ヤマト運輸、宅急便の運賃を27年ぶり値上げ 労働環境改善の一環 ネット通販の荷物量抑制も示唆
ヤマト運輸が労働環境の改善に向けて、「働き方改革」の基本骨子5つを決定しました。
ヤマト運輸は13日、ネット通販市場の拡大で荷物が増加していることなどから労働環境が悪化している問題を受けて、取締役会で「働き方改革」の基本骨子を決定しました。大口や低単価の顧客に荷物量を抑制するよう交渉すること、宅急便の基本運賃を27年ぶりに値上げすることなど、5つの方針を公開しています。
働き方改革の背景にあるのは、大幅な荷物の増加と労働需給の逼迫(ひっぱく)、これに企業側の対応が追い付いてなかった点だとヤマト運輸は説明。2月から宅急便センターのセールスドライバーを中心に社員の労働時間の実態を調査したところ、多くの社員が休憩の未取得を申告できていないなど問題が浮き彫りになったとのこと。労働環境を改善すべく、2017年度は最優先経営課題として働き方改革に取り組むとしています。
その基本骨子として発表したのが、(1)労務管理の改善と徹底、(2)ワークライフバランスの推進、(3)サービスレベルの変更、(4)宅急便総量のコントロール、(5)宅急便の基本運賃の改定の5つ。
4月7日に日経新聞は、ヤマト運輸がAmazon.co.jpの当日配送サービスから撤退する方針を固めたと報じていました(関連記事)。(4)についてヤマト運輸はネット通販市場の急拡大により荷物が急増した反面、低単価で受ける荷物の比率も増加してしまったとした上で、「特に大口のお客さま、低単価のお客さまに対し、ご依頼いただく荷物量の抑制をお願いすることにします。上期中を目標にお客さまとの交渉を進めます」と説明。労働需給を逼迫する要因の1つと考えられるAmazon.co.jpの同サービスにどう対応していくのか、動向が注目されます。
(5)では、宅急便の基本運賃を27年ぶりに値上げすると発表。理由は主に、再配達を削減するためのIT基盤やクロネコメンバーズ特典の拡充、オープン型宅配ロッカーの設置拡大に投資するため。具体的に何をいくら値上げするのかは現在検討中で、決定次第報告する予定です。
これら5つの改革をスピーディーかつ総合的に推進するために、同社は本社、全支社、全主管支店に「働き方改革委員会」を設置。4月28日の決算記者会見で、働き方改革に伴う事業構造改革の内容についてより詳しく説明するとしています。
「働き方改革」の基本骨子
(1)労務管理の改善と徹底
4月16日より労働時間の管理を入退館管理システムに一本化するとともに、管理者と点呼執行者を増員し、社員が労働時間を正確に申告、管理できる環境を整えます。
(2)ワークライフバランスの推進
社員がしっかりと休息を取れるよう、休憩時間中の携帯電話の転送などやインターバル制度の導入を進めます。また、ワークライフバランスを推進するため、保育所等の設置や在宅勤務制度の導入を検討していきます。
(3)サービスレベルの変更
6月中に宅急便の配達時間帯の指定区分を見直し、特にお客さまからの指定が集中し、社員の長時間労働の一因になっていた「20-21時」を「19-21時」の2時間枠に、また、社員が昼休憩をしっかりと取れるよう「12-14時」の枠を廃止し、これまでの6区分から5区分に変更するとともに、4月中に再配達受付の締め切り時間を20時から19時に1時間繰り上げます。
また、宅急便以外にも業務負荷や採算性の面で見直しが必要なサービスについては改良、もしくは統廃合を検討します。
(4)宅急便総量のコントロール
Eコマース市場の急拡大を受け、ご依頼いただく荷物が急増した反面、低単価でお受けする荷物の比率も増加しました。これは、現状の体制に見合った水準に、宅急便の総量や運賃をコントロールすることが不十分だった経営の責任と考えています。そこで、特に大口のお客さま、低単価のお客さまに対し、ご依頼いただく荷物量の抑制をお願いすることにします。上期中を目標にお客さまとの交渉を進めます。
(5)宅急便の基本運賃の改定
人口減少による労働力不足が深刻化する中、外形標準課税の増税、社会保険料の適用範囲拡大といったコスト構造の変化に対応しながら社員への処遇を充実させることはもちろん、新たな戦力の採用を強化していく必要があります。また、再配達を削減するためのIT基盤やクロネコメンバーズ特典の拡充、スピーディーなオープン型宅配ロッカーの設置拡大などに投資するため、宅急便の基本運賃を27年ぶりに値上げすることを決定しました。
値上げの内容は現在検討中ですので、決定次第ご報告する予定です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ヤマト運輸がAmazonの当日配送サービスから撤退へ 日経新聞報じる
既に一部では日本郵便を利用。 - ヤマト運輸が12〜14時の配達指定を削除、再配達も1時間縮小 職場環境改善に向け
「19時から21時」の時間帯指定の新設も行われます。 - 再配達の負担を減らすため「宅配ボックス」を自作した人が登場 でもマンション廊下への設置は法律上問題アリ? 関係省庁に聞いてみた
気軽に設置できれば便利なんですが……。 - パナソニック、宅配便の再配達防止を目指す実証実験開始へ 押印する機能を持った宅配ボックスを活用
福井県あわら市の共働き世帯に宅配ボックスを設置します。 - 「いつ届くにゃ?」「お荷物の送り状番号を入力してくださいにゃ」 ヤマト運輸の公式LINE、会話AIが猫語を習得していたことが判明
にゃんと!