YouTubeに包丁の動画を投稿し続ける「圧倒的不審者の極み!」というYouTuberがいる。2016年にチャンネルを開設し現在の登録者数は50万人近く、総視聴回数は約7000万回を超えた。HIKAKINやはじめしゃちょーのような「大人気YouTuber」とまではいかないが、投稿された動画はどれもYouTube急上昇ランクに続々とランクインする人気だ。
注目を集め始めたのは2017年11月に投稿した「骨董品店で買った錆包丁を18時間手作業で研いだ結果」という動画。タイトルの通り“錆びた包丁をひたすら研ぎ続けるだけ”というトガった内容だったにもかかわらず、この動画は執筆時点で1000万回以上再生されている。
その後も続々と包丁を研ぐ、もしくはパスタ、鰹節、木材などの素材から包丁を作る動画を投稿し、ヒットを量産。今では“包丁を研ぐYouTuber”として急上昇ランクの上位常連だが、一般的なYouTuberのように自身のキャラクターを前面に出すことはない。顔はおろか、手元以外の部分が映っていることもまれで、動画内では声すらださないことがほとんどだ。
その人柄は謎のままだが、職業に関する質問に答える形で公表した源泉徴収票によると、本業の年収は1000万円オーバー。しかもYouTubeでの活動を開始する1年前の時点で1000万円を超え、翌年には1200万円を超えるほど。休みの日でも365日、1日最低5時間は何らかの仕事をしてしまうらしく、「普段は圧倒的社畜の極み」と自嘲するほどの仕事人間だという。
せっかくの連休も包丁を研ぎ続ける「圧倒的不審者」でありながら、仕事をこよなく愛する高給取りサラリーマンとしての一面も持つ。そんな「包丁YouTuber」を取材してみると、「靴を買えないほど貧しかった」「疲労骨折するまで夜の山で走った」など、インパクト抜群な人間性が見えてきた――。
「無駄な知識は無い。新しいアイデアは複数の知識から生まれる」というのが持論
―― 基本的なところですが、年齢はおいくつでしょうか?
圧倒的不審者の極み!(以下「極み」): すみません。年齢は非公開ですが、おおむね見た通りだと思います。
―― なぜYouTube上の活動を始めたのですか?
極み: 1つは、近年YouTuberが認知されるようになってきましたので、YouTuberに意見するために、その職業を正確に理解する必要があると思ったからです。
2つ目は「1再生数0.1円」という定説があって、それが事実か知りたかったからです。この業界への単なる好奇心ですね。再生単価については、現在ではある程度の平均値がとれたので、おおむね事実を知れたと思います。
―― 「1再生0.1円」というのはよく聞く話ですね。これは事実だったんですか?
極み: これを正確に公表するのはグーグルアドセンス違反になるそうなので正確に伝えることはできません。申し訳ございません。他のYouTuberのデータを見せてもらったことがありますが、チャンネルの動画内容にもよっても大きく異なるようです。
―― YouTubeでは包丁を研ぐ動画が注目されていますよね。錆びた包丁の動画から始まって、最近では特殊な素材をもとにして包丁を作ったり……。包丁動画を投稿し始めたきっかけはありますか?
極み: 包丁研ぎに初めて触れたのは小学校1年生のころでした。当時はガタガタの砥石で適当に研いで刃にカエリが出たら反対側を研ぐということだけ母に教わった記憶があります。それからはほとんど包丁研ぎはしていませんでしたが、社会人になって自炊するようになったとき、昔の思い出に浸りながら研いだりはしていました。きっかけはそんなもので、プロでもありませんし専門知識の人にも教わったことはございませんので全て我流でやっています。
反響が大きかったのは……再生数だけなら錆包丁と100円の包丁を3万円の砥石で研ぐ動画だと思いますが、公開された期間を考えると現段階では木材の包丁でしょうか。
―― 錆びた包丁の動画では約18時間もぶっ続けで研ぎ続けていましたよね。いずれの包丁もとてつもない手間がかけられていると思うのですが、1つの動画にどのくらいの時間をかけていますか?
極み: 空いた時間に毎日作業して1週間は掛かります。もともと何もしない時間に罪悪感を感じる性格なので、一般の方がゆっくりされている時間にひたすら研いでいる感じです。
―― なんだか包丁を研ぐことへの執着も感じますね……。やはり他のことにものめり込んでしまうタイプなんですか?
極み: はい、長所でも短所でもあると思いますが、ひたすらやり続けるタイプです。もともとはそうではなかったのですが、どうせ同じ時間を使ってやるならできるだけベストを尽くすようにしています。そうすれば、知識や特技などが少しずつ増えていくので。
「無駄な知識は無い。新しいアイデアは複数の知識から生まれる」というのが持論なので、せっかくチャレンジするきっかけなら何でも追求するようにマインドコントロールしていたら、こんな感じになりました。
―― ……なんというか、思考がとてもストイックですよね。
極み: もうお分かりだと思いますが、軽く物事を楽しむとかができない性格になってしまって……(笑)。基本的に周りと温度差が激しいので、人と行動するときは周りの人に合わせるように気を使わないと非常にめんどくさい人間です(笑)。
―― なるほど。1月の動画では、YouTuberが本業ではないという旨の発言がありましたが、YouTuberを本業にして活動していくことは考えていますか?
極み: 一本に絞ってやったほうが良い結果が出るのは今の本職で経験しています。ですので、本業、YouTuber問わず結果を出すのには何でも一本に絞った方が良いと思います。しかし現在は考えていません。私の動画の再生数が上がったのは去年の11月くらいでしょうか。まだ半年程度しかたっていませんので、私のチャンネルの長期データが無い状態です。この状態では私自身が私のYouTubeチャンネルに対して信用がないので本職にすることはありませんし、特に現状を不便に思っていませんので、このまま現状維持でやっていこうと思います。
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