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【木村祥朗×堀井直樹×なる×ZUN】「BLACK BIRD」爆誕祭 なぜゲーム開発者はシューティングを作りたがるのか、「原点にして究極」と語るその魅力(4/5 ページ)

「moon」「Million Onion Hotel」などを手掛けてきた木村祥朗さん(Onion Games)の最新作がなぜシューティングなのか。「BLACK BIRD」開発のきっかけや、シューティングというジャンルの魅力について語ってもらいました。

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「東方Project」はなぜここまでの人気を獲得できたのか

―― シューターの間では「弾幕」は是か非か、といった議論もしばしば起こります。このあたりはどう見ていますか?

ZUN:弾幕がなかったら、それこそシューティングはもう終わってますよね。

堀井:ゲーセンで「虫姫さま」のウルトラモード(※)が発見されたころは、普段シューティングを遊んでない人でも「ついに真ボスが倒されたらしいよ」って盛り上がったりしてたね。次はどれだけ難しいのが遊べるのかと期待していた時期はあった。

※ただでさえ難しい「虫姫さま」だが、隠しコマンドを入力することで、さらに難しい「ウルトラモード」が出現する。稼働開始当初は公表されていなかった


シューティング座談会 「虫姫さま」(ケイブ/2004年) ※公式サイトより

木村:でも弾幕シューティングの時代が来たときに「ああ、もう俺の能力だとこれはクリアできない」って振り落とされた気がした。画面に弾幕が広がってきたときに、「ああもう世界を見ている暇はないんだ、弾を見なきゃいけない」ってなったのがツラかった。

ZUN:本当のことを言うと、弾幕のほうが難易度は低いんです。難しく見えるだけで。

堀井:360度全方位に弾が撃たれていても、自分に関係があるのはせいぜい90度の範囲ですからね。

ZUN:「東方」を作り始めたころはまだ「弾幕」っていう言葉はなくて、でもなんとなく弾幕が流行ってくる兆しはあって、少しずつ敵の弾は多くなってきていた。これはもう敵弾を多くしたほうが面白いよね、と思って。

 ただ、「東方」を出したころはまだ、多くのシューターは弾幕を嫌ってました。私も弾幕がシューティングにとって良い方向に行くとはあまり思っていなくて、あくまで弾幕という邪道なシューティングがある、私はそれが好きだからやってる、という感覚だった。


シューティング座談会 「弾幕がなかったらシューティングは終わっていた」とZUNさん

木村:今のシューティングでは弾幕シューティングが完全にメジャー側にいるよね。そのうえでさらにどう弾幕を工夫しようか、みたいなことになってる。

―― 「BLACK BIRD」はその中では珍しく、弾幕に行かなかったですね。ラスボスだけ少し弾幕っぽい攻撃がありますが。

木村:自分が好きなシューティングの要素を入れていっているのに弾幕がないのはどうかなと思って、弾幕シューティングを作ったことのある若手に実装してもらいました。ただ、ラスボス前までは弾幕要素はないですね。スクロールが一方向じゃないから、右から避けられない攻撃が来たら、左に逃げればいい。追い詰められても弾のスキマをかいくぐらなくていいから、初心者には優しいはずです。


シューティング座談会 どことなく「東方」へのオマージュがうかがえるラスボスの弾幕攻撃

木村:そういえば弾幕の話じゃないんだけど、1面から放物線弾を出すのはダメだって、シューティングに慣れている人からはすっごい言われた。初心者には難しすぎるって。

ZUN:横スクロールでネックになるのが「上下がある」ということなんですよ。それを生かしてしまうと難しくなる。だから横スクロールは弾幕向いてないんですね。

木村:弾幕みたいにたくさん弾を撃ってくるわけじゃないから、(放物線弾を)出してもいいかなと思ったんだよね。


シューティング座談会 飛び方がいやらしい放物線弾(これは2面)

ZUN:でも放物線弾を出さないと、せっかく横シューティングにした意味がないからね。世界感を考えたらそれでいいんです。あとは難易度で調整すればいいだけの話で。

―― これはZUNさんにも、みなさんにもお聞きしたいんですが、「東方」がここまでの人気を獲得できたのってなぜだと思いますか。

堀井:僕が最初に「東方」を知ったきっかけは、渡辺製作所(※)のなりたさんがブログで褒めてたことだったよ。

※2003年まで活動していた同人サークルで、「THE QUEEN OF HEART」や「MELTY BLOOD」などの対戦格闘ゲームをリリース。「MELTY BLOOD」は後にアーケードや家庭用でもリリースされた


シューティング座談会 MELTY BLOOD(渡辺製作所/2002年)※TYPE-MOON公式サイトより

ZUN:「東方紅魔郷」の体験版を出したころでしたね。当時、あそこで同人ゲームが紹介されるというのは重要だったんですよ。

木村:僕がZUNさんと初めて会ったのって2013年ごろで、「東方」ってどんなゲームなの、って周りのみんなに聞いて教えてもらったの。そのころは「ニコニコ動画」の盛り上がりと「東方」の盛り上がりがまさに同時に起こっていて、1つのゲームが何かのシステムを奪ってしまうということがとにかく衝撃で。

 で、その現象がなぜ起きているか考えたら「キャラクターだな」と。シューティングを遊んでない人たちでも、キャラクターで喜んで遊べる状況を作れたのが大きい。どんなアニメでも漫画でも、これほど二次創作されるというのはなかった。


シューティング座談会 ニコニコ動画では今でも「東方」が独立したサブカテゴリーになっている

ZUN:そこは僕も理由は分かっていて、なぜキャラクターが広がっていくかというと、絵だけではなくて、弾幕とか音楽とかも含めて、1ステージ丸ごと使ってキャラクターを表現しているからなんです。だから私も弾幕を頑張って作る。キャラクターを魅力的にすることとゲームを面白くすることがイコールなんです。

木村:ちゃんと狙ってそこを作り込める力がすごいな!!

 それにしてもいつも思いますが、ZUNさんに感じるのは「地道さ」なんですよ。ゲームって机でPCに向かって作ってるのが全てで、それを集中してやれる人って実はそんなにいない。それをZUNさんはたった一人でやって、成功している。「地道力」がすごい人なんです。要は「努力」の人です。


シューティングは「開発者が自分で遊べる」ジャンル


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