あの「チャージマン研」が舞台化する――。令和も始まったばかりの2019年5月、耳を疑うような情報がネットを駆け巡り、多くのファンが驚きの声を上げました。
「チャージマン研」といえば、知る人ぞ知るテレビアニメ。1974年に放送された同作は、泉研少年を主人公としたヒーローものでありながら、効果音のない戦闘シーン、耳に残る独特なせりふ回し、視聴者を置いてけぼりにするご都合主義な展開など、およそ5分半の尺にこれでもかと突っ込みどころがちりばめられており、2000年代に入るとネット上でカルト的な人気を獲得します。
ただでさえネタ要素の強い「チャージマン研」ですが、制作陣はいったい何を考えているのか、舞台では泉研が4人も登場することに。演じるのは、古谷大和さん、安達勇人さん、高崎俊吾さん(高は「はじごだか」、崎は「たつさき」)、中村誠治郎さんと、いずれも年齢やタイプの異なる俳優たち。どんな舞台を作り上げていこうと言うのか、稽古(けいこ)が始まったばかりの4人を直撃してみました。
―― 稽古は10月2日にスタートして(取材日は7日)、現場では既に笑いが起きているようですね。
古谷 めっちゃめちゃ笑えた!
安達 ねっ!
古谷 僕はゲラな方ではあるんですけど、本当に面白いと思わなかったら稽古場でも笑わないんですよ。僕だけじゃなくて皆さん笑っていらっしゃるから、楽しい作品になるんじゃないかと思うんですけど。どうですか?
安達 くすくすじゃないもんね。ゲラゲラ笑ってるから。
中村 台本も普通の台本とちょっと違って、面白いせりふが太字で書いてあったりするんで。
古谷 ないですよね、そんなの(笑)。
中村 僕らは目で見ているので、「あ、こういう意味ね」とか分かるんですけど、お客さんが聞いたときに伝わるのかなという不安もありつつ、やっていることはめっちゃシュールなんですけど皆本気でやっているので、そのギャップが面白いのかな。
古谷 確かに。
―― 泉研が4人もいますが、オファーが来たときはどう思いました?
中村 他のキャストさんの名前を見たときに、「年下が多いな」って思って。だから、年代別に分かれてやるのかと思ったんですよ。一番年上の研の役が俺なのかなって。でも、蓋開けてみたら「研坊」って呼ばれるし。俺、来年40(歳)なのに(笑)。
古谷 台本読んでも「研1」「研2」って書かれているわけでもなくて、全部「研」なんですよ。
中村 せりふ全部覚えなきゃいけないのかなって。
高崎 それ思いました!
安達 本読みの時点で分かんなかったですもんね。
古谷 こんなに読んで「分からないな」って思った台本は初めてで。その衝撃は初めてアニメを見たときと同じだったので、良い台本だと思います。これはまさに「チャージマン研」の台本だなって思えてうれしかったです。
中村 お客さんは度肝抜かれるんじゃないかなあ。4人の使い方ってこうなんだねーって。忠実にやっているところもあれば、良い意味で裏切るところもありますね。
―― 4人とも同じ役名ということで、お互いに意識し合うことはありますか?
中村 あんまりないかなー。
古谷 ないですね。どちらかというと、ダブルキャストのときの方が意識します。でも、今回は一緒に演技しているから……これ、若干ネタばれになりますけど、今のところ特別絡みはないです。
安達 あー、ないですね。
古谷 一緒にいるんですけど。ラストシーンに一瞬あって、舞台上で絡むのは唯一そこだけですね。だから意識するってことはない……かなあ。
中村 “四者四様”だもんね。全くタイプ違うし。
―― いざ出演が決まって、周りからの反響はどうでしたか?
古谷 結構、大きかったですね。
中村 相手の方から言われますね、「え、チャー研出るの?」って。
高崎 言われます言われます。
安達 言われますよねー。普段、連絡来ないような人からも来ましたからね。他の舞台だと特に言われることはないんですけど、舞台関係の方からも「チャー研出るんでしょ?」って言われたり。すごいなチャー研って。
高崎 二言目には、「え、大丈夫?」って言われるけど(笑)。
古谷 恥ずかしながら、僕はオファーが来るまで作品を知らなくて、反響がすごかったんで、かなり世に知られている作品なんだなって。プロデューサーさんから話をもらったときは、これはなんなんだって感じだったんですけど、そういった反響があったことで「すごい作品なんだな」って思うようになりました。
―― 舞台には歌やダンスのパートもあるとか。
安達 “ライブ演劇ミュージカル”ですからね。取りあえず、全てを入れちゃおうと。
中村 ト書きがふざけてますよねー。「無意味なアクションパート」とか(笑)。
古谷 いかにト書きを忠実に再現するかみたいなところが、挑戦だと思いますね。
高崎 チャー研のちゃっちさみたいなのも、舞台セット含めて表現をしているところですね。
―― 2.5次元舞台というと、プロジェクションマッピングのような最新の演出技術を取り入れた作品をよく見ますけれど、チャージマン研は逆の方向に走ってますよね。
中村 そこら辺の感じは、中学生が学校で演劇やっているのとあまり変わらないかもしれない。
古谷 そこだけ見ればね(笑)。それを、素晴らしい役者の皆さんや一流のスタッフさんが集まって、本気でやったときに生まれるものを見てもらいたいですね。
―― どこか「勇者ヨシヒコ」に通じるものがありますね。
全員 あー、確かに。
古谷 プロが集まって作るもの、ということで皆楽しみだと思います。お客さんたちだけじゃなく、僕らも「どうなるんだろう」って思っていますし。
―― 再現でいうと、「ボケ」の部分もどう演じていくのか気になります。
中村 ボケという概念は捨てました。
古谷 そうですね。
中村 言い方が悪いかもしれないですけど、作品自体が「ボケ」になっているので、それを一生懸命に演じることで面白くなるんだろうなって。だから、ボケているつもりは一切ないです。原作のせりふを本気で言うだけで、たぶん面白いと思います。
―― 演出については、何か指示されたことはありますか?
