1994年に起きたゲームハードのシェア競争で、セガサターンを勝たせたい――。切実な思いを抱いて何度も時を超え、セガ社員への転生を繰り返す漫画がせつないと話題です。悲壮感と情熱が入り交じった、セガファン必見の物語。
熱烈なセガファンの主人公・加瀬は、重度の引きこもり。「俺が部屋から出ない限り、永遠に1994年のままなのさ」と称し、セガサターンが順調なスタートを切った当時のつもりで遊び続けています。
すると、とんがり頭の「セガサターンの精」が本体から出現。「プレイステーションに負けないよう、サターンを救ってきて!!」と、加瀬を25年前の世界へ飛ばします。
こうして時空を超えた加瀬は、1994年当時のセガ社員として転生し、セガサターンが覇権を取る世界を目指して歴史の改変に挑むことに。社会経験の薄さから大きなことはできなかったため、「ファイナルファンタジーがプレステに出てしまう前になんとかしないと」「ソニック・ザ・ヘッジホッグを出さないと」などと、ゲーム史の知識をもとにセガ社員へ進言します。
しかしセガサターンの立ち上げが好調だった当時、いくら危機感をあおっても聞き入れる者は皆無。乱心したとみられた加瀬は、退職を余儀なくされるのでした。
しかし加瀬の望みはこれで終わりません。セガが勝つまでセガサターンの精に94年へ飛ばされ、ループを繰り返すことになった彼は、まずサラリーマンとして満足に働けるよう、転生を100回以上繰り返して仕事の基礎を自分にたたき込みます。
成長した彼は、ライバル陣営に対抗した広告戦略など、大規模なプロジェクトを提案できるほどの立場に。しかし独特なセンスや社風のせいなのか、企画は意図通りに進まず頓挫してしまいます。それでも諦めずに転生して再挑戦。「コストダウンしやすいハードウェア設計」「史実では物別れに終わったセガ・バンダイの合併に尽力」「規模の大きすぎるプロジェクトを止めて予算を他に回す」など、思いつく限りの手を尽くします。
しかし、策はことごとく失敗。「1994年以前から手を打たないことには、競合に勝てない」と悟り、絶望感に打ちひしがれた加瀬は、とうとう「何回やってもサターンを救えないんじゃ……」と、力なくつぶやきます。
その瞬間、ある先輩が加瀬の言葉を聞き逃さずに呼び止めました。「お前何回目だ?」と。なんと、先輩は1677万回転生してきたという、転生者としての先輩でもあったのです。
彼が言うには、セガ社員への転生者はほかにもたくさんおり、「バーチャファイター」と「ファイティングバイパーズ」をメガミックスした者や、新ハードの夢に賭けた者など、さまざまな挑戦があったとのこと。しかし、そのどれもが失敗し、敗北は回避できなかったといいます。
「セガの勝利を諦めた者たちはどうしたのか?」との問いに、先輩は「ただのファンに戻ったんだよ。どうしてセガファンが独特の雰囲気を持っているのかわかるかい?」と回答。そう聞いて、加瀬は全てを理解しました。熱烈なセガファンの正体は、何度も転生を繰り返してきた者だったのです。
「転生を繰り返し、自分にとって一番楽しかったころのセガを楽しめばいいじゃないか」――。そう説かれたとき、加瀬の目は晴れやかに。そして彼は、「セガサターン、シロ!」の言葉を胸に駆け出します。行き先はきっと、最愛のゲームを永遠に楽しみ続ける人生。もしかしたら1ページ目につながっているのかもしれません。
作者の左藤真通(@reu_reu_)さんは、『将棋指す獣』の原作や『アイアンバディ』を手がける漫画家。同人活動ではセガサターンへの思い入れを描いたエッセイ漫画『第六惑星から』を著しており、一部をpixivで公開しています。
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