創作者にとって、発表した作品への「いいね」やリツイートの数が即座に可視化されてしまうSNS全盛の現在。ともすると息苦しさを感じてしまいそうになりますが、そんな空気をちょっと和らげてくれる短編漫画がTwitterに投稿されました。
漫画を手掛けたのは美少女画作家兼イラストレーターの細川成美(@giRly_darkness)さん。作中にはまず、白黒の世界で夢中に絵を描き続ける少女が登場します。「私の絵、見てる人いるのかな…」「わかんないけど、上手くいったし飾っとこう」と、真っ白な壁面に“赤、黄、黒、白、水色”で力強く描かれた抽象的な絵が飾られます。
完成するなり少女は「次あれ描きたいんだよね」と、すぐさま次の作品に取り掛かります。ところが今度出来あがった作品は「なんか思ってたのと違うな…」と、思った通りには行かなかった様子。足元には試行錯誤や失敗の痕跡なのか、完成に至らなかった絵がびっしりと散乱していきます。しかし、ついに「できた! いい感じでは!?」と納得の絵が完成。キラキラした笑顔と共に、またもや「次何描こうかな」と、創作自体が楽しくて仕方がない様子です。
テーマを決めて、資料を収集。服の構造を調べて……と、次々に挑戦していく少女。時には「上手くいかん! 今日はもう休もう」と思い切って作業を中段してみたり、疲れている中でも頑張って最後まで描ききり「手ェ痛い〜! でも今日は進んだ!」と手応えを感じたり、少しずつですが作品を生み出し続けていきます。
渾身の1作を描ききった直後にも「そういえば最近赤色使ってないや 描きたいな〜」と、また作業に戻る少女。いつの間にか真っ白だった壁は色とりどりの作品でいっぱいになり、足元の描き損じは床一面を覆い山のようになっていました。
そんな彼女の姿を遠くから見つめる少年が一人。「すっげ〜……!」「俺もなんか描きたいな」と、手に持っていたスケッチブックを開き、彼もまた創作を始めるのでした。
漫画は最後に「上手い人が描くべきだとか。質が高くないといけないだとか。そんなことは気にしなくっていいんです。あなたの描きたいが、誰かを感動させて、誰かの描きたいを生んでいる。」というメッセージで締めくくられます。
この漫画を描いた背景にはどのような思いがあったのか、メール取材に対し細川さんは次のように答えています。
絵で結果が出なくて苦しんでいる人や、絵を職にしている人、また、「絶対にいいものを作らなければ」「上手く描かなければ」と息苦しく創作をしている人たちに向けて、創作の原点「描きたいと思う素直な気持ちと創作の楽しさ」を忘れないでねという思いで描きました。
特にSNSが普及して、人と自分との絵の評価の差が明確になる現代では、若くしてSNSを使い始めた予備校生すら、絵を職とする前、大学に入る前から自分の創作で苦しんでいる現状があります。
自分自身も最近同じような状況で苦しんで創作をしており、こんな状態でする創作は不健康だと、いてもたってもいられず思いの丈を漫画に描き起こした次第です。
漫画での少女の姿をよく見ると、彼女の手、服、靴などには画材の色が移り、カラフルな汚れとなり残っていきます。少年は最後、完成した作品だけではなく、描き損じた絵やカラフルに汚れた彼女の姿など、少女の生き様そのものに感銘を受けているようにも見えます。
周囲の評価もやはり気になってしまうものではありますが、まずは目の前の創作に没頭できることが、気持ちの良い創作の輪を広げていくのかもしれません。
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