米ニューヨーク・タイムズ紙が掲載した米女優ユマ・サーマンの告白記事が物議を醸しています。サーマンはこの記事で、過去に受けた性的被害やパワハラ被害を告白。加害者として映画「パルプ・フィクション」「キル・ビル」のプロデューサーであるハーヴェイ・ワインスタインと、監督のクエンティン・タランティーノを挙げています。
「ユマ・サーマンが怒る理由」と題されたこの記事は「そう、ユマ・サーマンは憤激している。彼女はレイプされた。性的に暴行された。熱した鉄板の上へたたきつけられた。信じたものから裏切られた」という一文から始まり、サーマンがワインスタインから受けた性暴力と、タランティーノに強要された車の運転によって引き起こされた衝突事故について語られています。
問題となっているタランティーノの行動は、「キル・ビル」における運転シーンの撮影時のこと。その際使用された車はマニュアルからオートマチックに改造されたもので、サーマンは正しく操作ができるか不安を感じていました。彼女はスタントマンに代わってほしいと希望しましたが、タランティーノはひどくいら立ち、サーマンの意見を無視したといいます。
「車は問題ない、道路だって真っすぐだ」「髪をなびかせるために時速40マイル(約64キロ)以上で走ってくれ。だめだったら撮り直し」と注文を受けたサーマンは、不安を抱えたまま運転し、恐れていた通り、車は勢いがついたまま木に衝突しました。実際の道路は直線ではなく蛇行しており、おまけに砂利道でした。
ニューヨーク・タイムズの記事では事故の映像も公開されており、衝突の瞬間を見ることができます。サーマンは事故直後について「焼け付くような痛みを感じ、『ああ、もう歩けなくなるだろう』と思った」と回想。また、映画会社のミラマックスが事故映像の公開を拒否し続け、映像を入手するのに15年かかったとも証言しています。
テレビのレポーター・プロデューサーのブルット・ホワイトは「長年疑問だったユマ・サーマンがアクション映画に出演しない理由がハッキリした。『キル・ビル』とクエンティン・タランティーノが彼女の体をこわしたのだ」とコメント。また、被害を受けながらも「キル・ビル2」に出演したサーマンを批判する人に対して、「キル・ビルは3時間で1つの作品として撮影された。撮影後に2つの作品に分割されることが決まったんだ」と反論したツイートも拡散されています。
一方、記事ではワインスタインについても厳しく非難しています。サーマンはワインスタインについて「私を押し倒し、彼が服を脱ぎ、体をさらけ出そうとしました。最後の一線こそ超えませんでしたが、ありとあらゆる不快なことをしてきました」と体験を語っています。また、当時ワインスタインに対し「もし、他の人に同じようなことをしたら、あなたはキャリアも評判も家族も失う」と抗議したところ「女優としてのキャリアをだめにしてやる」と脅されたことも明かしています。
ワインスタインは数十人の女優から性的被害を告発され、2017年末から過熱したセクハラを糾弾する「MeToo運動」の発端にもなった人物。タランティーノはワインスタインと親しかったこともあり、ワインスタインのセクハラ癖を知っていながら見て見ぬふりを続けていたことで批判を集めていました。そんな中、サーマンの告発でタランティーノ自身も直接的な批判の対象となり、ネット上では衝撃が広がっています。
【2月8日編集部追記】
記事の掲載後、サーマンは自身のInstagram上で声明を掲載。事故について、犯罪的な出来事だったとしつつも、「タランティーノに悪意はなかったと思う」と、タランティーノをこれ以上責める意思がないと明かしました。サーマンによると、映像を公開できたのはタランティーノが提供してくれたおかげであり、自身への社会的批判を顧みず謝罪の意思を見せた勇気に、「誇りに思う」と賛辞を送っています。
一方で、積極的に事件の隠蔽をはかったプロデューサー陣に対しては強い憤りを見せており、特にローレンス・ベンダー、E・ベネット・ウォルシュ、そしてワインスタインを名指しで非難しています。
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