの確率が高すぎる。Kickboxでは1000の中から1つの宝を見つける。この方がポテンシャルが大きく、マネージャーもシステムもいらない、そしてお金もかからないのだとRandall氏は話す。

 「Kickboxのゴールはイノベーションを生み出すことではない。イノベーターをつくること。私たちは、私たちの社員と『失敗してもいい』関係を築いている。本当に革新的なことは失敗するものであり、その失敗をたくさんしなければ成功はない。美しく、カッコよく失敗する。失敗したら『またやっちゃった』と思えばいい。スタートアップのいい文化とAdobeのいい文化を混ぜる。『Failure』ではなく、『Learning』」(Randall氏)。

太田智美

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