東京都は16日、墨田区の猫カフェ「ねこのて」を動物愛護法に基づく登録取り消し処分としたことを発表しました。猫カフェへの取り消し処分は全国で初めてです。
東京都は動物の適正な管理、飼養環境の改善を怠ったとして同店に4月21日から30日間の業務停止を命じており(関連記事)、業務停止命令の期間終了までに指導内容の改善が確認できなかったとして行政処分に踏み切ったとしています。
一連の行政処分について編集部が「ねこのて」に取材を申し込んだところ、動物取扱責任者の女性が取材に応えました。
「ねこのて」動物取扱責任者インタビュー
―― 「ねこのて」の営業開始時、猫は何匹程度飼育していましたか
動物取扱責任者 10匹程度です。
―― なぜ猫が70匹程度にまで増えてしまったのですか
動物取扱責任者 昨年6月に都が立ち入りしたときには、25匹ということで更新もできました。しかし年末にかけて知人のブリーダー崩壊猫(ブリーダーが運営困難になるなどして世話できなくなった猫)を預かったりしてしまい、結果的に70匹にまで増えてしまいました。ただし一部は報道にあった通り繁殖で増えてしまったので、その点は申し訳なく思っています。
―― すべての猫が繁殖で増えたわけではなかったのですね
動物取扱責任者 はい、短期間の繁殖で猫の数が倍になるということはあり得ません。
―― 今回の登録取り消し処分についてはどう感じていますか
動物取扱責任者 私どもとしては、都からの指導内容について弁護士や専門の業者も交えながら一生懸命努力したつもりです。ただ、都からの指導内容が次々に変化していくので、対応しきれなかった部分があります。
―― 指導内容の変化と具体的な指導内容を教えてください
動物取扱責任者 まず動物愛護センターから来る職員の方が毎度同じ人ではなく、担当される職員によって言うことが全然違っていました。具体的な指導について一例を挙げると、室内清掃の徹底という部分で換気扇を掃除しました。しかし都の立ち入り検査では職員が換気扇を分解。「猫の毛が少量、内部に巻き込まれているため清潔とは言えない」との判断が下りました。見た目にはキレイでしたし「猫が生活しているため、多少の毛の巻き込みは日々発生するのでは」と申し出たところ、清掃で改善できないのであればと「内装工事のやりなおし」を求められました。このあたりは言った言わないになることが嫌だったので、書面でも指導内容をいただいていますが、やはり毎回内容は違います。
―― 内装工事についてはどう対応されましたか
動物取扱責任者 ゴールデンウィークの直前に指導されましたので業者の確保ができず、内装工事については対応できませんでした。
―― 都の対応についてはどう感じていますか
動物取扱責任者 元はといえば、私どもの不備が原因なのでその点については反論できませんし、反省しています。しかし、1つの指導をクリアすると新しい指導という繰り返しのなかで期限が来てしまったため「登録取り消し処分」ということはショックでした。また都には猫たちの生活についてもっと考えていただきたかったです。
―― 猫たちの生活というと
動物取扱責任者 実は最初にお越しになった愛護センター(都の職員)のAさんに「これから取り消し処分に向けてやっていきます」といわれ、「これからテレビのニュースとかにも出ちゃうから、先に廃業した方がいいんじゃないですか?」などの提案も受けました。しかし、廃業してしまったら猫たちはどうするのかと。悪徳業者の類だったら、匹数オーバーの猫は山にでも捨ててしまおうとなるのかもしれませんが、私たちは今いる猫を新しい飼い主さんにお譲りしたりすることが先決だと考えました。
―― 70匹の猫たちはどうなりましたか
動物取扱責任者 幸いほとんどの猫に関しては体調が回復しましたので、55匹は新しい飼い主さんの元へいくことができました。新しい飼い主さんたちからは、猫たちが元気に過ごしている様子などを聞いています。
―― 都への取材では検査時に猫23匹を隠すという、いわゆる「猫かくし」を行ったことが処分の原因の一端とも聞いていますが
動物取扱責任者 それは誤った解釈です。そもそも猫は隠していたのではなく、錦糸町の店舗施設では(改善命令に適応できるまで)使用施設として認められないということだったので一時的に墨田区の建物に移して飼育したということです。さらにこの飼育場所については私の夫が自ら「ここで飼っています」と申し出ましたので、隠したつもりはありません。
―― 今後の活動についてはどうしていこうと思いますか
動物取扱責任者 先ほども言いましたが、やはり猫たちの生活が一番です。そこで、今月16日に残りの猫たちの飼い主さんを探すための解放型シェルター(名称未定)をオープンさせようとした矢先、登録取消し処分となってしまいました。非営利活動として猫のシェルターを続けていきたいです。
―― 解放型シェルターの入室に際して寄付金が必要との記載がホームページにありました
動物取扱責任者 はい、寄付金3000円をお願いしようと考えています。これは営利的にお金を頂くのではなく、猫たちの飼育費に当てる予定です。また3000円という金額については、一連の報道によって相当数のイタズラが発生したことから、きちんと猫の保護を考えてくださる方にのみ来ていただきたいと考えたからです。
「ねこのて」側の主張について、処分を発表した東京都福祉保健局にも取材を申し込みました。
東京都福祉保健局からの回答
―― 今回の処分については、全国初とのことですが
福祉保健局 法に基づいて基準に違反した部分を指導し続けましたが、期間内に改善されなかったことから処分に至りました。
―― 業者側は指導内容が変遷していったと主張しています
福祉保健局 業者側の事情が日々変化する(猫の頭数などが変化する)ため指導内容が変化することは当然と考えます。しかし、基本的な指導内容については一貫しています。
―― 業者側は指導内容について対応できたと感じている部分が多いようですが
福祉保健局 一部の指導については改善されましたが、すべての部分については期限内に改善できなかったと判断しました。
―― 業者側は廃業を勧められたなどの主張も行っていますが
福祉保健局 そのような意図では発言していないと思われます。ただ、動物を適正に飼育できない環境で営業を継続することは難しいのではないか。という趣旨の発言はあったかもしれません。
―― 「猫かくし」は行っていないとも主張していますが
福祉保健局 立ち入り検査時のみ、近隣施設に猫を移していると代表者ではなく関係者から情報提供がありました。具体的には「他のところでも飼育しています」という感じです。
―― 処分後でも非営利型のシェルターとして活動する分には問題がないのですか
福祉保健局 ホームページ等で該当業者がそのような趣旨の告知をしていることは把握しています。しかし、告知しているからといってそのような活動を実際に行っているのかなど実態が分からないので、今後確認を行っていきたいと考えています。
―― 寄付金という形についてはどうお考えですか
福祉保健局 実態が不明のままなので何とも言えませんが、事業者本人が非営利であると考えていても実態的に営利と認められる場合もありますので、確認を行っていきたいと考えています。
また「ねこのて」に廃業等を勧めたとされる都職員A氏についても直接取材を申し込みましたが「報道への回答は福祉保健局健康安全部を窓口として行っておりますので、個別にはお答えできません」とのことでした。
「指導の当初から取り消し処分に向けて動いていたのでは」と主張する「ねこのて」側と、「期限までに指導の改善が行われなかっため、登録取消し処分を行った」とする都。言い分が大きく食い違う双方ですが、依然として猫およそ25匹の飼い主は見つかっていない状況。猫たちが早く幸せに暮らせることを願うばかりです。
(Kikka)
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