ノスタルジーあふれてる “黒電話”の入手法からお手入れの仕方までまとめた同人誌『黒電話で遊ぼう!』:司書メイドの同人誌レビューノート
著者さんは内線機として使っているようです。
あの人、いまはどうしているかな? と秋空を見上げながら、声が聞きたくなるような、少しノスタルジックな風……。そんなとき、文字通りの“ダイヤルを回す”お電話で、懐かしの人と会話が弾むかも? 今回は、レトロな“黒電話”を楽しむための同人誌です。
今回紹介する同人誌
『黒電話で遊ぼう!』
B5 32ページ 表紙カラー 本文モノクロ
見分けつくかな? 重厚な600形、かろやかな601形……まずはお気に入りの黒電話を入手しよう
黒光りする見た目、受話器とつながったくるくるコード。もうずいぶんこの形の電話を触っていないな、という方も多いのでは? それどころか、生まれてこの方、受話器を持ちあげたことがない人だっている時代ですが、「電話」と文字入力したら出てくるマーク……そうそう、これです。電話と言えばこの形、という定番! 黒電話の魅力を著者さんは、
- デザインが丸っこくてかわいい
- ベル音がかっこいい
- ダイヤルを回す感覚が気持ちいい
と、記されています。丸い形状、ベル音もびっくりするくらい大きくて、しゃーっと指でまわす感覚は、他にないものですね。
こんな魅力あふれる黒電話。一般的には1932年〜1979年の間に作られた、3号自動式電話機、4号自動式電話機、600形電話機、601形電話機の4種のことを指すのだそうです。こちらのご本では、特に600形の電話機を取り上げています。600形は重厚でダイヤルに特徴があるとか。著者の方は当初、自分のイメージに合うのがどの形かわからず、迷ってしまったことがあるそうです。そんな経験を元に、600形と601形の見分けのコツもご本でしっかり説明されています。
もう正式な販売は終了しているこれらの電話機ですが、リサイクルショップやインターネットのオークションサイトなどで中古品が手に入ることや、本体のケーブルやモジュラージャックといった気を付けるべきポイント、そしておよそいくらの価格で手にされているか、という実際の体験をもとにガイドしてあるので、入手までの流れがイメージしやすいです。特に、率直に価格が書いてあるのは、うれしいですねー。
意外とカラフルな“黒電話”。ぴかぴかになるお手入れ方法を細やかな解説が手助け!
そして、ご本でも便宜上“黒電話”と表記されていますが、実は多様なカラーバリエーションが展開されていたことはご存じでしたか? 600形と601形は、標準色である黒以外にも、薄緑、ベージュ、さんごなど、合計7種類の色展開があるのだとか。そういえば、この薄緑の電話機も見たことあるような……。パステルがかった青色や、やわらかな緑色、そして鮮やかな赤いさんご色! もちろん黒色の気品と、どっしりとした落ち着きもすばらしいですね。ああ、並んだ電話機たちは、丸っこくてつやつやで、なんてかわいらしいのでしょうか。
クラシカルでレトロなかわいい電話機を入手したら、そのままの傷を楽しむのももちろんあり、と著者さんも記しておられますが、お掃除して輝きを取り戻せばますます愛らしく感じられるのでは。そのお掃除方法はほこりや汚れの取り方ももちろん、「この導線に印をつけておくと戻すときにやりやすい」なと、とても実践的です。本文はモノクロですが、要所に写真も添えられて、“きっとここでつまずくのでは”という場所が丁寧にフォローされており、著者さんのこれまでのご苦労と、それを細やかに伝えることで黒電話をともに愛する人たちに楽しみを届けたい! というひそやかな情熱を感じるのです。
黒電話ってこんな着信音! 回線に接続してベル音を楽しむ
そして、なんとご本によると、この電話機で「もしもし」と通話することも可能なんだとか。もちろん、正式に電話回線につなぐためには基準に適合した電話機が必要だったり、接続工事には工事担当者の資格が必要です。もちろんこれを機に資格をとっちゃうのもありかもしれませんが(!)、ご本ではさまざまなツールを活用して内線機として使用し、無事に黒電話を「ジリリリリン!」と鳴り響かせることにご成功されています。
正直、ここまでの「入手」と「お手入れ」に比べると、「テスト環境の構築」はなかなかのハードルの高さを感じますが、ここをクリアすればますます黒電話が楽しくなって、眺めてよし、さわって良し、秋の夜長のおしゃべりが黒電話で楽しめちゃうかも!?
著者のyp14(@JE1JGI)さんは、自作キーボードのご本を出しておられるぺかそ(@Pekaso)さんとの2人サークルさんで、次回は冬コミに申し込んでらっしゃるそうですよ。
今週のシャッツキステ
著者紹介
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る
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