黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、詐欺・悪質商法ジャーナリストの多田文明が出演。人が詐欺に騙される理由について語った
黒木)今週のゲストは詐欺・悪質商法ジャーナリストの多田文明さんです。代表的な著書に『ついていったら、こうなった』、『クリックしたら、こうなった』、『なぜ、詐欺師の話に耳を傾けてしまうのか?』などの著書がありますが、多田さんは実際にご自分が騙されて、そこから「こういうところで騙されてはだめです」という活動をなさっているのですか?
多田)そうですね。この勧誘の先に何があるのだろうと思ってはみても、その勧誘のすべてに行かれる方はほとんどいないと思います。結局、手口を知らないからみんな騙されてしまうのですよ。
黒木)はい。
多田)ですので、その手口を教えるために自ら、悪い業者から罵詈雑言を浴びせられながらルポをしています。
黒木)命がけではないですか。
多田)いや、そうでもありません。この仕事は途中で「いかに逃げるか」なのです。危ないと思ったら逃げないといけません。
黒木)はい。
多田)多くの人は、最後まで話に付き合ってしまうのです。それでお金を払ってしまう。お金を払う前に手口を知ったら、まあ逃げる。この辺がちょっと難しいのですけれどね。
黒木)最新刊に『だまされた!』という本が方丈社から出ています。ここに「騙されないと思っている人ほど騙される」と書いてありますが。
多田)そうですね。「騙されない」と思っていることには、根拠があるのかという話です。
黒木)私の性格だと、すごく猜疑心が強いので、多分騙されないだろうなとは思っているのですが、それもダメですか?
多田)そうすると、その人は騙せなくても、その人が信頼している友人や知人、親、兄弟。そこから騙すのです。例えば誰の話ならば信用しますか?
黒木)家族とか。
多田)ですよね。そうすると詐欺師はまず、家族を狙います。家族の1人が「これ、いい話だよ。この人はいい人だよ」と言って、みんなを巻き込んで黒木さんを騙す、という方向に持って行くと思われます。
黒木)なるほど、そうなのですね。いまはどんな詐欺が増えているのですか?
多田)高齢者が狙われる詐欺が非常に多いです。以前ならば、振り込め詐欺はご存知ですよね。ATMからお金を振り込ませる詐欺です。そういったことはみなさんもう知っています。詐欺師も知っています。
黒木)はい。
多田)ですので、詐欺師はもうATMでお金を振り込んでとは、ほとんど言いません。
黒木)もう言わない。どうするのですか?
多田)いろいろと手口が変化していますが、その次に出たのが「お金を郵送してください」というものです。郵送もだめになると、今度は受け取り型というものが出て来ました。直接家にお金を取りに来るものです。オレオレ詐欺だと息子になりきりますよね。それで息子の同僚だよと言って、家に来てしまう。
黒木)それは、お金を渡す前提ではないですか。
多田)そうです。
黒木)「渡そう」と思う過程というのは、どのようになっているのですか?
多田)最初にいろいろなパターンがあるのですが、例えば息子になりきって「もしもし俺だけど」と言われて、「○○かい」と息子の名前を言ってしまう人もいます。もう息子だと信じていますから。
黒木)いつも不思議に思うのですが、声でわかりそうなものだと思うのですよ。
多田)みなさんそう言います。ところが声というものは携帯電話もそうですが、正確に息子の声として伝わっていないのですよ。甥とかお孫さんがいたとしたら、電話がかかって来てもそれが本人かどうか、なかなか確認が取れません。そこから「いや、実はね」と、お金が必要な話になって来るのです。
黒木)まず、「お金が必要だ」という話で疑わないといけないですよね。
多田)本当はそうですね。ただ、やはり優しい人がよくいるのですが、おじいちゃんおばあちゃんです。偽物の孫から電話がかかって来て、「実は親にも言えなくて、困っているからお金を50万円貸してほしい」と言われる。
黒木)うんうん。
多田)「それはしょうがないな」と言って、おじいちゃんが新幹線に乗って、熱海で100万円を渡したというようなことが多いのですよ。そういう気持ちを利用しながら、上手く近づいて来ます。
多田文明(ただ・ふみあき)/ 詐欺・悪質商法ジャーナリスト
■1965年、北海道旭川市出身。
■大学卒業後、ルポライターとして活動をはじめ、2週間に1度は勧誘されるという自らの経験を活かし、キャッチセールスの評論家に。
■実際にキャッチセールスや詐欺行為など怪しい勧誘について行き、その現場を経験。これまでに街頭からのキャッチセールス、アポイントメントセールスなどへの潜入は100ヵ所以上で、現在は詐欺・悪質商法、ネットを通じたサイドビジネスにも精通するジャーナリストとして活動。
■代表的な著書は『ついていったら、こうなった』『クリックしたら、こうなった』『なぜ、詐欺師の話に耳を傾けてしまうのか?』などがある。
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