『ハヤテ』『神のみ』人気ラブコメ作家が挑戦する「結婚漫画」 少年たちに伝えたい「ハッピーエンドの続き」(前編):畑健二郎×若木民喜(1/3 ページ)
畑健二郎×若木民喜、「結婚漫画」に挑戦する2人のスペシャル対談をお送りします。
旅行代理店に勤める大原拓也(タクヤ)と本城寺莉香(リカ)は、充実した「おひとりさま」生活を送っていた。ところが会社の意向で独身者は海外へ派遣されることになり……。ほとんど話したこともない2人が、偽りの結婚を計画する――!?
『神のみぞ知るセカイ』を手掛けた若木民喜が、『週刊ビッグコミックスピリッツ』で新たな恋愛コメディ『結婚するって、本当ですか 365 Days To The Wedding』を始動。その第1巻が8月7日に発売されました。
奥手なタクヤと人見知りが激しいリカ。目立たない者同士の偽装婚約は、2人の想像を超えた大騒動に発展していきます。同僚からの質問攻めにあったり、サプライズで祝われたり……コミュニケーションの苦手なタクヤとリカが、不慣れな状況に右往左往するドタバタはおかしみに溢れ、ゆっくりとお互いを知り得ていく関係性の変化も見逃せません。
そして、同じく「結婚」をテーマにしたマンガが週刊少年サンデーにも。『ハヤテのごとく!』の畑健二郎による最新作『トニカクカワイイ』です。
交通事故から救ってくれた女の子・司に一目ぼれした由崎ナサは、その場で求婚。時を経て再会した二人の結婚生活を描くイチャイチャなラブコメディ。クールだけどゲームが大好き、ミステリアスだけど夫に甘々……。司の魅力にステータス全振りしたような展開はどこを切り取っても破壊力抜群。とにかくかわいい!
片や青年誌、片や少年誌で繰り広げられるふたつの「結婚漫画」は、いかにして生まれたのか。プライベートでも親睦の深い若木民喜×畑健二郎による対談が実現。結婚観から古今のラブコメ、ギャルゲー、猫に至るまで、縦横無尽に展開する濃厚トークを前後編でお届けします。
- 【前編】『ハヤテ』『神のみ』人気ラブコメ作家が挑戦する「結婚漫画」 少年たちに伝えたい「ハッピーエンドの続き」
- 【後編】畑健二郎×若木民喜 「本当は孤独ってめちゃくちゃ楽しい」 それでも「結婚漫画」を描く理由(8月10日公開)
「結婚はゴールじゃなくてスタート地点」実体験で得た“気付き”を描く
──お二人ともご結婚されているということで、最新作にかける思いはもちろん、作品に影響を与えたであろうプライベートな結婚観までお伺いできればと思います。
畑: 要するに「ヒロイン(リカ)のモデルは嫁さん?」って話ですよね。僕もそれはずっと聞きたかった。
若木: それが嫁じゃないんですよ。モデルというか、リカのベースになっているのは僕自身ですね。
『結婚するって』は、担当編集との「結婚したらこんなことがあってさ〜」という雑談から生まれた漫画なんです。結婚に至るまでの実体験や気付きを話したら、「それでいきましょう」とGOサインが出て。だからリカもタクヤ(主人公)も僕から出てきたキャラクターです。
若木: 僕は40を過ぎてから結婚が決まったからか、自分の結婚に対してなかなか現実感を持てなかったんです。「俺もとうとう結婚かー」くらいのぼんやりした感覚で。でも、結婚指輪をはめたら突然実感が湧いてきたんですよね。なんというか、既婚者なりの行動をするようになった。「型があることで自覚が芽生えてくるんだなー」と。『結婚するって』では、そういう等身大の気付きを描いています。
──結婚前と結婚後で漫画の描き方や作風に影響は出ましたか?
若木: 独り身のころは傍若無人に生きてきたけど、結婚したらそういうわけにもいかないので。無意識に気遣いや調和を重視するようになったかもしれませんね。
畑: 僕は『ハヤテ』連載開始時にはもう結婚してたので……(笑)。
若木: あ、そうか。だったらなおさら実体験も参考にしてるんじゃないの? 『トニカクカワイイ』も何かあるでしょ。
――女の子は常温の水を買うとか、保湿ケアがすごいとか、男子たちの勉強になります。
畑: それは意図的にリアリティを出すために入れました。サンデー読者の少年たちは知らないであろう知識を今のうちから教えておこうと。なぜなら僕がもっと早く教えてほしかったから。
少年誌で描かれる恋愛モノは「両想いで結ばれてキスしてハッピーエンド! オッケーおしまい!」ですけど、本当に大変なのは告白が成就した後じゃないですか。「結婚はゴールじゃなくてスタート地点、その先の大変さを君たちは知らないだろう?」と
若木: 少年誌の限界に挑戦しようという畑先生の気持ちはね、ちゃんと伝わってますよ。
畑: あはは。
若木: いやいやだってほら、夫婦の赤裸々な会話とか、点数の付け合いとか、全部プレイのバリエーションですもん。11巻のキャンプ回とか、少年サンデー基準でいったらエロ漫画みたいなもんじゃないっすか。
若木: ナサと司の子育ては見てみたいですね。別にいいじゃないですか。『Dr.スランプ』みたいに「ポンッ!」って出せば大丈夫ですよ。ターボ君のノリでいけますって!
――孫悟飯のノリで。
畑: いや、でも実際のところ、さっき言ったようなテーマをやるなら、肉体関係とか子育ての話にも踏み込んでもおかしくないと思うんですよ。本当にやるかはおいといて(笑)。
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