大きな即売会は、春の連休や夏、冬のイメージですね。でもいまや同人誌即売会の開かれない週はない! といっても過言でないように、規模や内容も多彩な同人誌即売会が毎週どこかで開催されています。そよそよ風も心地よい秋、創作に取り組むためのよきグッズがここにありました!
今回紹介する同人誌
『同人サークルのためのサークル手帳』
A5 116ページ 表紙カラー・本文1色刷り
作者:コール
一冊で同人誌作りから即売会対応まで。このノートが同人生活を楽にする
こちらは、同人誌ではなくグッズです。ご自身のアイデアを基に、同人誌を製作する人のためのノートとして作られました。
くっきりとした色づかいに、ぜいたくにちりばめられた箔押しが、ノートをとじる金色のリングとよく調和して、華やかながら上品な雰囲気を醸し出しています。中身は「イベント参加予定表」「発行物一覧表」「イベントノート」「作品ノート」などの項目に分かれていて、クリーム色の用紙に、文字やケイ線が赤系のインクで刷られています。グッズとしてはかわいらしい色づかいの方に入ると思いますが、本文にイラストがなかったり、すっきりとまとめられたデザインで、落ち着いて使えそうな作りです。ぱらぱらめくると、スケジュール表と、お小遣い帳と、TODOメモが合体したような充実ぶりです。
もちろんそれぞれ市販のものを使いこなすのも手ですが、こちらのノートがありがたいのは、同人誌製作をするために思い切り特化しているところです。
活動の案内役であり、良き友であるような……1冊で何役もこなす充実の内容
例えば、イベントの参加予定から在庫一覧、当日の様子やサークルナンバーを書いておく「イベントノート」は即売会当日の売り上げや在庫を管理できます。加えて、事前の告知をした? ポスターや値札の準備した? などの、ついつい頭が回らなくなってしまうところが目に見えて書いてあることに「はっ」とします。ありがたい……。用意したお釣りの枚数とか、当日の服装を描けるスペースとか、同人誌サークルで活動していると「そうそうそうそうそれ大事ですよね!」と連打してしまうことが、ノートの中にきちんと収まっているんです。
作品作りのために夢と妄想を膨らませる時期には「作品ノート」のストーリーメモに妄想を書きつづり、今回やりたいことリストに使ってみたい印刷所さんをメモしたいですし、いざ書き始めたら「スケジュール」の項目が力強いお供になってくれそうです。ページの台割りや、作業進行を細分化してあり、入稿前チェックリストの「英語は間違ってない?」という問いかけなどは、確実に本ができた後の「あー! なんでこれ気付かなかったのかしらー!」と頭を抱えるようなミスを遠ざけてくれます。もう、同人誌サークルで活動する中で「あ、これやっておけばよかった」「あれをメモしておけばよかった」と思い付くことは軒並み載っています。この細やかな配慮を見ていると、とっても実情に添っているのでどの項目も使えそうですし、むしろ手書きでどんどん書き込みしたくなってくるわくわく感すらあります。
さらにこのノートが優しいのは、欄外にそっと添えられたコメントがあること。いまやることリストページに書かれているのは「大事なことは、早いうちから毎日5分だけ手をつけること! いつのまにか終わってるよ!」というメッセージ……。ほんとですね、ほんとですねとうなずきます。こんな心優しいコツがあちらこちらに書いてあって、ちょっとした気遣いに励まされるんです。よりよい同人誌活動ができるように案内をしながら、時にちょっとしたメッセージも伝えてくれる、一冊で何役も担ってくれる充実の内容ぶりです。
過去の振り返りは、明日のために。一冊の同人誌ノートから生まれる創作がきっとある
作品ノートのページには、今回やりたいことを書く欄と、作った後の感想まで書くスペースがとってあります。これを見て、製作中にやる気を出すのはもちろん、できあがった後からこれを眺めたら、「次はああしよう」「こうしよう」って思いが湧いてきそうです。
作者さんはこのノートについて、「これもひとつの作品になるから」と書かれています。ほんとうに、これを書いて、何度も参加して記録を残していくことそのものが、ノンフィクションのすばらしい作品だと思います。そして書き込んだ一冊をもし後世に残せれば、21世紀の同人誌作家さんたちがどんな風に生きて、どんな取り組みをしていたかの、一次資料になる! すごいことですよ、これは……!
2011年の発売以来、改定を繰り返して現在のノートはバージョン9.0。年々アップデートされるノートと一緒に、創作活動への気分も上向きになりそうなグッズです。
サークル情報
サークル名:オルオケ
Twitter:@oruoke
pixiv:https://www.pixiv.net/member.php?id=563816
イベント参加予定:COMICCITY大阪(10月28日)
今週のシャッツキステ
著者紹介
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 同人活動の強い味方! 初心者からベテランまで使える、「おしながき」作りのためのレイアウト本
「おしながき」という文化を守るための1冊にもなりそう。 - 「10年後には朽ちるものを100年後に延ばす」 博物館の裏方描いた漫画が驚きの連続
『ただいま収蔵品整理中!Vol.1』『ただいま収蔵品整理中!金属保存編』をご紹介。 - 入りきらなければ移動式書架を導入すればいいじゃない 本好きの夢が詰まった同人誌『せっかくだから俺はこの動く本棚を選ぶぜ』
スライドするぞ、気を付けろ! - 全国各地の“恐竜像”を1冊に 220カ所ものスポットを紹介した「日本全国恐竜公園ガイド」にワクワクする
そんなところにもいるの!? - フォントを手で書くための同人誌 「ズボラ手書き明朝体講座」が手書きの楽しさを教えてくれそう
手書きフォントならぬ、フォントの手書き。 - “鳥と鎧”の意外な組み合わせ 武具をまとった鳥たちのイラスト集があっぱれなクオリティー
すごく似合う。 - これがミニカー!? スマホでもできる、憧れの名車を好きな構図で撮るための撮影術
広がるミニカーの楽しみ方。 - 決してひと事ではない? 同人誌『夜10時カギを忘れて家に入れず初めてカプセルホテルに泊まった話』
忘れたと確信したときのドキドキ感……。 - ガーターベルトに仕込みメガネ メガネフリークしか出てこない1ページまんが「めがねのね〜眼鏡の音〜」が狂気の沙汰
「委員長の眼鏡ふきを煎じて飲んで、心を落ち着かせよう」 - 税率で変わる2人の関係 お金“異形頭”マンガ「おかねちゃん!」は恋するコインの物語
手袋はめてるのもポイント高いです。 - こんなの待ってた! アメコミの効果音を集めた辞書がマニアックすぎて心くすぐる
今週はサークル「FANDOMAIN」さんの同人誌「アメリカンコミックス効果音辞典 スーパーヒーロー誕生から70年代まで」をご紹介。 - マンボウ最弱伝説はウソ? 「着水の衝撃で死ぬ」「朝日が強すぎて死ぬ」などの真偽を研究者が判定
今回はマンボウ研究家が調査結果などをまとめた「マンボウの都市伝説-噂の根源と真偽- ver.3」をご紹介。 - 黒電話っぽいけどダイヤルがない……? レトロかわいい「磁石式電話機」にファンタジー脳が刺激される
こんな面白い電話機があったとは。 - 音が出るものから計算できないものまで!? 作者の“変な電卓”愛が爆発した同人誌に電卓の可能性を感じる
変な電卓が114種類を掲載した「変な電卓2017」を紹介します。 - “もしも埼玉にプロサッカークラブがなかったら” 架空の“埼玉”が舞台のちょっぴり変わったサッカーマンガ
同人誌『かつてこの地に栄えたというでんせつの』をご紹介。