みなさん、年末年始に年賀状は送りましたか? ハガキなどに住所を書くときには、都道府県名を省略して、市町村名から書くことも多いです。
そんなとき、よそと「同じ名前の市」があったら、紛らわしくて仕方がありません。うっかり郵便番号を書き忘れてしまったら郵便屋さんもパニックです。
さて、「同じ名前の市」はあるのでしょうか? そして、作っても良いのでしょうか?
作っては「ダメ」
かつて日本には、2つの若松市がありました。福島県若松市(現:会津若松市)と、福岡県若松市(現・北九州市)です。よりにもよって県名まで似ているこの2つの市は、よくお互いに間違えられていました。
そこで国は、「新たに市を作るときは、既存の市と同一の市にならないよう配慮すること」という慣行を作りました。同じ名前の市ばかりできると、郵便事業などに多大な影響が及びますからね。
しかし、2つある「府中市」と「伊達市」
ところが、実はまったく同じ名前の市は既に存在しているのです。それが「2つの府中市」と「2つの伊達市」。
府中市(広島県、東京都)
広島県府中市は1954年3月31日に、東京都府中市は1954年4月1日に誕生しました。なんとこの両市は、1日違いで生まれてしまったのです。
2つの府中市は、あまりにも同時期に生まれてしまったために、先ほどの慣行の例外となってしまったのです。
伊達市(北海道、福島県)
北海道伊達市は1972年に誕生しました。一方、福島県伊達市は2006年に5町が合併してできた市です。
府中市の例と違って、こちらは福島県の方が完全な後出しですが、なぜ同じ名前の市が許されたのでしょうか?
福島県側としては、元の地名「伊達郡」の「伊達」を残したかったようで、総務省に「同じ名前じゃダメですか?」とあらためて聞きました。すると返事は、「北海道の伊達市がOKなら良いよ」とのこと。
そこで北海道の伊達市に訊いてみたところ、特に異議はないとのこと。これによって無事、2つ目の「伊達市」が誕生したのです。
もちろん基本はダメ
とは言ってもやはり伊達市の例は特別で、既に同じ名前があるために別の市名にしたパターンもあります。例えば、茨城県鹿嶋市は、本当は鹿島市にしたかったものの、既に佐賀県鹿島市があったために、別の漢字を使った、という経緯があります。
したがって、合併する前の旧・茨城県鹿島町で誕生したサッカークラブ「鹿島アントラーズ」は現在茨城県鹿嶋市に本拠地を置いているというややこしいことにもなってしまっています。
同じ名前の市町村の配慮
同じ名前の市町村があると「府中市で○○が起こった」などのニュースで混乱してしまいます。
そこで、地震速報などでは「東京府中市」「広島府中市」などと区別して表記されるようになっています。
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