「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督が脚本・製作を務めた映画「移動都市/モータル・エンジン」が、3月1日から全国で公開されます。
舞台は、最終戦争によって文明が荒廃し、人々が空や海、大地の上に移動型の都市を作り上げるようになった世界。資源や労働力を奪うため、都市が都市を食らうようになった“弱肉強食”の世界で、母親を殺した男への復讐(ふくしゅう)に生きる少女ヘスター・ショウ(ヘラ・ヒルマー)と文明の過去の遺物“オールドテク”に情熱を注ぐ歴史家見習いのトム・ナッツワーシー(ロバート・シーアン)が出会ったことから物語が動き始めます。
日本語吹き替え版では、ヘスター・ショウ役にアニメ「進撃の巨人」シリーズのミカサ・アッカーマン役などで知られる石川由依さん、トム・ナッツワーシー役に「あの夏で待ってる」霧島海人役などの島崎信長(崎は「たつさき」)さん。さらに、下野紘さん、朴ロ美(ロは王へんに路)さん、大塚芳忠さん、大塚明夫さん、銀河万丈さんら豪華声優陣が物語を彩ります。
ねとらぼでは、アフレコを終えた石川さんと島崎さんに公開直前インタビューを実施。映画の魅力や、自らが演じたキャラクターについて語ってもらいました。
大画面で良い音響で見たいって思わされる作品
―― 都市が大地を走り回り、他の都市を食らうという奇抜な設定が印象的ですが、作品を初めて見たときはどういう感想を持ちましたか?
島崎 純粋に面白くて、まず映像がすごかったんです。“移動都市”がタイトルにもなっているんですけど、荒廃した大地を移動する都市、そこに人々が生きているっていう表現がすごいなと思いました。特に、トムが移動都市から落っことされてからはもう、「弱肉強食ってこうだよな」っていうのを、強く思わされました。
あと、音を映画館で聞きたいなって。家のしょぼい音響だと細かい音があまり聞こえなくて、蒸気が出る音だとか金属がぶつかる音だとかが、「細かく聞こえない!」って思いながら見ていました。大画面で良い音響で見たいって思わされる作品です。
石川 音もですし、出だしから文字通り“エンジン全開”というか、都市同士で喰うか喰われるかみたいなところから始まるので、その大迫力の姿を劇場で見たら、きっと最初からすごくテンションが上がるんじゃないかなって。私も早く劇場で見たいです。
―― 最初のシーンで一気に心をつかまれますよね。映像や音について語っていただきましたが、ご自身の演じた役柄についてはどうでしょうか。
島崎 トムは巻き込まれたポジションというか、観客の皆さんに一番近い視点の人だと思います。彼はオールドテクが好きで、そこに関する知識は持っているんですけど、基本的に彼の持っている情報や感想は観客にとても近い。彼の分からないことは見ている方も分からないし、皆さんが疑問に思っていることはトムも疑問に思って質問してくれるし、という役どころですね。
だから、自分自身も共感できるところが多くて。ヘスターは戦士のように鍛えられているし、荒廃した世界についても知っているんですけど、トムは移動都市での一般的な育ち方をしてきているので、いろんなことを知らないし耐性もない、戦う人でもありません。そういうところがすごく面白くて、さまざまな環境に急に巻き込まれるので、彼の変化だったり成長だったりというのをすごく感じました。最後まで見ると「あ、トム変わったな」というのが分かると思います。
―― トムの成長は見どころですね。
島崎 あと、さっきオールドテクが好きって言ったんですけど、好きなことには本当に夢中になる子で、そこがすごく共感できるんです。あとはへこたれない、しぶとくて諦めが悪いところも好きで、バカなこととかもしちゃうし、危機感がなくてすっとぼけたことをしちゃったりするんですけど、それでも諦めない。しぶとく生きて、頑張って頑張ってあらがって、何かを変えていこうとするところがとてもすてきだと思いました。
石川 ヘスターは幼いころに母親を殺されて、その復讐を目的にロンドンにやってきたんですけど、もう本当にどんなひどいことがあっても屈しない子だなって。たぶん彼女は物理的に強いというわけではなくて、どちらかと言えば普通の子で、きっと母親を殺されるなんてことがなければ幸せに優しい世界で過ごしていたと思うんです。それが、母親が殺されたことによって憎しみが生まれて、目的を達成するまではなにがあっても屈しない諦めない気持ちがすごく強い子だなと。
