飛行機は広大な空港から飛び立つもの……とは限りません。以前紹介した「断崖絶壁にある短すぎる滑走路」(関連記事)などは極端な例ですが、実は日本にも一見すると飛行機が飛び立つ場所にはとても見えない変わった飛行場があります。
それが「農道離着陸場」です。通称「農道空港」と呼ばれます。
農道空港は1988年から1998年にかけて、農林水産省の農道離着陸場整備事業によって作られました。その名の通り「農道を広げて作った」飛行場。畑の中に突然滑走路が現れます。何とも不思議な光景です。
日本には8カ所、北海道北見市に「スカイポートきたみ」、北海道上川郡に「新得町農道離着陸場」、北海道美唄市に「スカイポート美唄」、北海道余市郡に「アップルポート余市」、福島県福島市に「ふくしまスカイパーク」、岐阜県高山市に「飛騨エアパーク」、岡山県笠岡市に「笠岡ふれあい空港」、大分県豊後大野市に「大分県央飛行場」があります。
その立地や名産物から目的をイメージしやすいかもしれません。建設された当時は「各地の農産物を小型飛行機で都市部の空港まで運ぶ」というプランが描かれていました。
ただ、付加価値の高いブランド野菜だとしても、コストが余計にかかる空輸ではなかなか採算が合いません。さらに高速道路の整備も進んだことで陸路に対する優位性が薄れ、立地や設備の関係で夜間の離着陸ができないので市場が開く時間に作物を届けられず、大都市側の空港の発着枠の課題なども重なります。当初の目的であった農作物輸送に関して言えば、あまり良い成果は得られなかったようです。
レジャーやイベントで注目される農道空港
しかし2001年の規制緩和で農作物の輸送以外にも使えるようになり、農道空港も新たな役割でさまざまな活路を見いだしています。
例えば、グライダーなどのスカイスポーツや遊覧飛行を楽しむレジャー用途で使われたり、軽飛行機の訓練場所として使われたり、航空ショーイベントやドローン、R/C飛行機の大会が行われたりします。
ふくしまスカイパークは、レッドブル・エアレースで年間チャンピオンとなった室屋義秀選手(関連記事)の練習拠点としても知られます。さらには、舗装路の長ーい直線があることを生かしてゼロヨン/ドラッグレースイベントが開催される空港もあります。
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