都内各地の駅で増殖中? 謎のポスターをまとめた「#片側通行ポスター ハンドブック」:司書メイドの同人誌レビューノート
最初に発見されたのは2013年8月27日の西国分寺駅でした。
街を見回すと、いろんな掲示物が目につきます。看板、ポップ、そしてポスター。今回の同人誌は、駅で見掛けたとあるポスターにスポットを当てた本です。しかも特徴的なデザインのそのポスターは増殖中……? という、謎のポスターを観察されたハンドブックです。
今回紹介する同人誌
「#片側通行ポスター ハンドブック[2017春]」 A5判変形 20ページ 表紙・本文カラー
著者:kssk(ちかく)
1枚のポスターから増殖?「片側通行ポスター」を追う
2013年、そのポスターは発見されました。「左側通行」と書かれたポスターは、矢印を配置したデザインが目を引く、はっきりとした赤系と黒のカラーリングも印象的な一枚です。どうやら駅員さんがオリジナルで作ってらっしゃる……? と思われるこのポスター。西国分寺駅で最初に発見されたのは2013年8月27日のこと。
そしてそれからわずか2週間後、今度は錦糸町駅で「左側通行」のポスター発見の報が入るのですが、なんとそのポスターは黄色! あれ、色が違う! しかもデザインにもちょっと違いが……? と、そこではじめて「特徴的なのに、微妙に違うポスターが、違う駅に存在している」ことが明らかになります。西国分寺駅と錦糸町駅、同じ東京都ですが、電車の路線では乗り換えが必要なちょっと遠い位置関係です。それなのになぜ?
さらに驚きなのは、その後、原宿駅、新宿駅、高田馬場駅などで「片側通行」ポスターが発見され続けてしまったこと。そしてやっぱり、どれもデザインや色が微妙にちがう……なんなのでしょう、このむずむずするポスターたちは!
色違い、デザイン違い、もはや原型を留めていないものも!? バリエーションありすぎ!
この本はそんな「片側通行ポスター」の姿や発見の報を追い続け、その進化(?)をつぶさに収めたハンドブックです。
発見された駅ごとに、初観測日、設置場所を記載し、デザインの解説をされた本は縦長サイズで、ハンドブックという名前そのままに、手にして駅を巡りたくなる作りです。
本を眺めていると、多彩過ぎでは!? とツッコミを入れたくなってしまうほど増殖ポスターたちのバリエーションが豊富です。見よ! 原宿駅の紫、赤、黒、緑という強烈なカラーリングを! 公共の駅に貼るには、なかなかのチャレンジ精神あふれる色使いではないでしょうか。そして、アルファベットのフォントだけは辛うじて共通しているものの、あとは原型をとどめないアレンジに至っているのもすごいです。
それぞれの駅で付け足されたり、そぎ落とされたり。こんなにも印象的なのに、変幻自在な「片側通行ポスター」。ちょっとした違和感は、デザインのどこに変更点があるからなのか、このバージョンが公開された時期は……と、作者さんが丁寧に観察し、解説をしてくださっているので、本を読むと「なんとなくむずむずする感じ」が、「なるほど!」とスッキリします。
事情を知りたいような、そのままでにしておきたいような……あくまで観察目線を貫く
当初の発見から時は過ぎたものの、実は今年に入ってからも、三鷹駅でもこのポスターが発見されたとのことです。どこまで増殖するつもりなんでしょうか、この片側通行ポスターさんは……。
こんなにも増殖してしまった理由について、作者さんは「原稿データを駅員さんがやりとりしている?」などと推察されていますが、それはあくまで想像の域を出ません。
気付けばひっそりと、各駅に増え続けるポスター。ちょっとしたミステリーのようです。もしかしたら、駅の人に一言「なぜですか?」と聞いたら、謎はすっぱり解けるかもしれません。でも、こちらの本ではそこには言及されていません。あくまで、そっと観察されるのみ。あるがまま、見守るまま……そんな眼差しがあったからこそ、片側通行ポスターはこんなにも表情豊かに育ったのかも? と思いました。
たくさんの人が通り過ぎる駅、その一画にそっと貼られたポスター……いつかあなたのご利用の駅にも増殖してしまうかも?
サークル情報
サークル名:Eidantoei
Twitter:@ooooooooo
Instagram:@kssk
tumblr:kssknonikki
Webサイト:https://eidantoei.org/
入手先:BOOTH
今週のシャッツキステ
2016年に、「けものフレンズ」さんのフレンズさんたちと触れ合ってから、1年。2017年もシャッツキステにフレンズをお迎えできました。かわいいイラストを閉館後にまじまじ見詰めるメイドの特権をフル活用の図
著者紹介
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る
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