黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)にピップ株式会社・代表取締役社長の松浦由治が出演。100年以上続くピップ株式会社のDNAについて語った。
黒木)今週のゲストは、ピップ株式会社代表取締役社長の松浦由治さんです。100年以上続く企業でいらっしゃいますが、歴史があることのメリット、デメリットはあるでしょうか?
松浦)100年続いて来たが故に、変化に機敏に対応できないというところがあるかも知れません。「伝統を重んじましょう」という考えもありますが、当然、創業当時とは環境も違いますので、いまに合わせた経営体制を考える必要があると思います。絶対に守らなければいけないものと、新しく変えて行くところ、その両方が混在した形で会社を将来に向けてつなげることが大事だと思います。
黒木)ピップには、創業当時から受け継がれているDNAがあるそうです。
松浦)3つのDNAというものがあります。「他社に先駆けてやる」「違ったことをやる」「お客様、お得意様を大事にする」です。112年前の創業のときも新参者で、他に業者がたくさんいたなかで新規参入したわけですから、同じことをやっていては、成長もあり得ません。他がやっていないことを、いち早く取り入れてやるということで、当時の創業メンバーが仕事を始めたわけです。いまの我々にも当てはまることだと思いますし、これだけ競争が激しいなかで、スピードを上げてやって行くこと、早く結果を出して行くこと。これが大事だと思いますし、お客様、お得意様を大事にするということは変わらないと思っています。
黒木)大ヒット商品のピップエレキバンですが、最初からうまく行ったわけではないのですか?
松浦)エレキバンは、発売してから5年くらい、なかなか売れない時代が続きました。当時の薬局さんに商品をお納めするのですが、なかなか売れない。次の販売キャンペーンがあるので、それでお持ちすると「いいよ。取るから、その代わり前のものを持って帰って」と、薬局さんとずいぶんキャッチボールをしました。なかなか売れないけれども、お客様からは「あれを使って本当によかった」というお礼のお手紙や、お菓子もつけて送っていただいたこともありました。「やはり、この商品はいい商品だよね。広めて行かなければいけない」という思いを、社員みんなが持っていました。最後の手段として、テレビコマーシャルをやろうということになりました。お金もなくタレントさんも使えなかったので、当時の会長が「俺が出る」と言い、テレビに出演をして、コマーシャルを打った。このコマーシャルが非常に当たりました。お客様が「こんなものがあるなら、買いに行こう」と薬局に行き、全国に売り上げが広がったと聞いております。
黒木)お客様が喜んでくださっているからこそ、コマーシャルにつながって行ったということですよね。
松浦)いまですと、3年くらいで「もうダメだ」と廃番になっていると思います。そのときはそれしかなかったということもあるのでしょうけれど、5年も辛抱したのです。それだけ辛抱強くやったという先輩たちの努力が、いまに生きていると思います。
黒木)そのピップエレキバンも、もう発売から50年です。ロングセラーですね。
松浦)おかげさまで、本当にそうなりました。
黒木)最初からうまく行ったわけではないということですが、お客様の意見を大事にしていらっしゃるところに、ヒット商品を生む秘密があるのでしょう。
松浦)メーカーとして、唯我独尊ではいけないと思います。常にお客様の情報をキャッチしながら、よりよいものをつくる。不具合があれば直す。そういう努力は怠らないようにしています。お客様相談に毎日数十通、いろいろなご意見をいただくので、開発担当者にもこういう意見が来ているということを開示し、そこからいろいろなヒントを得て、商品開発につなげて行くということをやっています。
黒木)日々やっていらっしゃるのですか?
松浦)毎日やっています。
黒木)研究者のような感じですか?
松浦)研究者までは行かないのですが、マーケティングの担当者や、メーカーさんと一緒につくっている人たちがそのような情報を聞いて、「もうちょっとここを改良しよう」、「ここを工夫しよう」ということは、毎日のように考えてもらっています。
松浦由治(まつうら・よしはる)/ピップ株式会社 代表取締役社長
■1958年、東京都大田区育ち。
■早稲田大学卒業後、1984年に三星堂(現Paltac)入社。物流・営業・人事を経験。
■1988年「ピップフジモト(東京)」入社後、1989年、米国P&Gでセールスアシスタント修行。
■1992年、東京に戻り、業務改革・小売・商品開発・卸等を指揮。
■2005年に社長就任。
■2010年、東西事業会社の合併でピップ副社長に。2018年に社長就任。
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