「ハリー・ポッター」シリーズにおけるエマ・ワトソンに当たる人物は「ファンタスティック・ビースト」シリーズでは、キャサリン・ウォーターストンではないかと思う。エディ・レッドメイン演じる主人公ニュート・スキャマンダーがどこかおっちょこちょいでエモーショナルな人物であるのに対し、ティナ・ゴールドスタインは確かな魔法の実力を持つ正義感の強い人物。生真面目で融通の利かない常識的な部分も、ニュートと出会ったことで徐々に変化をみせるようになった。
11月23日に公開された“ハリー・ポッター魔法ワールド”の最新作「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」の公開に合わせて来日したキャサリン。はかなさと力強さを同時に表現するような存在感を持つ彼女に、ティナとしてどんなことを意識しているのかを聞いてみた。
―― ティナは前作「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」から大きく成長したと感じましたが、そうした変化をご自身はどう捉えましたか?
キャサリン よい監督というのは、役者の演技に過剰に干渉しないもので、役者もまた、ひとたび役が決まると、自分でその役を掘り下げて発展させていくものだと思います。デヴィッド・イェーツ監督は私たちに任せてくれていた。監督との重要な会話は、一作目の撮影が始まる前にしていたので、今作で私はティナとして何を伝えるべきかじっくり考えました。
今作では、制作に関わるさまざまな部門と話をしました。例えば、彼女のヘアスタイルについて。前作では、ティナは自分のことをあまり気に掛けていないというか、年に一回くらい、自分で髪を切るような最低限のメンテナンスしかしていないと思っていた。今作ではニュートと出会ったことで女性として目覚めて、自分を磨くために髪形も変えたい思いがあった。前髪を下ろしたボブカットになっているのはそういう理由です。
彼女が羽織るコートもそう。前作で羽織っていたグレーのロングコートは少しペラペラしているというか、当時の彼女の不安定さを象徴するにはよかったのですが、今作では彼女の強さやしっかりしたところを出したかったので、ダークネイビー調のレザーコートをまとっています。私は毎日それを着るだけでティナのタフさなどを意識しながら演じることができました。
―― 前作を踏まえて、今作でのティナという存在を端的に表すなら?
キャサリン 忍耐、決意、あとは自分のことに同情しない人物です。今作でティナは、仕事の面では非常に自信を持っている状態ですが、誤解によってニュートが他の女性と結婚したと思い込んでいて、痛みを抱えている。しかし、それによって自分が崩れるのではなくて、自分が正しいと思うことを決めて、それをきちんとやっている。
―― すると決めて、すると。正しき者ですね。ところで、「ハリー・ポッター」シリーズはもともとご覧になっていましたか?
キャサリン 年齢的には既にメインターゲットでない世代でしたが、私の弟が夢中になっていました。彼が部屋に閉じこもってむさぼるように書籍を読んでいるのを見ていて、「よっぽどすごい作品なのだろう」と関心を持つようになりました。これはエディもそうで、彼も自分の弟を通して作品に触れたと聞いています。
私がこの豊かな物語により時間を費やすようになったのはティナ役が決まってからですが、今では儀式として、毎回撮影に入る前にシリーズを全て読み返し、複雑で豊かな世界をインプットして臨んでいます。今後「ハリー・ポッター」シリーズに登場するキャラクターとの接点もあるかもしれませんし、自分の想像力をより円滑にしてくれるものです。
―― 今作は嫉妬心のようなものもあらわにしていて、意外に素直だなと感じる部分もありました。
キャサリン いえ、私は嫉妬とは思っていませんでした。ニュートとはお互いの相性もあって困難を乗り越えられるいい関係が育まれ始めたと思っていたのに、誤解とはいえそれが裏切られたような気持ちになって怒りと悲しみを持っているのです。
先に話したような誤解が解け、ティナがリタ・レストレンジと会うシーンがありますが、私が重要だと感じたのは、そこで嫉妬心を出さないことでした。なぜなら、ティナは人として成熟していてそういう感情にはならないと思いましたし、彼女はより崇高な精神を持っていると考えたから。
それに、ティナは誤解によって苦しむけれど、それはニュートに対するもの。リタに会って彼女が感じたのはむしろ、恥ずかしさ。そこは(リタを演じた)ゾーイ・クラヴィッツとも話して気を付けた部分です。リタとはぶつかり合うのではなく、友情が育まれても不思議ではなかったと思います。
―― では、妹であるクイニーが今作で見せた選択は姉にとってはどう映りましたか?
キャサリン 今作ではさまざまな物語が同時に展開します。そして残念ながらその全てを掘り下げるだけの時間はなくて、探求し切れてないところがあります。クイニーの大きな変化が次作でどうなるのかは私自身も感心があるところです。
ティナにとってはクイニーを守れなかった代償はどこかで払うことになるのでしょう。彼女は第1作目では救うことができなかったクリーデンスに対する負い目を抱えるが故に、彼を守ろうとすることに心を割きすぎ、結果、自分の身近にある大切なものを失ってしまう。ティナにとってクイニーは最も大切な人。幼くして孤児になったときから、ティナはクイニーに責任を感じているのです。
今作では、そんなティナに対しクイニーが「ティナは私の幸せを願っていない」となじるシーンがありますが、実際には、ティナが望んでいるのは、クイニーの安全にほかなりません。そうしたお互いの誤解が大きな悲劇を生んでしまいましたね。
―― ありがとうございます。最後に聞いておきたいのですが、ティナは妹のクイニーのように他人の心を読む開心術(レジリメンス)をわずかでも有しているのでしょうか。
キャサリン ジョー(原作者のJ.K.ローリング)からはそれについて何も言われていないことを伝えた上でお話しすると、ティナはレジリメンスの力を持っていないと思います。
私には姉がいますが、不思議なつながりでもあるかのように似た行動を取ったり、まるでお互いの心が通じているかのように感じる瞬間があります。同じように、クイニーが心を読んでいることをティナは彼女の表情やごくささいなことから察したりすることはあるでしょう。でも、もしティナがレジリメンスを有しているなら、クイニーがああいう状況にはならない。クイニーの安全のためにそれを用いていたでしょうから。
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「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」インタビュー
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