カラーコーン、パイロン、三角コーン――。誰もが一度は目にしたことがあるであろう、あの赤いヤツのことですが、インターネットの世界においてはある著名な漫画家を指す用語として知られています。今回はそんな漫画家「やしろあずき」先生からカラーコーンをレンタルしてみた様子をドキュメント形式でお届けします。
実録ドキュメント「やしろあずきにカラーコーン借りてみた」
第一章:どうしてもカラーコーンがいる
なぜやしろあずき先生にカラーコーンをお借りしたか――。時は2019年2月1日にさかのぼります。
この日、欅坂46の公式サイトにおいて、8枚目のシングル表題曲となる「黒い羊」という楽曲のミュージックビデオ(MV)が公開されました。
立入禁止テープで囲まれた事件現場というセンセーショナルな場面からスタートする本MVは、家庭問題、いじめ、職場トラブル、SNSの在り方など、現代日本が抱える問題点を5分37秒に集約したような一作。本作でセンターを務める平手友梨奈さんを中心に、突き放したり抱きしめたり、共存したり対立したりという“人と人との関係性”を全編を通してコンテンポラリーダンスで表現しています。
公開から間もなく、全編ワンカメラ・ワンカット風の演出になっていることや、作中の表現を巡ってSNS上でもさまざまな考察がなされた本作ですが、ねとらぼの姉妹チャンネル「ねとらぼGirlSide」で「ロケ地探訪」という企画を担当しているライターズユニット「SKM21」も「黒い羊」の話題で持ちきりに。「次回のロケ地探訪は『黒い羊』にしよう」と準備を始めることとなりました。
当初は従来のロケ地探訪と同じく、「スチール撮影をメインに」と考えていましたが、打ち合わせを重ねるごとに、今回の作品は“メンバーの動きが重要な意味を持つ”という点について何度も議論し、最終的には「SKM21メンバー4人でMV完全再現動画を撮影することに挑戦」すると決断。夜な夜な集まってコンテンポラリーダンスを練習したり、撮影に使用する「祭壇」「写真立てを置く棚」といった小道具を作り始めました。
しかし、私達では何をどうしたって作れない、重要なアイテムがありました。それはカラーコーン。本MVがスタートする事件現場に登場するカラーコーンはなくてはならない、重要なアイテムです。
「カラーコーンだ。カラーコーンがいる」。この日から私達はカラーコーン探しに奔走することとなりました。
第二章:カラーコーンは安い。送料はバカ高い。
皆さんはカラーコーンっておいくらぐらいのものだと思いますか。実は1つ250円から500円位なのです。今回はMVと同様に6つ欲しいわけなので、最安値で買えばだいたい1500円と非常に安価です。
筆者もウキウキでネット注文しようとしたのですが、最終注文画面で震えました。送料が1つあたり1300円ほどかかるのです。カラーコーンが6つで1500円。送料が7800円。合わせて9300円。高っ……! 無理っ……!
今回のロケ地探訪では行き帰りの交通費やガソリン代、小道具の製作費、その他もろもろを7600円以内でなんとかしなくてはならないのに、カラーコーンだけで予算がぶっ飛ぶことになります。
正直に言うと「ロケ地探訪」の企画は大体赤字で、SKM21メンバーが「取材させてもらえるだけでもありがたいこと」と自腹を切って撮影しているところがほとんどなのですが、さすがにこれはまずい。ということで、今度はカラーコーンをレンタルしてくれる業者さんを探すことになりました。
第三章:「カラーコーン レンタル」で検索
早速インターネットの大海原で「カラーコーン レンタル」と入力して検索してみます。するとあるわ、あるわ。イベント系の会社だったり、ガチの工事業者だったり、さまざまな企業(人)がカラーコーンレンタルをしまくっています。
お値段は1つ80円から400円程度と新品よりはややお安めです。あるレンタル会社の場合は、送料が片道2300円でおまとめ発送も可能。またあるレンタル会社の場合は近隣まで片道送料3000円で来てくれるというものもありました。
しかし何を隠そう送料は“片道”。持ってきてもらえば往復で6000円+レンタル代1200円+税。つまり引き取ってはくれるけれども新品を購入するのと変わらないのです。これはいかんぞ、いかん。別の方法を探さなくては、そう思って「カラーコーン 安い」で検索しようと、「カラーコーン や」と入力したそのときでした。サジェスト1番目にさっそうと「カラーコーン やしろ」の文字が現れたのは。
第四章:「カラーコーンについてのお尋ね/ねとらぼ編集部と申します」
カラーコーンといえば、やしろあずき先生――。何でこんな単純な(失礼な)ことを忘れていたのか。
しかし、やしろ先生といえばTwitterでバズりまくりの日常漫画を描かれている著名な漫画家です。2016年にはねとらぼエンタでインタビューを行ったほか、2017年にはねとらぼでも「やしろあずきの○○」という連載を担当していただいたこともありますが、それも今は昔の話。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの漫画家業の傍ら、複数の企業の役員を務めるなど、“大変!ご多忙お兄さん!”状態でいらっしゃるのです。
連絡がつくのかどうかも分からぬまま、取りあえず「カラーコーンについてのお尋ね/ねとらぼ編集部と申します」という意味不明すぎるタイトルのメールを送ってみました。すると翌日やしろ先生ご本人から「件名を拝見して、三角コーン案件がきたか…!と思いました」というメールが到着。あれよあれよの間に企画を面白がってくださったやしろ先生のお宅にお邪魔することとなりました。
第五章:きなこのおもちゃは「カラーコーン」
突然のメールから3日後。やってきたのはやしろ先生の職場兼ご自宅という超高級タワーマンションです。指示通りに高層階用のエレベーターに乗ってインターフォンを鳴らしてみると、やしろ先生と愛犬のきなこちゃんがお出迎えしてくれました。
「ちょっと仕事が押しているので、良かったらきなこと遊んで待っていてください〜」と通されたリビングに足を踏み入れた瞬間、異様な光景に息をのみました。超高級タワマンの中心にどっさりと積まれたカラーコーンが鎮座しているのです。少なくとも15個はあるし、赤色だけじゃないし、その後ろにはカラーコーンバー(カラーコーンをつなぐ棒)があるし。情報が多い……。
しかしビックリしているのは私だけで、やしろ家の一員になったときからお家にカラーコーンがある環境で過ごしてきたきなこちゃんは、「遊ぼ〜!」とはしゃぎモード。すごくかわいいので、カラーコーンのことは忘れていったんおもちゃで遊ぼうかなと思った瞬間、きなこちゃんが持ってきたのはペット用のぬいぐるみカラーコーンでした。君もカラーコーン信者なのか……!
第六章:「今欲しいのは黒のカラーコーン」
何もかもにカルチャーショックを受けていると、やしろ先生が「お待たせしました〜」と戻ってきました。ここからはやしろ先生にひたすらカラーコーンのことばかりを聞きまくったインタビューをお届けします。
――カラーコーンが代名詞のやしろ先生ですが、そもそものきっかけは何だったんでしょうか。
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