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「腐女子、うっかりゲイに告る。」 “普通”とは何かを問いかける3話 「敬愛するフレディを、声のいい気持ちの悪いゲイのおっさんだと思ってたのかい?」が突き刺さる

肉まんを揉んで女体に慣れるトレーニング……主人公がゲイだとこんなに切ないシーンに。

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 ゲイは世間体のために女性を抱けるのか? よるドラ「腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。」(NHK総合・土曜23時30分〜)第3話。

 ゲイだけど、普通に結婚をして家庭を築きたいと願っている安藤純(金子大地)は、ゲイとは知らずに告白してきた腐女子・三浦紗枝(藤野涼子)と付き合うことに。晴れて「普通の」交際をスタートした純だったが、今度は「普通とは何か」という問いがはじまる。


腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。 純は、ゲイとは知らずに告白してきた腐女子・紗枝と付き合うことに イラスト/北村ヂン

ゲイが結婚してもコウモリになるだけ

 紗枝を騙し、自分の気持ちもごまかしてまで「普通」を追い求めている純。しかし、その「普通」が何なのかはイマイチ分かっていないようで、同性愛者の仲間たちに「彼女ができた」と告白して意見を求めていく。

 カフェバー「'39」(これもQUEENの曲名から)を経営するレズビアンのイギリス人・ケイト(サラ・オレイン)は、同性愛者が生きにくい日本で、カモフラージュのために異性と付き合うことに理解を示しつつも、QUEENの曲「The Show Must Go On」を持ち出して、

 「あなたは ショーを始めてしまった。嫌になっても全部放り投げてセルフィッシュに舞台から降りる真似は許されない」

 と釘を刺す。

 チャット仲間のミスター・ファーレンハイトは、「彼女ができたんだ。彼女とならと思うけど、自信がない。やはり普通のセックスは無理なのか?」という純に対し、「普通とは何だ?」と問い返す。

 「子孫繁栄のためが普通ならコンドームをつけて するセックスは? 男女でするのが普通なら80歳のおじいちゃんと13歳の少女のセックスは?」

 世間一般で「普通」とされている価値観が、こんなにあやふやなものだと突きつけてきた。

 純の恋人・佐々木誠(谷原章介)は、妻子がいるのに純と付き合っているという、カモフラージュ結婚の先輩であるだけに、実感がこもっていた。

 「僕はコウモリだ。ある時は異性愛者、ある時は同性愛者。そうやって自分を使い分けている。そういう卑怯なことをしてると嫌う人間も出てくる」

 純は異性と付き合い、「普通」を手に入れさえすれば幸せな人生が待っていると考えていたようだが、ゲイが自分を偽って普通の結婚をしたとしても、コウモリになるだけなのだ。


腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。 クラスのアホ男子たちにちょっと癒やされる イラスト/北村ヂン

肉まんをおっぱいに見立ててトレーニングするが……

 さて、肝心の紗枝が考える「普通の恋人」の定義は「丁寧にあいさつし合える恋人」。コレも、あまり普通の女子高生は言いそうにない。腐女子であることを抜きにしても、まあまあ世間からズレている。

 数学の問題で妄想を繰り広げたり、はじめて男子の部屋に遊びに来たのに、ソッコーでエロ本を探しはじめたり。

 女だったら誰でもよかったわけではなく、そんな紗枝だからこそ、純も「自分を受け入れてもらえるのでは」と期待したのではないだろうか。

 紗枝に受け入れられるため、純も努力をしていた。エロ動画を見たり、肉まんをおっぱいに見立ててモミモミ揉んだりして、股間のセンサーが反応するかどうか試すという方法で。

 「勃てって……。勃て!」

 「パンツの穴」や「BOYS BE...」的なチェリーボーイ向けコンテンツで繰り返し描かれてきた、初体験に挑む男子の馬鹿トレーニングだが、主人公をゲイに置き換えるだけで、こんなに切ないシーンになるとは

 エロ動画のバックでQUEENの「Another One Bites the Dust(地獄へ道づれ)」が流れ、動画のウッフンアッハン声とリンクしてフレディ・マーキュリーが「ウゥ〜ッ、レッツゴー!」と言っていたのには笑ってしまったが。


腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。 ファーレンハイトの恋人が死んだ? コウモリな恋人(誠)との関係も変化してるし、そもそも紗枝とは? 展開が気になりすぎる! イラスト/北村ヂン

フレディは気持ち悪いゲイのおっさんなのか?

 肉まんモミモミ・トレーニングも空しく、実戦でも結局勃たずに失敗。紗枝も傷付けてしまったようだ。

 落ち込んだ純はファーレンハイトに「僕は普通にはたどりつけない。永久に異常なままだ!」とぶちまける。自ら「ゲイ=異常」と言ってしまった。

 「君はどうして普通になりたいんだ?」と問うファーレンハイトに純は、

 「家族が欲しい。母さんを悲しませたくない。みんなから気持ち悪いって思われたくない。自分を気持ち悪いって思いたくない」

 他人の目どうこう以上に、自分自身がゲイである自分のことを「普通じゃない」「気持ち悪い」と思ってしまっていたのだ。

 それに対するファーレンハイトのアドバイスがメチャクチャ的確だった。

 「ジュン、ボクは気持ち悪いかい? 君は君の敬愛するフレディを、やたらと声のいい気持ちの悪いゲイのおっさんだと思いながら彼の曲を聴いていたのかい?

 ゲイである自分を否定するということは、ゲイ仲間や憧れのフレディ・マーキュリーを否定することになってしまう。

 純の自己肯定感が低い原因のひとつには、既婚者なのに小ずるく純を利用している恋人・誠の存在もあるんじゃないかと思われる。

 コウモリなんかより、ファーレンハイトのようなナイスガイと付き合ってれば……と思っていたら、最後にスゴイことが明かされた。ファーレンハイトの「彼」が死んだという。

 ファーレンハイトの恋人は、HIVキャリアでAIDSも発症していたようだが、こんなに早く亡くなるとは。予想以上にシリアスな展開になってきた本作。今夜、一気にドラマが動きそうだ。

1話見どころ

2話見どころ

北村ヂン

文章からイラスト、漫画、映像まで、あの手この手でインターネットのみなさんのご機嫌をうかがうハイパーメディアライター

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