11月23日に公開となった映画「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」。公開2週目が終わったところで、前作「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」より2日早く200万人超を動員。新たな魔法ワールドに魅了される人が続出しています。
「ハリー・ポッター」シリーズと比べると物語が大人向けに練り込まれ、加えて、今作から登場する新たなキャラクターや、それぞれの物語も複雑に絡み合い、気を抜くと大人でも混乱してしまいそうな印象すらあるものの、ふたを開けてみれば国内の興行収入も30億円に迫り、世界興行でも3週連続No.1を記録するなど前評判通りの勢いです。
今作から新たに登場するキャラクターの一人が、クローディア・キム演じる“マレディクタス”。「呪われた血」により魔法動物に変身できる彼女は、サーカス団の一員として登場。見せ物的に扱われているナギニですが、前作で煙となって消えたクリーデンス(エズラ・ミラー)もそのサーカスに現れ、彼と心を通わせていきます。
ファンを沸かせたのは、彼女が“ナギニ”であったこと。ファンには説明するまでもないでしょうが、ナギニとは「ハリー・ポッター」シリーズでヴォルデモートの分霊箱として登場する大蛇。そんなナギニがまだ人間だったころの物語も描かれている同作について、クローディアに直球の質問を投げかけてみました。
―― 映画の情報が出始めたとき、あなたが演じるのはマレディクタスと紹介されていました。後にそれがナギニと明かされファンを大いに沸かせましたが、ナギニであることは早くからご存じだったんですか?
クローディア 自分が演じるのがナギニだと知らされたのはオーディションの最後です。もちろんトップシークレットでした。例えばハリウッドだとコードネームで呼んだり、別のものを羽織って衣装も見せなかったりしますが、今作でも、パパラッチは全て排除して写真などは撮らせませんでしたし、台本読みでは自分の部分は“ナタリー”と書かれていました。
―― グラマラスで美しく、心の中の悲しみも表現するかのような存在感に魅了されました。ご自身はナギニをどのような人物だと捉えていましたか?
クローディア オーディション用のせりふを読んだとき、彼女はミステリアスな女性で、クリーデンスへの愛情があると思いましたし、デヴィッド・イェーツ監督のインタビューで、ナギニの個性をよくつかんでいたと語ってくださっていたのは読みました。
当初はもっとフェミニンなキャラクターをイメージしていましたが、監督は「(ナギニは)弱くてはかなげなところもあるけれど、深い悲しみを抱えた強い女性」だといつも話していました。ハリウッドなどでは外見も内面もパワフルな女性が好まれるのですが、アジア圏だと、私は力強い女性とみられることが多くて、内に秘めたものとの対比を出せたのかなと思います。
―― そもそもナギニはなぜサーカスに?
クローディア ナギニがどのようにサーカス団へとたどり着いたかは分かりませんが、私たちはインドネシアのジャングルからさらわれたのではないかと話していたりしました。捕らえた人間からするととても貴重な存在で、人質として囚人のように生きてきたのだと思います。彼女は(サーカスで)演技をするような心境ではないけれど、自分の力をどう使えばよいのか分からず、厳重に管理されているサーカスからどう逃げてよいのかも分からずにいる。サーカスというセットはすごくマジカルな要素が加わって、役とのコントラストで幻想的でした。
―― 「マレディクタス」とは、母から娘に伝搬する“血の呪い”を持って生まれた女性とされています。その血の呪いによって、大蛇に姿を変えることができ、最後には永遠に大蛇となる存在。なぜナギニの母がそうした呪いを受けたのかは今作では明かされていませんよね。
クローディア はい。J.K.ローリングはナギニが大好き、ということくらいしか情報はなくて、彼女がオーディションテープを聞いてすごく喜んでくれたというのを聞いたくらいです。
―― クリーデンスとナギニは、お互い初めて仲間といえる存在と出会うわけですが、劇中で育まれていく関係性は友情? 愛情?
