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スマホ版「風来のシレン」が「壺投げゲー」と化している悲しみについて(※追記あり)

パリーン……。

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 先日発売されたスマホ版「風来のシレン」、みなさんプレイしていますか? 子どもの頃にSFC版第1作に出会って以来、筆者も20数年来のシレンファンとして各シリーズを今でも遊んでいます(それほど上手ではないですが)。

 そんなわけでスマホ版シレンもさっそく購入してみたのですが(買い切り型で税込1800円)、発売前からやや不安視されていたUI周りが、やはりというか何というか、なかなかに厳しい感じに仕上がっています。

 今回はスマホ版シレンを数日プレイしてみて気がついた、「ちょっとここは(アップデートなどで)どうにかならないもんかなあ」と感じている点について書いてみます。

追記

2019年4月22日、待望の【v1.1.0】アップデートが配信されました。

本記事で書いた「マップ移動」「アイテム使用」のUIが大きく改善されたほか、救助パスのコピー&貼り付け機能なども実装されています。「壺の中身を常時表示」「斜めボタンで壁沿いを歩く」など、ユーザーの遊びやすさをあらためて考え直した作りになっており、旧UIと新UIを選べる点も親切。開発元さん、GJです!




ところ構わず壺を暴投しまくる、うちのシレン

UIが極めて重要なゲーム

 シレン(ひいては「不思議のダンジョン」シリーズ)のおもしろさというのは、結局のところ(1)鍛え上げてきた装備やレベルが一瞬のミスですべて台無しになる残酷さと、(2)それを糧にプレイヤー自身が成長して何千回も繰り返し遊べる中毒性、に尽きると思います。

 この2つのポイントのどちらから考えても、UIや操作性というのは極めて重要な要素です。「1つのミスが命取り」という状況で、(ゲーム上の「判断ミス」ではなく)プレイヤーの意図せぬ「操作ミス」でそれまでの苦労が水の泡になってしまっては興ざめですし、快適な操作性抜きには何千回も遊べるはずがありません。

 しかしそんなことはゲームの作り手側も百も承知なはずで、だからこそ今回のスマホ版は「あのシレンを、スマホでどう快適に遊ばせてくれるのか?」というところに、ユーザーの注目が集まっていました。

 UIというのはかなり広い概念ですから、今回は特に重要な2つに絞って話を進めてみます。その2つとは、「マップ移動」「アイテム使用」です。


ストレスフルなマップ移動

 まずはマップ移動について。今回のシレンは、画像のような「縦横斜め8方向の矢印ボタン」「ダッシュボタン」で移動する方式になっています。いわゆるスマホの一般的なローグライクゲームと大きく変わらない仕様と言えるでしょう。実際に触ってみると分かりますが、直感的に難しいところは特になく、「なるほど、こうきたか」とプレイ当初は思いました。



移動は8方向+ダッシュボタン式

 しかし遊んでいくと気づくのが、「斜め移動」「ダッシュボタン」に関する小さな(でも積もり積もるとかなり気になってくる)ストレスです。

 シレンを一度でも遊んだことのある人なら分かると思いますが、「斜め移動」はこのゲームにおいて非常に重要な概念で、SFC版などではL/Rボタンと組み合わせることで斜め移動限定にできるなど、細かい工夫が行き届いていました。

 ですが今回はそのような仕様はなく(画面が複雑になり過ぎるので理解はできるのですが)、「右上」を押したと思ったら意図せぬ「右」や「上」に動いてしまうことがよくあります。敵と隣接しているときにこれは致命的ですし、何よりマップ移動がしにくい! 直線的な通路+部屋で構成されている屋内ダンジョンなどはいいのですが、自然地形であるこばみ谷の低階層などでは、「ただ通路を歩く」ことがけっこうなストレスに感じることがあります。要は「ジグザグしづらい」のです。


(左)こういう真っすぐな地形は良いのだが、(右)こういう入り組んだ地形が地味に歩きづらい

 ダッシュに関しても同様で、ただ走るだけでなく「アイテムに乗る」という操作を頻繁に行うこのゲームでは、「通路ダッシュでダッシュボタンを使う」「部屋内で斜め1マス移動のためにダッシュをやめる」「落ちているアイテムに乗る(=拾わない)ためにダッシュボタンを使う」というように、ダッシュボタンを多用します。

