廃線間近で大騒ぎ! どうして三江線は廃止されるの?:月刊乗り鉄話題(2018年3月版)(2/4 ページ)
時代に乗り遅れた「陰陽連絡線」、JR三江線を振り返る光と陰のお話。【三江線秘蔵フォトも20点】
「なぜ廃止するの?」──その理由は赤字路線だから、だけれど……
三江線が廃止されるいちばん大きな理由は、乗客が少なく赤字だからです。JR西日本は「データで見るJR西日本2017」という文書で、路線ごとの輸送成績を公表しています。
この資料によると、2016年度の三江線の旅客運輸収入は約4500万円。これはJR西日本の路線の中で下から3番目の数字です。ちなみに最下位は山口県小野田線の約2000万円、下から2番目は大糸線の約2100万円です。大糸線は長野県の松本駅と新潟県の糸魚川駅を結ぶ路線で、途中の南小谷(みなみおたり)駅を境として、JR東日本とJR西日本に所属が分かれます。この資料はこのうちJR西日本側のものになります。
経費の詳細は公表されていませんが、それぞれの数字を365日で割ると、三江線は1日当たり約12万3000円の収入があります。無人駅が多い路線だとしても、駅員さん、運転士さんや保線員さんたちの人件費、バスより大きな車両を走らせる燃料費、設備の維持費などを考えると、かなり赤字だと思われます。報道によると、三江線の赤字額は年間で約9億円に上るとのこと。今後、老朽化した鉄橋やトンネル内壁などの設備の改修に必要な費用も何十億円単位で必要になることから、そのまま赤字が積み上がるのは想像に難くありません。
そこでJR西日本は鉄道としてはこれ以上は維持できないと決断し、この区間を廃線とし、バス路線に転換したいと地元自治体に申し出ました。これが近年の廃止論議の発端です。
しかし、売り上げだけを見れば、三江線より低い路線もあります。最下位の小野田線は1日約5万5000円です。小野田線や大糸線の赤字の方が大きいかもしれません。「なぜ三江線だけが」と感じることでしょう。
赤字以外の理由は、「公共性」と「将来性」です。
公共性の目安は「平均通過人員」で計れます。平均通過人員は距離が異なる路線同士の輸送量を比較するために使われる数字です。1年間の利用者と利用区間の合計から、営業日数の365で割り、さらに路線の距離で割ります。これで、1日平均で1キロ当たり何人が乗車しているかという数字を算出できます。
三江線の平均通過人員は「1日83人」です。これはJR西日本の路線単位の数字で最下位です。前述した小野田線は1日470人、大糸線は1日100人です。三江線は売り上げも利用者も少ない路線だから、鉄道としては廃止しましょうとなったのです。大糸線も近い数字ですが、2015年に大糸線の糸魚川駅へ北陸新幹線の駅ができました。大糸線には「新幹線効果があるかもしれない」という将来性の期待から、様子見といったところなのではないでしょうか。
鉄道は公共交通機関です。そこには地域住民の移動手段を提供する役割と責任があります。しかし、あまりにも利用者が少ないならば、その限られた人のための特権的な交通手段になってしまい、相対的に公共性が薄れます。平均通過人員の少なさは、公共性の低さを示していると言えます。
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