2019年9月30日、ポケットベル(ポケベル)を利用した個人向け無線呼び出しサービスが終了します(関連記事)。同サービスを現在、日本で唯一提供している東京テレメッセージの発表によると、契約者の数は現在1500人を下回っているとのことですが、ネットではむしろ「まだ動いてたのにびっくり」と驚く声も多くみられました。
そこで、編集部のTwitterで呼びかけるなどして今も使っている人を探してみた結果、2人のポケベル利用者の方から「何に使っているのか」などのお話を伺うことができました。利用者の割合や端末のことを考えると、使えるポケベルを所持しているというだけでも貴重に感じられる……。
ちなみに募集ツイートのリプライ欄では「山奥の農家が使ってるんじゃないか説」や「災害時や病院などで活躍している説」などが推測として寄せられていましたが、今回のお2人の使い方はそれらの角度とはちょっと違っていました。
「現役でポケベルを使っている人に聞いてみた」1人目 〜398Mさんの場合〜
1人目は、Twitterで見つけて声を掛けた398M(@6000JR)さん。最初に言ってしまうと、398Mさんは“目覚まし”としてしか使っておらず、厳密には“ポケベルとしての契約”はしていませんでした。
―― いつから使っていますか?
398Mさん:去年から使っています。
―― どんなきっかけで使い始めたんですか……!?
398Mさん:父からもらいました。たしか親の実家に帰った時に見つけて、そのままもらった感じですね。タンスの中で眠ってた感じです。
―― 使っている機種は?
398Mさん:三菱電機「Bellcome」です。
―― 目覚ましに使っているとツイートで書かれていましたが、ポケベル本来の使い方はしていましたか。
398Mさん:時計として使っていますが、送受信はしたことはないです。恐らく、とっくの昔に契約は解除していたかと……。
―― 契約者1500人未満と聞いてどう感じましたか。
398Mさん:思っていたより多いと思いました。
―― ポケベル終了で今後困ることはありますか?
398Mさん:少し使ってみたい気持ちもあったので残念です。今後も、時計として使い続けたいと思っています。
個人向け無線呼び出しサービス終了後、ポケベル端末が使われることがあるとすれば、このシンプルな時計としての使用が一番あり得そうです。全盛期当時、お父様へのメッセージを受信して鳴っていたポケベルは、これからも398Mさんを起こすために鳴り続けるのでしょう。それだけに、鳴らないと困る気持ちは共通していそうです。
「現役でポケベルを使っている人に聞いてみた」2人目 〜芒果豆腐花さんの場合〜
2人目の芒果豆腐花(@hongkong_blog)さんは、今でも実際に使っているとねとらぼに名乗り出てくれた方で、伺うと“ある1つのサービス”として長く利用されていました。
―― 何に使っていますか?
芒果豆腐花さん:「D-FAX(※)」を使っているので、FAXを受信した際に鳴ります。それだけの利用です。
※D-FAX……Faxをメールで受信できる、東京テレメッセージのインターネットFaxサービス
―― いつごろから利用していた?
芒果豆腐花さん:いつから利用してたか忘れましたが、NTTコムで060サービスが終了してから、D-FAXに切り替えましたので、結構長く使ってると思います。
―― 060サービスが終了してからということは、2010年ごろでしょうか。
芒果豆腐花さん:それくらいで合ってます。D-FAXは東京テレメッセージのサービスですが、Webサイトを見てもサービス終了のアナウンスは出てないですね。
―― 維持費はどれくらいでしたか?
芒果豆腐花さん:これは無料です。D-FAXのポケベルは020番号が付与されているので、FAXを送信した側が割高な通話料を支払っています。当方は月額維持費は一切掛かりません。このポケベルもD-FAXからもらったものです。
―― 実際に使っていてどのあたりが便利でしたか。
芒果豆腐花さん:どこに居てもFAX着信を即時知ることができるという点です。ただこのポケベル、単四アルカリ電池1本入れるんですけど、意外と持ちが悪いんです。待ち受けだけで3週間持てばいい方です。1回でも鳴ればさらに持続時間が短くなります。
―― 意外と持たないものなんですね……。ポケベル終了で今後困ることはありますか。
芒果豆腐花さん:ポケベルがなくなっても不便はないです。D-FAXはメール添付でFAXが送られてくるので、特段不自由はしないでしょうね。
東京テレメッセージの「D-FAX」は、Fax機器がなくてもメールでFaxの受信を行えるようになり、受信料金も無料という、Faxを日々使う方には便利なサービス。芒果豆腐花さんの利用するポケベルは、その中の「D-FAX着信通知」というお知らせサービスのようで、POCSAG方式(※通信方式)の端末が登録者に配布されているようです。
それぞれ少し思わぬ方向の利用報告でしたが、ポケベル全盛期以降も実際に使われており、現在でも人によって違う理由で利用され続けていることがわかりました。どちらも必須とまではいきませんが、それでも使われ続けていたのは、その受信専用という限られた性能により小さくまとまった端末のおかげかもしれません。これでポケベル本体が大きかったら、きっと使われていなかったでしょう。
今後はその無線呼出サービスの「受信力」という強みを生かし、防災無線等の地方自治体向け情報配信サービスに注力していくと発表した東京テレメッセージ。ポケベルは来年の新元号まで“使われていた”サービスとして歴史に残り、より大事な通信サービスとして形を変え、これからもどこかで誰かのために情報を知らせるベルを鳴らすのかもしれません。
398Mさん提供、「Bellcome」画像・動画集
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