「仕事は楽しいことばかりではない」というのは誰もが知っていること。ですが、業界や職場によってその“楽しくないこと”はマチマチ。外側からは見えない、知られざる苦労も多いことでしょう。
さまざまな職業の方に取材する連載企画「あなたの仕事のグチ、聞かせてください」。ゲームセンタースタッフのGさんは、「禁煙化を巡り起こった騒動」のせいでお店を辞めたといいます。
ゲーム筐体の「ワンコイン方式」でやりくりする大変さ
―― 前回まではお客さまにまつわるトラブルを伺いました。他に大変なことはありましたか?
私が直接的に嫌な思いをしたわけではないのですが、ゲームセンターに一般的な問題として、プレイ料金の制限内でやりくりする大変さを感じていました。
「ワンコイン」という言葉もあるように、アーケードゲームは100円硬貨を用いる筐体が主流で、細かい値上げができません。つまり消費税が8%→10%に増えたからといって、「差額の2円だけ上乗せします」とはできないんです。
―― 増税のたびにダメージを受けてしまうと。
増税以外にも、例えばオンライン化の問題があります。全国対戦やランキング機能が当たり前になったことで、お店もネット環境を整えなければならなくなりました。こうした通信費やメンテナンス料金も売り上げから差し引かれますから、利益は落ちていく一方でしたね。
電子マネー対応の筐体が増えるにつれて、プレイ料金の調整も可能になってきていますが、私が働いていた5年前の時点では焼け石に水だったように思います。
―― 「値上げした」とネガティブに捉えるプレイヤーもいるでしょうし……。
そうですね。運営側の都合はお客さまには関係のないことですから。
お客さまから見えない裏事情としては、クレーンゲームの海賊版景品を扱うか否かの問題もありました。アニメキャラのイラストを張り付けただけのカードとか、ライセンスを取得していない非正規のプライズですね。
アニメ化で人気が出たばかりの作品は、公式のグッズ展開までにラグがありますから、こうした「稼ぎ時なのに景品がない!」という時期を狙って商売するあくどい業者がいたんです。アニメ以外にも「東方」シリーズのような二次創作が盛んな作品がターゲットにされていました。
―― どうやって断るんでしょうか。
……実は断り切れずに取り扱うこともありました。同じ業者が版権キャラクターものではないオリジナル商品も扱っていたので、付き合いで発注せざるを得なかったりして……。
―― 闇が深い……。
こうして清濁織り交ぜながら経営を続け、オフラインで利益率も高いレトロなゲーム筐体を設置したりと工夫はしていました。あれから何年か経ちましたが、今現在の状況は分かりません。というのも、私はお客さまの嫌がらせが原因で退職してしまったからです。
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