クローディア 両方だと思います。あまりにも深い愛だけど、お互いすごく繊細な部分があるから、愛し合うというのとはちょっと違うと思うけれど。クリーデンスは自分が誰なのかを知りたい、ナギニも恐らくは同じなのではないかと。もしかするとナギニはクリーデンスが自分にとって何らかの鍵ではないかと思っているのかもしれません。
―― クリーデンスは今作である決断を下しますよね。ナギニはそれに寄り添う選択肢もあったと思いますが。
クローディア 多分、本能によるものだったのでしょう。言うならばナギニは内なる獣を持つビーストですから、グリンデルバルドをみたときに、彼の内にある危険を見抜いたのでしょう。実は、ナギニがグリンデルバルドの近くに寄るシーンも撮影はしたんです。でも結果的にそのシーンをカットしたことで、クリーデンスの選択というのは彼にとって必要なことであり、それを止めることができないとナギニが理解したことがうまく描けたと思います。
―― とはいえ、今作ではナギニに救いが少ないように思いました。
クローディア そうですね。ただ、クリーデンスがパリで自分の母に会えそうなシーンがあるんですが、そのときのナギニは希望を持っていたと思います。あるいは、トム・リドルがいることで救われるのかもしれませんね。
―― 今作は1927年のパリが主な舞台。一方、後のヴォルデモートであるトム・リドルが産まれたのは1926年12月31日。トム・リドルを産んだメローピー・ゴーントは産後すぐに亡くなっていますが、彼が産まれた孤児院の職員は、メローピーを“サーカス団員だと思っていた”なんて言っていたようです。
なぜナギニは後年ヴォルデモートの分霊箱となるのか。なぜダンブルドアは「ヴォルデモートが何かを好きになることがあるとすれば、それはナギニである」と語ったのか。実際のところはよく分からなかったんですが、今作を見ると、それらがつながっていく感覚がありました。
クローディア これは私見ですが、ナギニがまだ人間だったとき、トム・リドルとは何らかの接点があったのではないかと思います。ヴォルデモートの一番のお気に入りの分霊箱はナギニだったわけですし。
―― これをご覧になったことはありますか? これは『ハリー・ポッター映画大全』(Harry Potter Page to Screen)という書籍で、この中に「炎のゴブレット」で衰弱したヴォルデモートがナギニのエキスを吸い取る様子を描いたコンセプトアートがあります。このイラストからも、ヒンディー語でナギニが“雌の蛇”を意味することからもナギニが雌であることは分かっていましたが、まるで母の乳を飲む子のようなヴォルデモートをみると、大胆な仮説、すなわち、クリーデンスとナギニの間には子どもが……など妄想が広がるのです。
クローディア これは初めて見ました。これ絶対(ナギニはヴォルデモートの)お母さんじゃないですか! これを見てもあらためて思いますが、ナギニは単に世話好きだとかいうわけではなく、母性的な自己犠牲の愛があるように思います。
2011年刊行の『ハリー・ポッター映画大全』には衰弱したヴォルデモートがナギニのエキスを吸い取る様子を描いたコンセプトアートが掲載されており、ナギニとヴォルデモートの関係が見て取れる(画像はAmazon.co.jpから
―― そうですね。蛇が話す言葉を理解できるパーセルマウスであるヴォルデモートとナギニは何を語らっていたのか気になります。それにしても、そう遠くない将来、完全に蛇となり人には戻れなくなるナギニですが、ファンタビの続編ではまだ人間のナギニ、つまりあなたの姿を見られるのでしょうか。
クローディア それはもっと祈ってほしい。私のためにも(笑)。J.K.ローリングのことですから、きっとナギニにも素晴らしい物語を考えていると思います。パリのプレミアのステージで彼女とお会いしたとき、「今日はちょうどあなたのことを書いていたのよ」と話していて、プレミア当日にも脚本を書いていることに驚きました。今作は、ナギニの物語の始まりにすぎないと思います。
「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」インタビュー
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