古谷 まずは原作を忠実に再現できるように、研だけじゃなくて出演者は全員言われています。最初のシーンも大好きなんですよね。そこは僕らじゃないんですけど、本当にすてきなお芝居なので。
中村 あれ、芝居してんのかな……。
全員 (爆笑)
―― 誰の演技なのかは本番を見てのお楽しみということで(笑)。では、演じる上で大事にしたいことはありますか?
安達 ここ数日、どういうチャージマン研を見せればいいのかなって考えていたんですけど、そのまま真っすぐ芝居しようかなって。何か面白いことをする、笑いを狙う、僕はもともとお芝居自体もボケるタイプではなかったので今まで、ありのまま真剣にチャージマン研を演じる中で、シュールな笑いとかが生まれるんじゃないかなって思って。そこで4人の個性がミルフィーユのように重なってくる部分がたくさんあるので、ただの重なりも面白いですし、そこから不意に素晴らしい役者陣が出す、スパイスが生きる部分があるので、僕は正統派で思いっきりぶつけていこうかなって思います。
中村 俺から見ると、安達くんが「正統派」で、古谷くんが「生き写し」で、高崎くんが「ボケ」。俺はチャー研だけど、「大人の魅力」だから(笑)。
古谷 そうですねー、かなり大人ですもんね(笑)。誠治郎さん、うまいこと使い分けててどちらに転がってもすてきだと思うんですけど。年相応の「チャー研のかっこうした誠治郎さんやん!」みたいなのと、すっごい若い原作通りの泉研をやっている芝居の両方を稽古場で試してますよね。
中村 両方やろうかなと思ってる。「大好きさっ☆」(少年ボイス)って言ったり。
古谷 それに負けないように若い僕らもやっていきたいですね。かなりインパクト強くて、チャージマン研のかっこうをしているだけで既に面白いんで。
―― では最後に、舞台を見に来る人たちに一言お願いします。
高崎 LIVEミュージカル演劇ということで、見に来る方は何が何だか分からないことと思いますが、正直僕たちも台本をもらって稽古をしている段階でもよく分かっていません。よく分からないからこそ出せるチャージマン研の魅力みたいなものを、舞台上で表現して、人間の僕たちが演じる生身のチャージマン研の良さを出したいと思っています。
安達 舞台を見に来てくださいというよりも、「チャージマン研」(という作品そのもの)を見に来てくださいという感じで。普段の舞台を見るのとは違った、アトラクションって言ったら言い過ぎですけど、また新しい楽しみ方がたくさん、このチャージマン研をきっかけに切り開かれるんじゃないかなと思っています。ぜひ、もう何も考えず見に来ていただけたらと思います。
中村 こういう作品だと、皆笑いに来ようと思って見に来てくださると思うんですけど、すげーって感動してもらえるような作品にしたいと思っています。舞台の使い方も、普通の舞台と違って、「コロシアムバージョン」とか新しいことにチャレンジしているので、安達くんが言ってたように遊園地に行くような感じで来ていただいて、感動させたいなと思っています。
古谷 とても反響が大きい作品で、おそらく役者のファンとか演劇のファンだけじゃなく作品が好きで舞台を見たことがない方もいらっしゃるんじゃないかなと思いますし、来ていただきたいと思える作品ですので、普段舞台を見ないような方も、舞台ってすてきだなと思ってもらえたら。役者が好きで見に来ていただいた方は、チャージマン研の世界を知っていただいて、双方にすてきなものが生まれるような作品になったらいいなと思います。
あとは、常々いろんなところで聞きますし僕も言ってきましたが、今までにない舞台なんて言葉は本当にこのためにあるんだなと。散々言われてきましたけど、チャージマン研は僕が知る限りで今までにない作品になると思いますので、ぜひ不安と期待を抱いて劇場に足を運んでいただけたらと思います。お待ちしております。
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公演情報
公演名:LIVE ミュージカル演劇『チャージマン研!』
公演日・会場:2019年10月31日(木)〜11月6日(水)新宿FACE
演出:キムラ真(ナイスコンプレックス)
脚本:伊勢直弘
音楽:手島いさむ
企画・製作:CLIE
出演:
チャージマン研(泉研)役:古谷大和、安達勇人、高崎俊吾、中村誠治郎
泉キャロン 役:星元裕月
バリカン 役:阿部快征
ジュラル星人 役:浜ロン
魔王 役:村上幸平
<ジュラル星人>
足立雲平、榎 太誠、坂下陽春、菅野周平、前田航希、牧 亮佑、溝下 翼
泉 博 役:篠原麟太郎
声の友情出演:藤原祐規
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舞台の脚本・演出は、アニメ版を手掛けた高羽彩さんが担当しています。