 今回のダッシュボタンは、基本的には「1タップごとにダッシュとダッシュ解除を繰り返すトグル(切り替え)式」。結果的にものすごく小まめにこのダッシュボタンを切り替えてやる必要があります。

 一応、指を離すとダッシュ解除、となるトグルではない使い方もあるにはあるのですが、物理コントローラーのような「触れているときは常にダッシュ状態、離すと常にダッシュ解除」という仕様ではないようで(指を離してもダッシュ状態が維持されていることがある)、このあたりを完全に直感的に操作するのはやや難があるという印象です。



ダッシュボタンはトグル式。かなり小まめに切り替える必要がある

壺を暴投しまくるシレン

 次に、移動よりもさらに致命的だと思われるのがアイテム使用時のUIで、これに関しては各所のレビューなどでもユーザーからの嘆きの声が多数見られます。

 たとえば壺の場合、上からコマンドが「置く」「入れる」「投げる」「のぞく」とあるのですが、それぞれのコマンドが密集しているうえに小さいので、「入れる」を押そうとして「投げて」しまうことがけっこうな頻度で発生します。(もちろん端末の画面サイズにも左右されるでしょうが、「常にそういう危険性がある」と考えてください)



「入れる」を押そうとして、すぐ下にある「投げる」を誤タップしてしまう。スペース的には余裕があるので、各コマンドをもっと離すなどできるのでは……?

 壺にものを出し入れするというのは、ひとつの冒険中でも相当な回数を繰り返す作業なので(特に保存の壺)、筆者も今までに何度無意味に保存の壺を投げたか分かりません。初めて店の中で投げた壺が店主の後頭部にクリーンヒットし、たちまち倍速頭突きを食らって昇天したときには、さすがにしばらくの間スマホを手に虚空を眺めていました。

 各種アイテムの中で、操作ミスが起きたときに特にダメージが大きいのが壺です。拾ったおにぎりを入れておこうとした保存の壺、強力な装備を作ろうとした合成の壺、ゲットした喜びのまま剣盾を突っ込んだ強化の壺、全部投げます。パリーンという乾いた音とともに、貴重な壺が粉みじんになったときの感覚は言いようのないものがあります。

 もちろん杖でも巻物でもこの種の問題は起こります。「置く」がなぜかコマンドの一番上で、「飲む」「読む」「振る」などのいわゆる「使う」系コマンドが一番下なのは疑問ですし、しかもこれが壺の中に入っているとコマンドの順番が変わります。


(左)杖のコマンドは「置く」が一番上、「振る」が一番下。(右)ところが壺の中に入っている杖だと、「振る」が一番上、「置く」が一番下になる


App Storeのトップレビュー

 もちろん(過去作の仕様に倣ったなど)何か意図があってのことなのかもしれませんし、すべてのユーザーを満足させるUIが存在するとも思いませんが、これが「スマホで遊ぶ最大公約数のUIである」とはちょっと考えづらい部分があります。いちいち確認ウィンドウを出すなどはゲームテンポが悪くなって論外でしょうから、各コマンドの間隔をもっと広くしたり、大きさを変更したりなどで対応できないものか……と感じています。



あっ


そういう「理不尽」はいらない

 シレン(不思議のダンジョンシリーズ)というのは、そもそもが理不尽なゲームです。このシリーズを愛しているのは、ある程度その「理不尽さ」をも愛している屈折したプレイヤーばかりだと思っています。

 ペケジに殴り殺されてもいいんです。大型地雷を踏んだすぐ横にエーテルデビルが潜んでいて、残りHP1を削り取られてもいいんです。転び石でばらまいた未識別の壺がうっぷんばらしで、貴重なアイテムごとまるっと消滅したっていいんです(いやだけど)。それがゲーム性というものだから。そういうゲームをやっているのだから。

 でも、意図せぬ操作ミスはそれとは違うんです。そういう理不尽さはいらないんです。いろいろ書いたけれど、ゲーム自体はやっぱりおもしろい。せっかく買ったこのゲームを遊びつくすためにも、スパイク・チュンソフトさん、もう少しなんとかなりませんか……と、今日もフェイの最終問題に潜りながら思うのです。


追記

 と書いていたら記事執筆日の3月26日、初のアップデート(v1.0.2)が配信されました。軽微なバグの修正がメインのようですが、リリースノートには「今後も不具合修正およびUI改善のアップデートを予定しております」と書かれています。本気で期待しております。


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