地球には、“宇宙よりも遠い場所”があります。
南極を目指す女の子たちの姿を描いた名作「宇宙よりも遠い場所」(関連記事)を知っている人ならばどこかご存じですね。「南極」です。
南極はこの作品の聖地。中には実際に南極まで行ってしまった気合い入りまくりな人もいるようです。聖地巡礼、登場人物の舞台となった群馬県館林市ならばともかく、南極となると……軽く死ねますね。
でも、千葉県船橋市ならばどうでしょう。船橋港にも聖地があります。それが作中に登場する南極観測船「ペンギン饅頭号」のモデルとなった砕氷艦、「SHIRASE 5002」(以下、しらせ)です。
3代目南極観測船「しらせ」とは
しらせは1983年に就航した、海上自衛隊が運用した3代目南極観測船です。2代目の南極観測船「ふじ」が輸送能力不足に悩まされたことから、しらせはかなり大型の艦でした。全長134メートル、全幅28メートル、基準排水量は1万1600トン。その大きさは建造当時、海自の艦の中でも最大だったほどです。主な任務は南極観測隊の隊員および物資の輸送ですが、観測機器を搭載し、南極での観測活動も行っていました。
就航から25年間、しらせは南極観測船として日本と南極の間を25往復した後、2008年に後継艦「2代目しらせ」に役目を引き継いで退役しました。
しらせは退役後、解体される予定でした。しかし「スクラップにするのはもったいない」「南極観測の文化やチャレンジ精神を後世に伝えたい」とウェザーニューズが買い取り、同社が設立に関わった一般財団法人「WNI気象文化創造センター」によって南極観測および気象観測のシンボルとして活用することになりました。同時に2代目しらせとの差別化のため、ローマ字の「SHIRASE」に船名が変更されました。
2019年現在、しらせは千葉県船橋市の船橋港に係留され、見学やイベントから、宇宙よりも遠い場所(よりもい)のように各種メディア作品への撮影協力も行っています。
今回は、そんな宇宙よりも超近い場所にあったしらせへ特別潜入。“プチ”よりもい聖地巡礼を楽しんできました。
よりもい聖地「しらせ」に潜入
まず訪れたのが船の頭脳である「ブリッジ」です。
中央に舵、右手に艦長席、左手に副長席があります。しらせはスクリュープロペラを3軸備えていたため、それぞれのスクリューに対応した速力通信機も3連で並んでいました。
壁側にはヒーリングタンクの操作盤があります。ヒーリングタンクとは、左右のタンクに注水排水することで船体を左右に揺らす装置。周囲を流氷に囲まれた際に、周囲の氷を破壊して脱出するために使います。
これら装備のおかげでしらせは強力な航行能力を持っていまいた。それを端的に表すのが昭和基地への接岸回数です。先代のふじが昭和基地にまで接岸できたのが航行18回中6回しかなかったのに対し、しらせは同25回中24回も成功しています。
もちろんそんなしらせでも、南極への航行は想像を絶する困難がありました。作中で南極へ向かう途中の海模様を「吠える(南緯)40度、狂う50度、絶叫する60度」と形容していたように、南緯が上がるにつれて、つまり南極に近づくにつれて波荒れがひどくなります。
そのすさまじさを表すのが、船の傾きを示す動揺記録。しらせは2001年の航海で、左に最大53度、右に最大41度も揺れた記録が残っています。53度も傾いたなんて、ほぼ真横やんけ……。
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