石川 最初はトムに対して、自分の目的を邪魔されてしまうんじゃないかという気持ちがあって、冷たくしているところもあったんですけど、トムの優しさとか、ある意味空気が読めないところとかも影響して、徐々に憎しみだけで固まっていた気持ちが溶かされていくというか。最後はヘスターの中にも優しさというものが生まれて、そこがヘスターの変化として見えたかなと思いました。
―― お互いのキャラクターの印象はどうでしょうか。
島崎 なんだこの人、怖いしわけ分からないっていうところから始まるんですけど、一緒に過ごしていくと、さっき石川さんが言った、この環境じゃなければ普通の子なんだろうなっていう、年相応の子なんです。
あと、なんやかんや世話を焼いて、トムが食べ物欲しいアピールをしたら分けてくれたり。だんだん彼女の人としての優しい部分、かわいい部分が見えてきました。優しくて情が深いからこそ、復讐の気持ちも強くなる。心が冷めていたら復讐はしないと思うんです。絶対に許せないって、命や人生を懸けてまでそういうことをしてしまうのは、母親のことを愛する思いがあるからだと思うので。
へスターのあらがう姿を見て、トムも影響を受けて諦め悪くあらがうようになる。一緒に前に進んでいきたくなるし、お互い助け合う、すごく魅力的な子だと思います。あと、アナ・ファンっていう本物の戦士と絡むと、ヘスターはまだ戦士として完成されているわけではないなっていう、かわいい部分も見えてくる。そういうギャップもある子です。
石川 トムはトムで諦めが悪くて、なにがあってもヘスターについてきてくれるし、トム一人でなら逃げられるシーンもあるんですけど、一人だけでは逃げようとはしない。ヘスターはきっと復讐のためだけに生きてきたようなものなので、トムがいなかったら、復讐を遂げた後、生きる目的をなくしちゃうんじゃないかなという気がしていて……。でもトムがいたからこそ、生きてみようかなと思えるようになったんじゃないかなって思いました。
アフレコ後に感じた“生き抜いた感”
―― お互いがお互いを支え合っているような、そんな関係性を感じました。アフレコはいかがでしたか?
島崎 最初ちょっと緊張していたんですけど、演出家の方に「リラックスして、もっと力抜いていいよ」って言ってもらえて、パッと切り替えられました。リラックスしているときが僕自身は一番良いパフォーマンスが発揮できるんじゃないかなって思っていて。もちろん大変でしたけど、緊張感はありつつも落ち着いて演技できたので楽しかったですね。
―― 収録は一緒にやられたということで。
石川 島崎さんと一緒にアフレコしたことで、トムとの空気感や芝居を合わせつつできたのが自分としては役に入りやすかったです。吹き替えはあまり経験したことがないので、戸惑うところはありました。でも割と気持ちとしては穏やかな気持ちというか……全然穏やかな世界観ではないんですけど(笑)。アフレコが終わった後には“生き抜いた感”がありました。
―― 巨大な移動都市ロンドンでは、多くの人が生活しており、中には現実の世界には存在しない職業も登場します。もし、お2人が映画の世界に入るとしたら、どんな職業に就きたいですか?
石川 オールドテク集めは面白そうですよね(笑)。
島崎 ですよね!
石川 映画では、あるキャラクターが神として祀られていたりだとか、いまの時代で普通に使われているものが遺産として出てくるのがすごく面白くて。いまの世界を知っているからこそですけど、そういうものを集めるのは楽しそうだなと思いました。
島崎 僕も、オールドテク集めかなあ。なんでかというと、いまの知識を生かせるなと思ったんです。この時代の人よりは原理が分かるだろうし、それでなんとかご飯を食べていけたら。オールドテク研究所の人たちにも、こいつなかなか知識があるぞみたいな。兵器のことは全然分からないけど、一般的に使っていたものだったら分かると思うんで、そういった知識を生かしてなんとか生きていきたい。自分の能力を生かして、どうやってこの世界で生きていけるのか。そればかり考えちゃいますね(笑)。
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