「お子さんにおいしいものをお腹いっぱい食べさせてあげたいのに ご事情があってむずかしいときなどは コソっと店長に相談してください」――奈良市のとんかつ店・まるかつ(@marukatsunara)さんは、お金を払えない方に向けた無料食堂の取り組みを2018年5月より続けています。
さまざまな事情を抱えた330人以上の方が無料食堂を利用するなかで、Twitterに投稿されたとあるエピソードが「良いことが連鎖する世界!」「心あたたかくなりました」と話題です。
ある日、財布をなくした長距離トラック運転手さんが「無料食堂を利用したい」と遠慮がちにお店を訪れます。いつものように食事を提供したまるかつさんは、「困ったときはお互いさまですので、遠慮なくご利用ください!」とその日あったことをツイートしました。
すると後日、他のトラック運転手さんが家族連れで来店。無料食堂を利用した方との面識はないにもかかわらず、「仲間が助けてもらったお礼」と言って、たくさん料理を注文してくれたそうです。義理堅い人だ……!
無料食堂の取り組みについて、まるかつさんに話を聞いた
――なぜ無料食堂を開設したのでしょうか?
まるかつ 無料食堂をスタートした2018年5月は、売り上げが以前よりも安定し、赤字続きだったお店の将来に光が差した時期でした。そのような折に、貧困や虐待のニュースを目にしたのです。
特にゴールデンウィーク期間中はたくさんのお客さまに揚げ物を召しあがっていただけた一方で、日々の食事もままならない子どもたちを思うと胸が痛みました。
そこで自分にできることはないかと考え、2018年5月4日に「まるかつ無料食堂」のポスターをお店の外に掲示しました。
――活動を始めるにあたり、悩みや葛藤はありませんでしたか?
まるかつ もちろん勇気が必要でした。一般のお客さまが困惑するのではないか……と不安だったのを覚えています。
背中を押してくれたのは、2018年2月の出来事です。豪雪被害に見舞われた北陸地方の方に向けて「大変だと思いますがどうかご無事で。雪があけて奈良に来ることがあったら全メニュー半額にします!」とツイートしたところ、260人もの方がわざわざ脚を運んでくださいました。交通費を考えると割に合わないのに、お礼の言葉までいただけて。その経験があったからこそ、「善意は通じるのだ」と確信を持てました。
――失礼かもしれませんが、お金があるのに利用しようとする方や、物見遊山で訪れる方もいたのでは……?
まるかつ 初日に2組だけいらっしゃいましたが、それ以降はありません。
――活動を1年半続けるなかで、心境に変化はありましたか?
まるかつ 無料食堂は現在330人以上の方にご利用いただいています。笑顔になっていただけるのが何よりうれしいですし、中には後日お礼を言いに来てくださる方もいらっしゃって、本当に幸せです。
今でも「偽善だ」「売名だ」「やめろ」というご批判をいただくことがあります。ですが、その何百倍ものご声援をいただき、私自身、人々の善意をありがたく受け止めていますし、心から人の温かさを信じられるようになりました。
皆さまに元気付けられながら、こうして活動を続けられています。ありがとうございます。
画像提供:とんかつ店・まるかつ(@marukatsunara)さん
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