その発想はなかった サッカー場の近くにある古墳をまとめた同人誌『古墳とサッカー場』:司書メイドの同人誌レビューノート
今回は『古墳とサッカー場 〜サッカー見る前、見てから徒歩10分で行ける古墳ガイドブック〜』をご紹介。
よく晴れた青空に、スポーツを応援する歓声が似合う季節ですねー。もちろん真夏や真冬の熱戦も大盛り上がりですが、こんなにいい気候だと、あまりスポーツに縁のない私でも、ふらっとそんな空気を楽しんでみたくなるのです。先週のサッカーマンガに引き続き、スポーツはしないけど、ちょっと身近にスポーツを体験したい人、こんな楽しみ方はいかがでしょうか?
今回紹介する同人誌
『古墳とサッカー場 〜サッカー見る前、見てから徒歩10分で行ける古墳ガイドブック〜』
A5 16ページ 表紙・本文カラー
なぜ一緒にしたのか……。古墳跡とサッカー場をセットで楽しむためのガイド本
こちらのご本は、現存するサッカー場から歩いていける古墳と古墳跡を紹介したガイド本です。何はともあれ、なぜサッカー場と古墳を一緒に見る必要が? ページを開けば、すぐに理由が記してありました。
「古墳とサッカー場?そこに何の関連が…」
特にないです。単に古墳とサッカー両方見るのが好きと言う理由だけです。
なるほど! 理由は「どっちも好きだから」で十分ですね。好きなものと好きなものをくっつけたら、倍楽しいに決まっています。一石二鳥です。
掲載されているのは、静岡県、神奈川県、奈良県、愛媛県の4つのスタジアム。マップ、周辺案内、そして一緒に見れるのはどんな古墳かという解説が、豊富な写真とともに紹介されています。
緑のフィールドと、自然の中の古墳。リラックス効果大!?
いままでの人生でほとんどスポーツ観戦をした記憶のない身としては、サッカー場=国立競技場とか? という、ぼんやりとしたイメージなんです。しかし、このご本を読んで「あっ! そうか、全国各地にサッカー場があるんですよね」と、スポーツ好きな人から見ると、とても当り前なことの再確認からスタートです。各地のサッカー場の予定表を見ると、地元のサッカーチームの試合や県大会が行われていたりするんですねー。
例えば、ご本で紹介されている「清水ナショナルトレーニングセンター」は、宿泊施設までついている立派なサッカー場です。そしてその目の前には前方後円墳がどーん! 広々とした緑の中に、盛り上がった墳頂部へ続く1本の道。こんな広々とした古墳で、当時の権力の大きさを体感でき、歴史ロマンにまったりと身をゆだねる……。そしてその後は、サッカー観戦で熱く盛り上がるも良し、もしかして自分たちで合宿などでフィールドを利用したりも?
また、奈良県の「ならでんフィールド」は、奈良という場所柄、史跡と古墳に囲まれた立地なのだとか。両脇にやぶがおい茂る小道の先には、聖武天皇の皇子の墓所と呼ばれる古墳があります。こちらは立ち入りはできないそうなのですが、石の柵に囲まれた様子は整然とした雰囲気で、このような場所がひっそりと佇んでいることに驚きです。
いずれの場所も、緑に囲まれ……というか、緑に覆い尽くされてしまったような場所もあって、これはちょっとしたハイキングのような心持ちかも? 秋のある日、のんびり古墳を見て、スポーツで気持ちもわくわくさせて……と、一挙両得!
体育会系にも歴史好きにも。違う趣味同士で補完し合えばもっと楽しい!?
作者さんは、普段はサッカーの審判に関わる同人誌を出されています。今回、サッカー場と古墳という組み合わせの同人誌作ったのは、「こんなところにも古墳があるんだな、というのを知ってもらいたい」というお気持ちがあったのだそうです。確かに、今までどこにサッカー場があるのか、うすらぼんやりとしか考えたことがなかったように、どこに行けば古墳が見られるのかなんて、考えたことがありませんでした。でもきっと世の中には、サッカー好きな人も、古墳好きな人も、それぞれたくさんいらっしゃいますよね。
このご本は、「サッカーと古墳が好き!」という趣向をお持ちの人ももちろん、「サッカーは好きだけど、古墳には興味がなかったなぁ」とか「古墳は見て回るけど、近くにサッカー場なんてあったの?」なんて人にもきっと、新しい楽しみを授けてくれるのではないでしょうか。そうそう、ご本には近くの食事処事情などのちょっとした周辺案内も載っていますので、散策の参考になりそうですよ。ところどころに添えられたイラストもかわいい!
体育会系の人と歴史好きな人が、もしもこの1冊を手に出掛けて、それぞれ好きな部分を補完し合えたら、きっとすごく楽しい1日になるのではないでしょうか。
今週のシャッツキステ
著者紹介
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る
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