Steam版「クロノ・トリガー」の「ドット絵」が抱える問題点とは何か ユーザーによる分析と修正が進む
オリジナルのドット絵がフィルタによってにじんでしまっており、原作のファンから悲鳴があがっていました。
Steamにて配信された「クロノ・トリガー」のドット絵を改善するプロジェクトがすでに動き出しているようだ。先月2月28日にSteam向けに発売された『クロノ・トリガー』。往年の名作が現代によみがえったということで、前触れのない配信は全世界を喜ばせた。しかしその一方で、その移植の品質に対して疑問を投げかける声も多かった。
特に注目が集まったのは、そのドット絵だ。ストアのスクリーンショットを見ても分かる通り、Steam版のドット絵はのっぺりとしている。ベースとされているであろう、スマートフォン版の時点でこのビジュアルが採用されていたが、ドット単位のピクセルアートが魅力の作品であるだけに、そのよさをかすませるグラフィックには批判が集まっていた。Gamasutraに寄稿するゲーム開発者Lars Doucet氏は、同作のドット絵について大きく分けて2点を指摘している。
1つ目にあげられているのは「フィルターの一貫性の欠如」。Steam版「クロノ・トリガー」は最大1920×1080の解像度に対応している。スーパーファミコンのドット絵を拡大すると粗っぽさが出てしまうからか、こうしたドット絵作品のリマスターにフィルターがかけられるケースがある。Steam版「クロノ・トリガー」でもドット絵にbilinear filterを中心としたフィルターがかけられている。粗さは抑えられるが、のっぺりとした見た目になる特徴もある。フィルター自体も大きくビジュアルの印象を変えるが、問題なのはこれをゲーム全体にかけていないことだ。一部フィールドはオリジナルのままのピクセルであることに対し、建物などにはフィルターをかけていること。ピクセルのドットとフィルターのぼやけた表現を併用していることにより、ビジュアルから一貫性が失われている。
2つ目は、「タイルの継ぎ目が見えてしまっている」という問題だ。2D作品では一般的には、背景にはタイルが設置されるものであるが、このタイルをアップスケールされたことにより継ぎ目が見えてしまっている。スプライトともマッチせず、タイルのサイズが合わなくなっているのだ。そもそも「クロノ・トリガー」は原作の時点でこうしたタイルの継ぎ目に問題を抱えていたが、解像度が低い影響で継ぎ目が見えにくかった。高解像度対応とアップスケールによって、それが顕著になったといえる。ざっくりといえば、タイルが最適化されていないわけだ。
さらにこのタイルもまたフィルターによってぼやけている。2つの問題はともに、「Nuclear Throne」などを開発したスタジオVlambeerに所属するFred Wood氏からも指摘されている。フィルターとタイル、この2つの問題が重なったことにより原作のピクセルアートの魅力が失われ、不評を呼んでいる。
同様の問題は、過去のスクウェア・エニックスの移植作品でも確認されている。同じくモバイル版をベースとしたSteam版「FINAL FANTASY VI(日本語非対応)」においても、ビジュアルをのっぺりさせるフィルターに対し批判が集まっていた。XGen Studiosに在籍し、Modderとしても活躍するジェッドラン氏はこうしたフィルターを除去するMod(ツール)を作成し、オリジナルに近いビジュアル表現をもたらした。そして今回もまたジェッドラン氏は動き出す。
PC Gamerによると、今回の場合はModによってフィルターを除去したからといっても、前出のタイルの問題によりぎこちないピクセルアートになるという。そこでジェッドラン氏は、フィルター除去だけでなく一部ファイルを書き換えるツールも用意。スプライトの置き換えの作業などがフォーラムでは進められている。まだ完成形ともいえるModは配信されていないが、修正は続けられている最中だ。スクウェア・エニックスもこうした問題を認識しているようで、Steamにて「頂いた問題点についても把握しており、対応を検討している」とコメントしている。断言はされていないものの、将来的にビジュアルについても調整がおこなわれる可能性はあるだろう。
こうしたピクセルアートについてはしっかりと調整されリリースされたSteam版「ロマンシング サガ2」は、ビジュアルについては評価が高いものの、コントローラー非対応(のちに対応)を筆頭にやはりPC向けの最適化不足によって批判を受けた。こうした最適化不足については、のちのアップデートによりフォローされることも多く、サポートする姿勢はあるように見える。ユーザーから愛されるIPを多く抱えるだけに、その期待に応える形でのリリースが求められるだろう。
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1995年の3月11日に発売されました。