皆さんは北大路魯山人(きたおおじ・ろさんじん)をご存じでしょうか? マンガ「美味しんぼ」のラスボスである海原雄山のモデルとしても知られる魯山人は、明治から昭和を生きた美食家兼芸術家でした。
魯山人は文筆家としてもすぐれ、食に関する随筆を数多く残しています。そんなグルメエッセイの1つが「納豆の茶漬け」(青空文庫)。なんでも魯山人がいうには「納豆の茶漬けは意想外に美味いものである。しかも、ほとんど人の知らないところである」だとか。
確かに、お茶漬けに納豆を入れるのが好き! という人は、あまり見かけないかも……。というわけで、今回は魯山人の「納豆の茶漬け」から、おいしい納豆の食べ方と茶漬けの作り方を学びつつ、私の好みも取り入れながら「納豆の茶漬け」を作ってみました!
魯山人に学ぶおいしい納豆の食べ方
「納豆の茶漬け」ではまず、「納豆の拵え(こしらえ)方」について書かれています。魯山人のオススメは、まずは何も入れない状態で納豆をよく練り混ぜるとのこと。
納豆を器に出して、それになにも加えないで、そのまま、二本の箸でよくねりまぜる。そうすると、納豆の糸が多くなる。蓮から出る糸のようなものがふえて来て、かたくて練りにくくなって来る。この糸を出せば出すほど納豆は美味くなるのであるから、不精をしないで、また手間を惜しまず、極力ねりかえすべきである。
早速醤油を入れずに納豆をかき混ぜてみました!
普段食べる納豆といえば、最初に醤油をかけて混ぜるので、混ぜれば混ぜるほど糸が切れやすくなって柔らかくなるイメージがありますよね。しかし実際に醤油なしで混ぜてみると、ぐいぐい糸が強くなって固くなるのでかなりの違和感があります。納豆の匂いも心なしか強くなった気がしました。
かたく練り上げたら、醤油を数滴落としてまた練るのである。また醤油数滴を落として練る。要するにほんの少しずつ醤油をかけては、ねることを繰り返し、糸のすがたがなくなってどろどろになった納豆に、辛子を入れてよく攪拌する。
醤油なしで練ったことで糸と匂いが強くなったので、確かに普通に食べるよりもおいしそうです。しかし私はこの次の一節が気になりました。
納豆食いで通がる人は、醤油の代りに生塩を用いる。
納豆に塩を入れるのが通!? おお、塩なら家にもある! これで私も納豆通だ! ということで、醤油を入れる予定だったのを変更して早速塩を砕いて入れてみました。
気になるお味ですが……まずい。
正直、あまりおいしいとは思えませんでした。確かに、味はさっぱりとしているのですが、納豆の味が引き立ちすぎるのか、強すぎるのか、くどくてそれほどおいしくはありませんでした。というか市販についてくる納豆のタレをかけたほうが絶対においしい。
もちろん、本場の水戸納豆などで試せばおいしいかもしれませんが、スーパーの3パック64円の納豆はこれが限界だったようです。せっかくこれで納豆通になれると思ったのになあ。
納豆のお茶漬け
気を取り直して、本題であるお茶漬けに取り掛かります。
そこで以上のように出来上がったものを、(中略)茶碗に飯を少量盛った上へ、適当にのせる。納豆の場合は、とりわけ熱飯がよい。煎茶をかけ、納豆に混和した醤油で塩加減が足りなければ、飯の上に醤油を数滴たらすのもいい。最初から納豆の茶漬けのためにねる時は、はじめから醤油を余計まぜた方がいい。(中略)そうして飯の中に入れる納豆の量は、飯の四分の一程度がもっともおいしい。
お茶漬けといえば、市販のお湯を入れるだけのタイプを使う方も多いかと思いますが、この魯山人のようにご飯に具をのせて、煎茶と醤油を自分でかけて食べるのも結構おいしいものなんですよ。
詳細は下記リンクの読書ラジオでも語っていますが、個人的には煎茶よりもほうじ茶で作るお茶漬けが好きです。しかし納豆をいれて食べてみたことはなかったので、早速作って食べてみました。
【作り方】
- 納豆を魯山人流に混ぜておく
- お茶碗にご飯をよそう
- ご飯の上に塩昆布などを適量のせ、海苔をちぎって入れる
- 納豆をご飯の4分の1くらいのせる
- ほうじ茶(緑茶)を静かに注ぎ込む
そしてお味は……イケる! 正直煎茶で作るよりおいしいレベル!
ほうじ茶の香ばしさで納豆の臭みが消えてかなり食べやすいですし、少しずつ納豆を溶かしつつ食べれば糸も引きません。最後のほうに残る茶漬けもあんかけのようにとろりとしていて口当たりもいいので、場合によっては納豆なしのお茶漬けよりもつるっと食べられちゃいます。
納豆が好きな方は、ほうじ茶をかけるときには納豆の風味を殺さないように納豆を避けて注ぎ込み、食べるときも端から少しずつ取り分けて食べるのがオススメ。逆に納豆がくどくて苦手、という方は上からかけて少し混ぜてからのほうが食べやすいですね。
納豆の好みは本当に人それぞれです。大粒が好きな人もいれば小粒が好きな人もいますし、混ぜる回数は30回がベスト! という人もいれば数百回無心で混ぜ続ける人もいます。
そんななかで「納豆の茶漬け」の好みもまた人によって分かれることでしょう。お茶漬けの具や納豆のコンディションを少しずつ変えながら納豆の茶漬けを作ってみて、魯山人を超える“キング・オブ・ザ・納豆茶漬け”を探求してみてはいかがでしょうか。
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