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監督デビュー作品から「さらざんまい」まで 事件的才能とアートワークを堪能できる「幾原邦彦展」レポ

イクニワールドをソラマチで。【10月17日/京都会場の情報を追記】

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 「尻子玉搾取」「カワウソイヤァ!」――癖になるせりふ回し、カラフルで奇抜な映像演出、そして一見素朴に見える少年たちが隠している「欲望」……。独特過ぎる世界観で話題になっている、今期放映中のアニメ「さらざんまい」。

 同作を深く楽しみ、そのルーツを知ることができる「幾原邦彦展 〜僕たちをつなげる欲望と革命の生存戦略〜」が、現在、東京ソラマチ スペース634(東京都墨田区)で開催されています。同作の監督をつとめる幾原邦彦さんにフォーカスし、その30年以上のキャリアを振り返る特別展です。

幾原邦彦展幾原邦彦展 「幾原邦彦展」が東京ソラマチで開催中。左:告知用ビジュアル、右:メインビジュアル

 東映映画(当時・東映アニメーション)で「美少女戦士セーラームーン」シリーズなどに携わり、「少女革命ウテナ」で、90年代のアニメファンに未体験の衝撃を与えた幾原監督。これまでも「少女革命ウテナ TVアニメ放送20周年記念展」など、作品を中心に据えた展示は開催されていたものの、監督自体を扱う展示は今回が初めて。「さらざんまい」からイクニワールドを知った人も、長年イクニファンだった人も、両方が楽しめる内容になっています。

 ゲートをくぐり会場へと進むと、まずは歴代の幾原作品の関連ポスターが勢ぞろい。期待が高まるなか歩いていくと、「幾原邦彦展」のタイトルがバーンと目の前に現れます。

幾原展
作品展ではなく、監督展は初めて。これまで手掛けた作品を通して見ることができます
幾原展
歴代の作品ポスターが勢ぞろいした先には、サインの入った「幾原邦彦展」のタイトルが!

 添えられた監督直筆のサインに興奮しながら、メインエリアへ。場内は大きく2エリアに分かれており、前半では、幼少期から青年期、東映時代の仕事の紹介が展開されます。「アニメーションの世界において…(中略)…絶えず時代意識と呼応し、事件と呼べる出来事と向き合ってきた作家は他にいません」という力強い展覧会序文にグッと感じ入り、横に目を向けると、壁一面を使っての「年表」展示が。幾原監督の半生、各作品の発表年度が、同時代の時事的な出来事とともに紹介されており、単純にキャリアを知れるだけでなく、監督が触れてきた作品や時代のにおいが読み取れる構成となっています。

 前半エリアを埋め尽くすのは、東映時代の絵コンテや、映画「美少女戦士セーラームーンR」のセル画、「ウテナ」構想初期の制作ノートといったアートワーク……だけではありません。現在にも通じる面影を持った若き日の写真の数々や、高校時代に描いていた漫画の原稿、影響を受けたという映画作品も、ずらりと展示。ひとりの人間としての「幾原邦彦」が、濃厚な密度で浮かびあがってくる内容で、監督の頭の中をのぞかせてもらっているようなドキドキ感が止まりません。

 「ファビュラス!」と叫びたいくらいの満足感にひたったところで、後半エリアへと進むと、そこからは作品を中心に据えた展示群がスタート。

幾原邦彦展
作品展示コーナーには「奇跡」「罪」といった垂れ幕が

 「ウテナ」ほか、「輪るピングドラム」「ユリ熊嵐」「ノケモノと花嫁」……、監督が東映独立以降に手がけ、数々のファンを魅了してきたオリジナル作品が目白押しです。天井には、「革命」「罪」「壁」「欲望」と、それぞれの作品を象徴するキーワードを配した垂れ幕も。人間としての幾原邦彦から、作品としてのイクニワールドへと、自然と意識が切り替わります。

 制作ノート、キャラクター設定表、絵コンテ、原画……過去の作品展で観た時も「贅沢だなあ……」「最高すぎる……」と思った資料の数々が、作品横並びで展示されることで、贅沢感も最高感もさらにパワーアップ。キャラクターも、線の強弱も、色彩設計も、世界観も、作品ごとにしっかりと練られていることを実感しつつ、前半で垣間見た監督の美学を通じて、すべての作品に通じる「つながり」を見出そうと試みるうちに、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

 もちろん、「さらざんまい」関連の展示も見逃せません。監督自らが描いた尻子玉搾取の初期ラフや、レオとマブの「カワウソイヤァ!」な絵コンテなど、垂涎ラインアップが盛りだくさん。そして何と……リアル人力車に乗って、劇中の“ケッピ人力車”シーンを再現できるフォトスポットまで!

幾原展
ケッピ人力車に乗れるフォトスポットにテンションが上がります

 初日だけで1000人以上が来場したという本展示。すべての作品に通底する幾原監督の「時代意識」に深く感じ入り、一人で噛みしめるも良し、「この作品まだ見てなかったけど、おもしろそう!」「ウテナのTV版と劇場版ってどう違うの?」と同行者と盛り上がるのも良し。広い間口でどこまでも深く楽しめる展示で、むしろ「イクニ歴」が違う人間同士で語り合うのも面白そう、と思わされました。

 観終わった後は、浅草の街に繰り出して、作中スポットの「聖地巡礼」をするのも一興。物販コーナーで販売している「SNS風アクリルキーホルダー」を購入して臨むと、グッと楽しくなりますよ!

幾原展
左から展覧会図録(1998円)、SNS風アクリルキーホルダー(1080円)

「幾原邦彦展 〜僕たちをつなげる欲望と革命の生存戦略〜」

幾原邦彦展

会期:2019年4月27日(土)〜5月6日(月・振休)10:00〜17:00 ※最終入場は各日閉場の30分前まで

会場:東京ソラマチ スペース634

料金:当日券2200円

主催:「幾原邦彦展」実行委員会

京都で開催!(10月17日追記)

 「幾原邦彦展 〜僕たちをつなげる欲望と革命の生存戦略〜」が、京都・大丸ミュージアムで10月16日〜21日に開催されています。

 京都会場でも、東映動画(現・東映アニメーション)時代に監督を担当した映画「美少女戦士セーラームーンR」の原画、セル画約50点を展示。また、春の東京ソラマチでの展示から、一部展示資料を追加。京都会場からの新商品や、9月に開催した「さらざんまい展」のイベント記念商品も購入できます。

 当日券2200円、限定グッズ(イベントオリジナルタンブラーグラス)付き当日券が3700円。営業時間は10〜20時です(最終日21日は17時まで。最終入場は閉場の30分前まで)。

幾原展
京都会場のメインビジュアル
幾原展
京都会場の入り口の様子
(C) 1997 ビーパパス・さいとうちほ/小学館・少革委員会・テレビ東京
(C) 1999 少女革命ウテナ製作委員会
(C) イクニチャウダー/ピングループ
(C) 2015 イクニゴマモナカ/ユリクマニクル
(C) イクニラッパー/シリコマンダーズ

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