パンはパンでも食べられないパンといえば、フライパン。反対に、食べられるのはカレーパン、アンパン、フランスパン……と挙げきれないほど思いつきます。
では、どうして食パンだけに「食」という字がつくのでしょうか。その理由は、パンの歴史をさかのぼることで見えてきます。今回は、そんな語源に関するトリビアをいくつかまとめてご紹介。
主食用だから食パン? それとも、食べられるから食パン?
日本にパン文化が広まる際に、食パンは海外で主食とされていたことから「主食用パン」と呼ばれていたといわれています。その後、省略表現にあたる「食パン」だけが定着し、元の表現が忘れられた結果、「自ら『食』と名乗る不思議な食べ物」になってしまったというわけです。
また、デッサンで消しゴム代わりに使われるパンを「消しパン」、食用のパンを「食パン」と呼び分けていたとする説も。この考えに基づくと、「パンはパンでも食べられないパン」が本当にあったため、「食べられるパン」をはっきり示す言い方が存在していたということになります。
マルコ・ポーロが日本に来なかったから、日本は「JAPAN」と呼ばれるように
「日本」が英語で「JAPAN(ジャパン)」と呼ばれるのは、かつて探検家マルコ・ポーロが「東方見聞録」を書いた際、日本のことを「ジパング」という名称で記載していたから、というのが通説です。
では、そのジパングはどこから来たのでしょうか。実はマルコ・ポーロは日本を訪れたことがなく、中国で聞いた情報をもとに「東方見聞録」を書いていました。当時の中国では、日本を「ジーヘン」と発音していた可能性があることから、「ジーヘン → ジパング → ジャパン」と音が変わっていったとする説があります。
カキは「牡(オス)しかいない」と思われていたから「“牡”蠣」
貝類のカキを漢字で書くと「牡蠣」。性別を表す「牡(オス)」という字が当てられていますが、これはその昔、カキにはオスしかいないとされていたから。
本当はメスもいるのですが、カキの性別判定には顕微鏡が必要で、かつては鑑定することができませんでした。そのため、今では理解しがたいことですが、「どのカキも白子(魚類の精巣)に似ているから、すべてオスだろう」と考えられていたのです。
なお、サザエは内臓が白いとオス、緑色の場合はメスと一目で分かります。昔の人からしたら「同じ貝類なのに、こんなに性別判定の難易度が違うなんて理不尽だろ!」という話なのかもしれません。
「青春」がピンクでも黄色でもない理由は、古代中国までさかのぼる
「青春」に「青」という字が使われているのは、古代中国の思想では黒、青、白、赤の4色が方角、季節などと結びつけられていたから。
- 黒:冬/北
- 青:春/東
- 赤:夏/南
- 白:秋/西
この組み合わせから、色と季節名をセットにした言葉「玄冬」「青春」「朱夏」「白秋」が発生。本来は季節を表す表現だったのですが、「人生の春」という意味で若い時期を「青春」と呼ぶようになりました。
ちなみに「玄武」「青龍」「朱雀」「白虎」という中国の神獣と言葉のつくりが似ているのは、これら4種も方角や季節とひもづけられているため。
ポップ体の「ポップ」は「購買時点広告」の略語
フォントの「ポップ体」は、ポップな雰囲気が出せるからポップ体と呼ばれている……と思っている人がいるかもしれませんが、これは誤り。正しくは、「購買時点広告」に由来します。
購買時点広告は、英語では「Point Of Purchase Advertising」と表現され、略称は「POP(ポップ)広告」。本屋やドラッグストアでよく行われている、商品のおすすめポイントを示した飾り付けなどを店頭に設置する販促方法を指します。その際に使われていたフォントが、ポップ体と呼ばれるようになりました。
- 【記事】「創英角ポップ体」の謎に迫る
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